日本のSDGs政策

加速する「脱炭素」。先進事例からビジネスへの転換を学び「2050年カーボンニュートラル」をチャンスに!

2021/11/25 (更新日:2021/12/24)

深刻化する地球温暖化、気候変動の原因となる温室効果ガスの排出量を“実質ゼロ”にする、「脱炭素」に対する機運が高まっています

2020年10月、日本政府が「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表したことを受け、日本国内でも取り組みが進行中。企業経営にとっても「脱炭素」に関する戦略は、いまや欠かすことのできない要素の一つなのです。また、環境省「令和3年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」を見ても、脱炭素社会の実現に向けた動きは“喫緊の課題”として進められていることは明白でしょう。

今回は、押さえておきたい「脱炭素」の基礎知識から、企業が進めている「脱炭素」に向けての取り組み、企業の成長戦略としての「脱炭素」などについて解説。「脱炭素」社会をどう学び、どうビジネスに取り入れていくかについて、考えていきましょう。

1.「脱炭素」とは?温室効果ガスの排出量“実質ゼロ”を目指す

「脱炭素」とは、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量を“実質ゼロ”にすること。近年、メディアなどを通じてしばしば目にしたり、耳にしたりする“カーボンニュートラル”と同義で使われることが多いキーワードです。

この “実質ゼロ”“カーボンニュートラル”とは、CO2の排出を完全にゼロに抑えることを目指すのではなく、差し引きゼロ、正味ゼロにすることを目標に掲げた取り組みのこと。一体どういうことなのか、「脱炭素」の基本的な知識や考え方について詳しく解説します。

排出を最小限に抑えながら、吸収量で差し引きゼロに

地球規模での人口増加や経済規模の拡大の中で、人間活動に伴う地球環境は悪化の一途をたどっています。その根源にあるのは、私たちが日常的に使用する電力やガス、ごみの排出、自動車や航空機といった輸送手段など、あらゆる活動を通して排出される温室効果ガスです。

地球環境を守るために、温室効果ガスの大部分を占めるCO2の排出を抑えなくてはいけないことはわかっていても、これらすべての日常生活や経済活動を抑制し、CO2の排出を完全になくすことは現実的ではありません。

そこで、CO2の排出ゼロを目指すのではなく、CO2をはじめとする温室効果ガスの排出量から、植林や森林管理などによる吸収量を差し引いて、その合計を実質的にゼロにしようという考え方が「脱炭素」です。

つまり、CO2排出量を最小限に抑えながら、どうしても抑えられない排出量の分については、吸収または除去することでニュートラル(中立)を目指しています

2015年のパリ協定で世界的な関心事に

「脱炭素」に対する世界的な関心度が高まったのは、2015年のパリ協定。ここでは世界共通の長期目標として以下のことなどが合意、採択されました。

パリ協定の概要(一部)

*世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること(2℃目標)

*今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること

また日本では、2020年10月、第203回臨時国会の所信表明演説において、当時の菅義偉内閣総理大臣が「カーボンニュートラル宣言」をおこなったことで、関心度が高まりました。

背景にあるのは、気候変動に対する危機感です。世界の平均気温は、2017年時点で、工業化以前(1850~1900年)と比べ、1℃上昇。このまま気温の上昇が続けば、近年、国内外で深刻な被害をもたらしている気象災害への懸念が、ますます高まっていきます。

こうした気候変動は、人類や地球上の生き物の生存自体にも影響をおよぼす重大なものとして、「気候危機」と言われることも。地球に暮らす一人ひとり、事業者、各国や地域、自治体などが自分事化して捉え、行動に移すことの必要性が叫ばれているのです。

よく聞く「2050年カーボンニュートラル宣言」とは?

日本における「脱炭素」の指針として掲げられているのが「2050年カーボンニュートラル宣言」です。

2020年10月、菅総理大臣(当時)は所信表明において、次のように宣言しました。

「我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」

さらに、2021年4月22・23日に開催された米国主催気候サミットにおいて、菅総理大臣(当時)は、2050年カーボンニュートラルの長期目標と整合的で、野心的な目標として、日本が、2030年度において、温室効果ガスの2013年度からの46%削減を目指すことを宣言。加えて、50%の高みに向け、挑戦を続けていく決意を表明しました

これらの実現へ向け、政府は取り組み強化を進行中。その一つが「地域脱炭素ロードマップ~地方からはじまる、次の時代への移行戦略~」です。

2025年までを集中期間として政策を総動員し、「100カ所以上の脱炭素先行地域を創出」、「重点対策を全国津々浦々で実施」をすることで、全国に“脱炭素ドミノ”を伝搬させていくことを目指しています。

2.脱炭素はもはや当たり前!企業の先進事例から学ぶカーボンニュートラルへの取り組み

こうした情勢からも、企業が「脱炭素」に取り組むことは、企業の成長戦略を見据えた上で欠かすことのできない要素と言えるでしょう。環境・社会・ガバナンスを重視した経営をおこなう企業に対するESG投資は、実際に世界で3,000兆円にもおよぶとされています。

なお、2021年時点で株式時価総額の首位は、米Appleで約2兆ドル(約212兆円)。ESG投資で受ける恩恵がいかに巨額で、自社に取り込もうと各国で動きが活発化していることは明白と言えるでしょう。

もはや環境課題や温暖化に関する取り組みを、「コストや成長の制約になる」と捉えることは時代の流れに沿っているとは言い難く、むしろ「脱炭素」への取り組みこそが企業の成長の機会、挑戦の後押しとなるという考え方が主流となりつつあります。

実際に、名立たる多くの企業が「脱炭素」に関する取り組み、戦略を打ち出していますので、事例をご紹介しましょう(事例は随時、追加)。

すかいらーく「持ち帰り・宅配用カトラリーをバイオマスプラスチックから木製に変更 」

『すかいらーくグループ』では、環境経営目標として、2030年までに2018年比25%のCO2排出量削減、2026年までに使い捨てプラスチック使用量を2020年比で50%削減し、環境配慮型素材の比率を50%とすることなどを表明しています。

使い捨てプラスチック使用量削減の取り組みとして、2022年1月より、すかいらーくグループ各店舗の持ち帰り・宅配用のカトラリー(スプーン・フォーク・ナイフ)を、バイオマスプラスチック製から木製に順次変更。カトラリーの切り替えにより、2022年の使い捨てバイオマスプラスチック製カトラリーの使用量を2020年比で75%削減、プラスチック使用量86トン削減を掲げています。

>>取材協力『株式会社すかいらーくホールディングス』 

ポーラ・オルビスグループ「環境・気候変動の対応」 

『ポーラ・オルビスグループ』では、株式会社ポーラ・オルビスホールディングス取締役会の監督の元、環境負荷低減目標を各グループ会社で作成しました。取り組みの一環として、気候変動に関連するリスクと機会を特定し、どのようなビジネス上の課題が顕在しうるか、2℃シナリオと4℃シナリオのそれぞれにおいてシナリオ分析を行いました。 

高級スキンケア品におけるデザインと環境対応を両立し、リフィル(付け替え容器)を用意

その分析結果をもとにSBT(Science Based Targets)1.5℃シナリオに準拠した目標を再設定し、サプライチェーン全体を通したCO2排出量の削減や容器包装材料の削減、再生可能エネルギーへの切り替え、カーボンオフセットなど既存の取り組みに加え、商品開発やプラスチック循環モデルの確立などの技術革新を進められるよう、検討していると発表しています。  

>>取材協力『株式会社ポーラ・オルビスホールディングス』 

※文章、画像は企業に掲載許可をいただいております。無断転載はご遠慮ください。

3.まずは企業が挑戦を l 脱炭素を叶えるグッズ製作を紹介

「脱炭素」社会の実現は、国の政策や行政の取り組みだけで叶うことではありません。一人ひとりが暮らしの中で意識を高め、「脱炭素」に取り組む企業やグッズ、サービスを応援することが一番の近道になります

そういった消費者の「脱炭素」に対する関心を高め、より身近に感じてもらうためには、日常生活に根づいた、便利でおしゃれなグッズを提案することが有効です。

この章では、企業として「脱炭素」への関わりをスタートするきっかけとなるような、また消費者と「脱炭素」社会の懸け橋となるようなグッズ例をご紹介します

SUS Coffee

アイグッズでは、「コーヒーをサステナブルに」をコンセプトとしたおしゃれなカフェ雑貨ブランド『SUS Coffeeを展開。日本初のコーヒーかすを使用したドリッパーと計量カップのセットをはじめ、タンブラーやマグカップなどを開発しています。

コーヒー抽出後のかすを再利用したグッズにより、廃棄量やプラスチックを削減し、「脱炭素」に貢献します。

>>リンク「アイグッズ株式会社 SUSPRO・SUS Coffee」

SUS CPLA

廃棄されると、水とCO2に分解され、自然に還るエコ素材を使った生分解性のスプーン・フォークシリーズ『SUS CPLA』。プラスチック問題の解決、ひいては「脱炭素」につながるエコ素材のカトラリーとして話題を集めています

>>リンク「アイグッズ株式会社 SUSPRO・SUS CPLA」

フルオーダー制作

アイグッズでは、これまでも「脱炭素」社会にふさわしいさまざまなエコ商品を開発、製造してきました。素材や形、デザインなど、すべてワンストップでおまかせいただくことにより、迅速かつ柔軟に、フルオーダーによるオリジナルグッズの制作を実現しています

これまでの多種多様な実績をもとに、おしゃれでエコな「脱炭素」グッズへの取り組みをサポートさせていただきます。

>>リンク「アイグッズ株式会社 SUSPRO・フルオーダー制作」

4.日常に広がる脱炭素の例 l キーワードは「ゼロカーボン」

温室効果ガスを削減し、「脱炭素」社会を目指すことは、もはや他人事ではありません。国や地方自治体、民間企業、個人といった枠組みを超え、誰もが取り組まなければならない課題です。

「脱炭素」をより身近に、わかりやすく感じられるよう、また一人ひとりが普段のライフスタイルに落とし込み、行動に移しやすいよう、環境省が中心となり「ゼロカーボンシティ」「ゼロカーボン・ドライブ」「ゼロカーボンパーク」といったさまざまな施策を推し進めています

地域における企業の存在意義を高めること。また、企業としての社会的優位性を高めること。企業の成長戦略をさまざまな視点から捉えたとき、「脱炭素」「ゼロカーボン」についての取り組みの必要性は、今後さらに高まることでしょう。

キーワードは「ゼロカーボン」

「脱炭素」、つまり「ゼロカーボン」をキーワードに、さまざまな施策が広がっています。ここに3つの「ゼロカーボン」をご紹介します。

■ゼロカーボンシティ

「脱炭素」社会の実現を目指し、2050年までにCO2の実質排出量ゼロを目指すことを表明した地方自治体を「ゼロカーボンシティ」として環境省が定義。2021年9月時点で、東京都・京都市・横浜市をはじめとする464自治体が表明しています。

■ゼロカーボン・ドライブ

環境省では、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを使って発電した電力(再エネ電力)と電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池自動車(FCV)を活用した、走行時のCO2排出量がゼロのドライブを「ゼロカーボン・ドライブ」、略称「ゼロドラ」として訴求。「脱炭素」の未来に向け、再生エネルギーを活用したドライブを推奨しています。

■ゼロカーボンパーク

伊勢志摩国立公園の風景

国立公園において先行して「脱炭素」化に取り組むエリアのことを「ゼロカーボンパーク」として、環境省がその取り組みを推進。国立公園における電気自動車などの活用、国立公園に立地する利用施設における再生可能エネルギーの活用、地産地消などの取り組みを進めることで、国立公園の「脱炭素」化を目指します。加えて、脱プラスチックも含めたサステナブルな観光地づくりを実現していきます。

5.【番外編】脱炭素をビジネスに取り入れる際に覚えておきたい関連用語

「脱炭素」を理解し、自分事化するために、覚えておきたい核となる用語、関連用語を解説します。

カーボンニュートラル・カーボンフリー

「カーボンニュートラル」とは温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、差し引きの合計を実質的にゼロにすること。吸収量を増やすためには、植林や森林管理などが不可欠です。「カーボンフリー」は、温室効果ガスを排出しない、風力や太陽光発電といった自然エネルギーを使うことを指します。

再生可能エネルギー

再生可能エネルギーとは、主に、太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、大気中の熱、その他の自然界に存する熱、バイオマスなどのこと。再生可能エネルギーを導入することは、温室効果ガスの削減など、環境改善をはじめ、エネルギー自給率の向上や化石燃料調達に伴う資金流出の抑制など、さまざまな好影響が期待されています。

脱炭素経営

「脱炭素経営」とは、「脱炭素」を経営方針や事業活動に取り入れた経営のこと。当初はグローバル企業や大企業が主体となって取り組みを始めていましたが、昨今は中小企業にも「脱炭素」の動きが浸透。環境省では、温室効果ガス削減に関する中長期目標(Science Based Target再エネ電力100%など)を設定しているまたは、設定を検討している中小企業を対象とした支援事業をおこなうなど、「脱炭素経営」への取り組みを推進しています。

グリーン成長戦略(グリーンイノベーション)

「グリーン成長戦略」とは、環境課題への取り組みを、企業のコストや制約と捉えず、経済と環境の好循環を構築していく産業政策のこと。政府としてはこれまでのビジネスモデルや戦略を根本的に変えていく必要性を訴えるとともに、大胆な投資をし、イノベーションを起こす民間企業を支援。「脱炭素」に向けての挑戦をしやすい環境づくりを掲げています。

ESG金融

環境(Environment)・ 社会(Social)・企業統治(Governance)といった要素を考慮する投融資のこと。パリ協定やSDGsへの機運の高まりなどを背景に、「脱炭素」社会への移行や持続可能な経済社会づくりに向けたESG金融への取り組みも、世界的に普及、拡大してきています。

6.「脱炭素」への取り組みにより、新たな成長戦略を描く

気候変動の影響がますます顕在化しつつある昨今、「脱炭素」は世界規模の課題であり、その取り組みは急務です。行政の表明や施策もあり、グローバル企業を中心に、ビジネス界においても「脱炭素」化は急激に進んでいます

また、国際的なESG投資の潮流を鑑みても、「脱炭素」化は、企業の価値向上につながることが期待できます。この「脱炭素」の流れは、大企業のみならず中小企業にとっても直近のテーマです。「脱炭素」経営の取り組みをいち早く進めることは、地球環境の保全、社会貢献といった意味合いのみならず、企業としての優位性や独自性を高め、新たなビジネスチャンスの獲得、新たな展開の足掛かりにつなげることができます

「脱炭素」を知り、次世代への飛躍の一手として、積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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