間伐材がSDGsに及ぼす影響とは?重要性と導入のメリット・デメリット
2024/11/04
近年、エコ素材として注目度が高まっている「間伐材」。SDGs活動が世界的に取り組まれている今、間伐材などサステナブルな素材の活用は重要な取り組みの一つです。特に日本においては、間伐材とSDGsが切っても切り離せない関係にあることをご存知でしょうか。
今回は、間伐材とSDGsがどのような関係にあるのかをお伝えします。間伐材を使った製品のメリット・デメリットも解説しますので、サステナビリティをより追求したいと考えている方はぜひご一読ください。
1.間伐材とは
まず、間伐材とは何か、その特徴を確認していきましょう。
間伐の意味
そもそも「間伐」とは、森林の一部の木々を意図的に伐採することです。つまり「間伐材」とは、間伐作業の副産物として生まれる木材を指します。
間伐材の種類
間伐の種類は、大きく分けて「定性間伐」と「定量間伐」の2つです。このうち定性間伐は、さらに上層間伐・下層間伐の2つに分けられます。
定性間伐
・上層間伐(優勢木間伐)
概要 | 間伐材の特徴 |
---|---|
優良な優勢木を伐採 | 質がよい |
・下層間伐(劣勢木間伐)
概要 | 間伐材の特徴 |
---|---|
成長・形成不良の劣勢木を伐採 | 形が整えやすい |
定量間伐
概要 | 間伐材の特徴 |
---|---|
常に一定量を伐採 | 低コスト |
上層間伐は、大きく育った木々を伐採することです。別名「優性木間伐」とも呼ばれ、上質な優勢木を中心に間伐するため、素材としての価値も高いという特徴があります。
一方、下層間伐は、成長が芳しくない、もしくは形が悪い劣勢木を間引く伐採方法です。間伐材にしたときのサイズは小さめですが、形を一定に整えやすいというメリットがあります。
そして定量間伐は、木々の成長度合いにかかわらず一定量を伐採する方法です。合理的かつ効率的に伐採できることから、定量間伐から作られる間伐材は原価が低い傾向にあります。
間伐材が生み出される背景
間伐が生まれた背景には、森林整備の重要性があります。森林は、生物の住処としてだけではなく、土砂崩れの防止や水源の確保、光合成によるCO2削減の観点からも重要な役割を担う資源です。
日本は「森林大国」と称されるほど広範囲の森林地帯を抱えています。全体の約2,502万ヘクタールが森林であり、なんと国土の67%を占める広さです。
その森林を整備することは、地球の環境とそこに住むすべての生物の暮らしを守ることに直結します。もし木々がそれぞれ自由に乱立したままだと、枝葉が混み合って広がらなかったり、日照を妨げたりして、互いに成長を阻害し合ってしまいかねません。
そこで定期的に人の手を加えることで、森林の効率のよい生育環境が整い、結果として保護につながります。「伐採=森林破壊」というイメージを抱かれがちですが、間伐は森林の保護に欠かせない活動なのです。
間伐材の使い道
間伐材は、よく次のような用途に使われています。
- 建材
- 土木資材
- 木工品
- 紙製品
- バイオマス燃料
近年は、間伐材のサステナブルな性質が注目され、脱プラスチックの代替素材としてよく取り入れられるようになりました。アメニティやノベルティなど、さまざまなグッズに加工されています。
なお、アメニティによるエコ活動とその活用事例について知りたい方は、こちらのコラムもぜひご覧ください。
2.間伐材とSDGsの関係性
間伐材をはじめとするサステナブルな素材は、主に以下2つの歴史的な出来事をきっかけとして注目されるようになりました。
- SDGsの目標達成
- パリ協定
SDGsの目標達成
「SDGs」とは、2015年9月の国連サミットで採択された、持続可能な開発目標です。間伐材は、SDGsで設定されている17の目標のうち、以下の項目に関連しています。
- 目標6:安全な水とトイレを世界中に
- 目標11:住み続けられるまちづくりを
- 目標13:気候変動に具体的な対策を
- 目標15:陸の豊かさも守ろう
適切な間伐によって、目標15にある過酷な環境や病害虫にも負けない豊かな森林が形成されます。また、世界中に豊かな森林が形成されれば、地球温暖化の原因となるCO2を効率よく吸収し、目標13の気候変動を防止できるでしょう。
さらに間伐は、森林の下層植生(下に生えている植物群)を豊かにし、周辺の生息動物の生育にもよい影響を及ぼすことから、目標15にも関与しています。そして下層植生の保護は、結果的に目標6および11にある安全な水と暮らしの確保にもつながるのです。
もし森林を生えっぱなしで放置した場合、その下層植生(木々の下に生えている植物)の生育を阻害し、地層および表層の弱体化を招きます。緩んだ土壌は雨水の流出が早く、土砂崩れや洪水が起こりやすくなるため、定期的な間伐で下層植生を守ることが大切です。
このように、間伐にはさまざまな要因が絡み合っていますが、それらはすべて地球環境の保護に帰結しています。
SDGsの詳細はこちらのコラムで詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。
関連記事>>【ビジネス向け解説】SDGsとは?意味や企業の取り組み方を徹底解説!17項目のゴールと日本の現状まとめ
パリ協定
間伐材は、2015年に「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)」で合意が成された「パリ協定」により、その重要性がさらに注目されるようになりました。
パリ協定とは、1997年に採択された京都議定書の後継となる、2020年までに達成すべき温室効果ガス削減に関する国際的な取り決めです。55カ国以上の参加と世界総排出量の55%をカバーする国々の批准という2つの条件を満たし、2016年11月16日に発効しました。
パリ協定には、温室効果ガスの主要排出国をはじめとする多くの国が参加し、実施指針策定に合意しています。パリ協定が掲げる世界共通の長期目標は、次のとおりです。
- 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて+1.5〜2℃未満に抑える
- 21世紀後半までに温室効果ガスの人為的な排出および吸収源による除去を達成する
- 最新の科学技術を用いて温室効果ガスを削減し排出ピークの早期化を目指す
パリ協定に合意する国には、温室効果ガスの低排出開発戦略の策定・提出が求められました。また長期目標の達成に向けて、2023年から5年ごとに世界全体の進捗確認(グローバルストックテイク)が行われています。
なお、日本では2030年までに温室効果ガス26%削減(2013年度比)が目標です。そして2020年に、温室効果ガス排出量0を目指す「カーボンニュートラル」が新たな目標に設定されました。
目標達成へ向け、国内では今日にいたるまでさまざまな取り組みが行われています。その取り組みの一つが間伐です。豊かな森林の保護は、大量のCO2を吸収します。
さらに、木々が持つ、加工後もCO2を放出せずに蓄え続ける「炭素貯蔵効果」も、間伐材の有効活用および利用拡大が求められる理由の一つです。
3.日本のSDGs活動に間伐材が重要な役割を担う理由
日本では、国際的な取り決めだからという事情のほか、SDGs活動への間伐材の積極的な活用が目下の課題です。間伐材が重要視されている理由には、国内における次の2つの問題が大きく関わっています。
- 所有者・共有者不明の森林増加問題
- 切り捨てられた木の放置問題
所有者・共有者不明の森林増加問題
日本におけるSDGs活動で間伐材の重要性が高い理由の一つは、所有者・共有者不明森林の増加です。
国内の少子高齢化に伴う地方の過疎化により、相続で所有権移転登記がなされていない森林が増え、手を付けられずに放置されています。特に森林面積の大きな日本においては、整備の不十分さは深刻な問題です。
所有者・共有者不明森林の増加を背景に、国では森林経営管理法に基づく森林経営および集約化を市町村主体で進めています。しかし、いまだ管理が十分に行き届いているとはいい難い状況です。
そのため、今後は間伐のよりいっそうの推進と、そこから生まれる膨大な間伐材の有効活用が大きな課題になっています。
切り捨てられた木の放置問題
日本では、伐採された倒木がそのまま放置される「切り捨て伐採」も問題になっています。前述のとおり、切り捨てられたまま放置された倒木は下層植生を弱体化させ、さまざまな環境問題や災害を引き起こしかねません。
したがって、木々の伐採ののち、間伐材にするまでの一連の流れを定着させることが大切です。とはいえ、ニーズがないことには普及が進まないため、各企業が積極的に間伐材を取り入れ、消費者へ広めることが重要な課題だといえます。
4.間伐材を使った製品を参考イメージ
企業がものづくりに間伐材を取り入れる選択には、大きく分けて以下2つのメリットがあります。
サステナブルな企業としてブランディングできる
SDGsに貢献するサステナブルな企業としてブランディングできることは、間伐材利用の最大のメリットです。間伐材を使用した製品には「間伐材マーク」が付けられるため、SDGsへの貢献が一目で分かります。
また、SDGsへの積極的な姿勢を示せる「SDGsバッジ」を間伐材で作るのも、SDGsへの貢献度が視覚化できておすすめです。各業界で過酷な顧客獲得競争が繰り広げられる現代で、トレンドのサステナブルを反映した独自のブランディングは、大きな強みになります。
なお、サステナブルの意味を詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご参照ください。
関連記事>>【ビジネス向け解説】サステナブルとは?意味や企業の取り組み事例を紹介
原価コストが抑えられる
間伐材は、ものづくりにかかるコストが抑えられる素材です。素材としての原価が安く、低コストでの商品製造が実現します。
製造コストが低ければ、消費者にエシカルな選択肢を低価格で提供できるため、新たな顧客層の獲得につながるでしょう。そして一般的な木材よりリーズナブルな価格での提供が可能になれば、購入者が増え、さらに間伐材活用が広がるという好循環につながります。
エシカルの意味は、こちらのコラムで解説しているのでぜひ参考にしてください。
関連記事>>【ビジネス向け解説】エシカルとは?意味や企業の取り組み事例を紹介
メリットまとめ
- サステナブルな企業としてブランディングできる
- 原価コストが抑えられる
5.間伐材のデメリット
サステナブルかつ低コストな間伐材は、通常の木材の上位互換のようにみえますが、欠点が一切ないわけではありません。ここからは、間伐材のデメリットとはどのような点なのかをみていきましょう。
用途が限られる
間伐されるのは成熟した木々ばかりではないため、そこから生まれる間伐材は幹が細いものも少なくありません。小さな間伐材は大きな無垢材にできないので、カトラリーをはじめとする小さなグッズや紙の原料、燃料などの用途に限られます。
とはいえ、間伐材のサイズの問題は、用途に応じて種類を使い分けることで解消できます。大きな無垢材にしたいときは、上層間伐による間伐材を選ぶとよいでしょう。
流通量が少ない
現在の日本では、間伐材の流通量がまだ十分ではありません。企業単位で生産から製造まで一貫管理するという選択肢もあるものの、日本の森林は個人所有も多く、企業単位での集約化は作業コストがかかりすぎるため困難です。
しかし、間伐材の活用は少しずつ普及しつつあり、先述のとおり国主体での森林集約化も徐々に進められているため、今後の展開が期待されています。
デメリットまとめ
- 用途が限られる
- 流通量が少ない
【番外編】間伐材の使い道にぴったりのおすすめグッズ
企業のSDGs活動をものづくりで支える「SUSPRO」では、間伐材を使用したグッズを展開しています。
例えば、間伐材からできた「SUS amenity」の木製ヘアブラシ(SUS Wooden HairBrush)。手のひらに収まるほどコンパクトな製品で、小さいお子様や女性が持ちやすいサイズです。
また、ナチュラルな木の素材感が、見た目を上質に演出しているのもポイント。櫛歯の部分には竹素材を用い、細部までサステナブルなだけではなく、静電気の抑制にも一役買っています。
高級感のある木製グッズを、最低限の原価コストで制作してみてはいかがでしょうか。
6.間伐材の利活用でSDGsへの貢献をアピールしよう!
木材はもともと環境にやさしいエコ素材ですが、よりサステナブルにするなら間伐材の使用をおすすめします。間伐材は、SDGsへの貢献と日本特有の森林問題の解消が両立できる素材です。またサステナブルなだけではなく、原価コストが抑えられる点も、企業・事業者にとって大きなメリットだといえます。
間伐材のグッズ制作のご依頼やご相談は「SUSPRO」へおまかせを!エコなものづくりのプロとして、企画から納品までワンストップでサポートします。
ブランド・企業のご相談・ご依頼は「オリジナルエコグッズ制作」へ。ホテル・旅館向けの製品は「オリジナルエコアメニティ・グッズ制作」で承ります。ぜひお気軽にお問い合わせください。
[出典]/公益財団法人 日本ユニセフ協会/SDGsクラブ/SDGs17の目標/https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals//
[出典]/JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター/パリ協定/https://www.jccca.org/global-warming/trend-world/paris_agreement/
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