「FSC認証木材」とは?地球環境に配慮した資材を活用して、SDGsの第一歩を
2021/09/09 (更新日:2024/09/30)
責任ある森林管理の世界普及を目的に設立された非営利団体、「FSC(Forest Stewardship Council)」。「FSC認証木材」とは、FSCによって“適切に管理された森林”と認められた森で生産される木材を指します。
現在では多くの消費者や環境団体、企業からも支持を集めており、国際イベントの施設の建材に採用されるなど、信頼度の高い森林認証制度のもとで生産された木材として認知が広がっています。
FSC認証木材を利用することは、持続可能で適切な森林管理を世界に広める活動の支援につながります。また、消費者はFSC認証木材を選ぶことで、世界的な森林の減少・劣化の問題と向き合い、無秩序な森林伐採、違法伐採などを抑制する動きに参加することができます。
今回は、サステナブルな素材として世界的に注目を集める、FSC認証木材について紹介します。
1.責任を持って管理された森林から生産。FSC認証木材の特徴
国際的に加速する大規模な森林破壊、それに伴う環境破壊や社会的問題を背景に、1990年、森林の未来を危惧する木材消費者、流通業者、環境団体、人権団体の代表が米国のカリフォルニア州に集結。この時に行われた会議により、林産物が適切に管理された森林から、責任を持って生産されたことを証明するシステムの必要性が認識されたことにより、1994年、FSC(Forest Stewardship Council、森林管理協議会)が誕生しました。
FSCでは、責任を持って管理された森林から生産される木材とその製品を識別し、消費者に届けることにより、適切に管理された森林を消費によって支える仕組み作りを実践。800名を超える会員が、世界中の森林を守るための正しい指針作りを支えています。
FSCが定める森林管理の規格を満たす認証林から生産された木材のことを、FSC認証木材と呼びます。FSC認証木材は、世界中の森林認証制度の中で最も高い水準で、自然林の保全や絶滅危惧種の保護を推進しており、その信頼性の高さから多くの企業に選ばれています。
FSC認証制度が目指すのは、持続可能な形での森の活用と保護
生物の営みにとって、森林は欠かすことができません。人間もまた、木材や食料、水や空気など、森林によって守られてきた生態系から多くの恩恵を受けています。しかし、2020年の国連食糧農業機関(FAO)の報告によると、2015~2020年の間に、平均で年間1020万haもの森林が減少しており、この大きさはおよそ東京都47個分にも及びます。森林伐採や焼畑農業、気候変動による山火事などにより、世界の森林は破壊され、天然林が人工林に変わるなど、森林の質の低下も深刻化しています。
木々から生まれる製品や土地の開拓は、私たち人間に多くの恵みをもたらす一方で、森林破壊による地球規模の気候変動、水や土の劣化による災害、生態系の破壊などの因子となることも。
そこで、単に法律で取り締まり、罰則によって森を守るのではなく、市場メカニズムを利用することで、消費者の理解と購買力によって森林の適切な管理を支え、持続可能な形で森を活用していく仕組みがFSCの認証制度なのです。
生産、加工、流通にまつわるすべての工程での認証が条件に
FSC認証には、FM(Forest Management、森林管理)認証とCoC(Chain of Custody、加工・流通過程)認証という2種類の認証があります。
森林が責任をもって管理されているかを審査し、認証するのがFM認証であり、認証林から収穫された認証材が消費者の手に届くまでの加工・流通過程を認証するのがCoC認証です。
原則として、認証林から生産された木材であっても、CoC認証を取得した組織でないとFSC認証の製品として販売することはできません。小売りを除く、生産、加工、流通にまつわるすべての組織が認証を受けていることが、FSC認証製品の条件になります。
FM認証とCoC認証を取得すると、FSCラベル、広告宣伝用マーク、単体ロゴを使用することができ、消費者に対して認証製品であることを伝えることができます。
FSC認証を受けた木材は、家具や木工品、上質紙やティッシュペーパー、トイレットペーパー、本やノート、段ボールなどさまざまな用途に用いられ、世界中で利用されています。また、認証林で生産された非木材林産物のハチミツやメープルシロップ、キノコ、竹製品などもあります。
2.FSC認証のサステナブルなポイント
未来を担う子どもたちの権利や、将来を生きる次世代の需要を損なうことなく、現在を生きる世代の社会的、環境的、経済的な権利や需要を満たすことをビジョン(理念)に掲げているFSC。森を守りながら利用し続けることができるよう、持続可能な森林管理を世界に広げることをミッション(使命)としているのです。
これをSDGsに照らし合わせてみると、FSC認証は、目標15の「陸の豊かさも守ろう(Life on Land)」に関して直接的に貢献。また、貧困、飢餓、健康・福祉、教育、男女平等、安全な水、クリーンなエネルギー、労働環境、責任ある生産活動と消費活動、気候変動、海の豊かさ、平和と公平、パートナーシップなど、SDGsの14の目標と40項目のターゲットについて、達成に貢献できると表明しています。
以下、SDGsとの関連性から、FSC認証のサステナブルなポイントについて考えてみましょう。
労働者の人権と健康を守り、SDGsの目標達成につなげる
FSCでは、ミッションとビジョンの実現のために、森林の認証をする際の10の原則と、その下に紐づく70の基準を定めています。その原則2「労働者の権利や安全が守られている」では、労働者の権利と労働環境が掲げられ、労働者の社会的、経済的な満足感を高めるか、少なくとも維持しなければならないと記されています。
また、原則10「管理活動を適切に実施している」において、農薬の使用を極力回避するように定め、もし農薬使用によって人体への健康被害があった場合には健康回復を義務付けています。
このように、労働者が安全に、安心して森で働くことができるよう、教育や管理を徹底することは、SDGsの目標8「働きがいも 経済成長も」など、多くのターゲットに関連しています。
SDGsにもつながる、海や森、生態系の保護を提唱
FSCの原則6「環境を守り、悪影響を抑えている」に掲げられている環境価値とその価値への影響においては、管理区画の生態系や環境価値を維持、保全もしくは復元し、環境への悪影響を回避、改善または低減しなければならないとしています。
中でも6.4の基準「貴重な生物のすみかを保護している」では、希少種とその生息域の保護などを記載。6.7の基準「水資源を保護している」では、自然な河川や渓流、湖沼、川岸地帯など、水質と水量への悪影響を回避するよう記しており、SDGsの目標6の水・衛生や、目標14の海洋資源に関する目標につながっています。
企業によるFSC認証木材の採用例
・花王
2018年、持続可能な森林資源調達をめざす日本企業6社と共同で、FSC認証材の調達を約束する「FSC認証材の調達宣言2020」を発表。段ボールや包装材料などに積極的にFSC認証木材を使用している。
・カインズ
日本で初めて、国産FSC認証材を使った針葉樹合板を導入。今後はPB製品の紙パッケージにもFSC認証紙を採用する予定。
・イオン
値札やタグといった使用頻度の高い副資材に、FSC認証の資材を使用。「トップバリュ」商品の包装資材にもFSCの認証紙を使用する他、FSC認証製品も多数取り扱う。
・ミニストップ
国産FSC認証木材を使用した店舗を2009年に出店、商業施設としては日本で初めてFSC®認証を取得した。2020年2月末現在、FSC認証木材を使用している店舗数はのべ284店舗にのぼる。
・セブン&アイ・ホールディングス
石油由来のプラスチック製ストローの配布量削減に関する取り組みとして、セブンカフェにおいて使用するカフェ用ストローの内、11,000店においてFSC認証を取得した紙製ストローを導入した。
3.FSC認証木材のメリット・デメリットとは?
FSC認証木材を使用することは、企業にとって多くのメリットをもたらします。コスト面やPR方法など、留意点を抑えながら、FSC認証の木材を有効に取り入れましょう。
FSC認証木材を多彩なグッズに活用することで広がるメリット
FSC認証を取得した木材や、その木材から作られた用紙などを使用することは、違法な森林伐採を防ぎ、森林管理の推進にもつながります。ひいては、 適切な森林管理を行う林業者や地域の支援、生産品を原材料として使う企業や事業者の支持にも貢献できます。
FSC認証木材を使用することは、SDGsへの貢献や環境配慮への感度が高い企業として、企業や事業者の差別化、ブランディングにもつながるのです。
FSC認証木材を使用することが差別化や企業価値の向上につながっている例
・新築戸建て住宅では日本初の事例となる、FSC全体プロジェクト認証(※)を取得した住宅が話題に
・日本で初めて、FSC認証を受けたコンクリートパネルの販売が開始され、FSC認証の日本での広がりに期待が高まっている
(※)プロジェクト認証とは、一度しか作らないものや連続する類似プロジェクトについての認証のことで、全体プロジェクト認証とは、その中でも、使用される森林由来原材料がすべて認証対象原材料であるものを指す。
直接的な利益が目に見えにくいというデメリットも
森林保全や人権配慮などの課題を柱として取り組むFSC認証は、省資源や省エネルギーといった、消費者が直接的に経済的な恩恵を受けることができる取り組みとは異なります。そのため、企業が取り組む際にも目先の利益を追求することが難しいケースがあります。
FSC認証の審査にかかる手間や費用は、事業規模やそれによって考えられるリスクなどにより変わます。FSC認証機関に問い合わせる際には、認証を予定している事業範囲などの基本的な情報をしっかり提供できるよう準備を行いましょう。
また、FSC認証を受けている商品をアピールする際に、誇張表現と捉えられたり、不適切な印象を与えかねないと判断されたりした場合に、FSC認証機関からアピール方法や表現内容について、変更を促されるケースもあるので、注意が必要です。
また、費用単価も一般的な木材に対してUPするのも難点です。物にもよりますが、一般的な木材と比べ約50〜80円程度費用がかかります。
4.SDGsに貢献するFSC認証木材。素材を使ったグッズで、消費者にサステナブルな暮らしを訴求
適切に管理された森で生産されたFSC認証の木材を使用することは、森や海などの自然、生態系の保護につながるだけではなく、労働者や地域を守ることにもつながります。そのような思いに共感し、アイグッズでは、FSC認証木材を使った封筒や用紙をはじめ、ウォッシャブルペーパーを活用したポーチやバッグなど、多彩なグッズを販売しています。
FSC認証木材を通して、責任を持って木材を使い、暮らしに取り入れることは、SDGsの目標達成に貢献することにもつながります。ぜひ、サステナブルな社会の実現へ向けて、FSC認証木材に注目してみてください。
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