SDGs自社への落とし込み

STEP4┃SDGsの目標を企業の経営へ統合し、事業・組織に組み込むことで実践する。

2021/09/09 (更新日:2021/11/29)

ボランティアや社会貢献的な要素が色濃いCSRとは異なり、事業やサービスといったビジネスの要素、企業としてのあり方などとも密接に関連するSDGsは、経営全般、ひいては企業が進むべき方向性などと一体となって考えていく必要があります。そのため、担当者レベルだけではなく、会社全体で取り組み、方向性を一致させていかなければなりません。つまり、SDGsのターゲットを実現していくためには、その目標を経営に組み込むことが不可欠なのです。

シリーズ「SDGs自社への落とし込み5step完全解説」では、SDG Compassの核となる5つのステップに沿って、SDGsに取り組むための方法を解説していきます。ステップ4では、ステップ3までに設定した目標を事業に統合し、各部門に落とし込むことの重要性と、経営に統合していくための進め方を解説します。 

>>SDG Compass

1.実践に移す前に、基礎条件を改めてチェック!

SDGsを実践する前に、取り組みを進めるための基盤についておさらい。

ステップ3までに設定した目標に沿ってSDGsの取り組みを開始するにあたり、その基礎となる自社の現状をしっかり把握する必要があります。ステップ3までの工程で取り組んできたことも含め、下記のような自社の基盤はしっかりと整っていますでしょうか。改めて必要な要素をおさらいし、チェックしてみてください。その上で、不十分な部分は、しっかりと軌道修正をし、SDGsの取り組みへ向けての準備体制を整えましょう。

取り組みの推進、実践に向けて見直したいチェックポイント

・SDGsをけん引する担当者を選任し、業務範囲の明確化と権限の付与を実行している?

・従業員が主体的に取り組めるよう、働き方の多様化やダイバーシティは実現できている?

・SDGsを経営に統合するにあたり、意識すべき組織の構成要素を把握している?

SDGsをけん引する担当者を選任し、業務範囲の明確化と権限の付与を実行する。

SDGsの取り組みを推進するためには、多角的な視点から取り組みをディレクションできるキーパーソンが必要となります。一般的には担当者を選任する、部門化するといった方法が挙げられるでしょう。また、各部門に担当者を置く、経営者自身が主導するというケースもあります。

いずれにせよ、大切なことは担当者・担当部署の業務範囲を明示し、業務権限を付与することです。担当者・担当部署を社内の組織の中にしっかり組み込み、社内制度の中での位置付けを明確にしましょう。

従業員が主体的に取り組めるよう、働き方の多様化やダイバーシティの実現度をチェック。

SDGsで掲げられる目標の中には、多様な人材の確保、柔軟な働き方、ジェンダー平等の推進など、雇用や労働に関するターゲットも多くあります。働き方の多様化を認め、従業員の多様性を確保することは、生産性の向上、モチベーションのアップ、イノベーションを起こして価値創造につなげること、ひいてはSDGsの実践を強化することにもつながります。

また、SDGsに積極的に取り組んでいながらも、働き方改革やダイバーシティ経営が実現できていなければ、SDGs自体への取り組みが表層的と捉えられ、SDGsウォッシュの批判にさらされる可能性もあります。今一度、社内の現状を見直し、必要に応じて対策を考えましょう。

SDGsを経営に統合するにあたり、意識すべき組織の構成要素を見直す。

SDGsの実践を経営に組み込む際には、組織における6つの構成要素を考慮する必要があります。

組織においては、下記の中のPhilosophyを中心に、各要素が歯車のように密接に噛み合い、関連し合いながら機能を果たすことで、社会における企業活動が展開されています。

SDGsを本業化するにあたっては、この6つの要素をしっかり意識しながら、SDGsを経営に根付かせるための方策を検討していきましょう。

SDGsを経営に組み込むために外せない6つの要素

1.Philosophy(理念):企業の存在意義そのものであり、組織の根幹。企業理念や経営ビジョン、ミッションなど。

2.Leadership(リーダーシップ):経営トップのSDGsへの認識、コミットメント。

3.Strategy(戦略):中長期の経営計画、事業目標の設定、その目標達成に向けた具体的な施策や計画。

4.Structure(体制):CSR部門など、SDGsの戦略を検討・決定し、実績を管理する機能。

5.System(制度):社則や行動憲章、社会課題の解決を促す仕組み。報酬制度や人事制度など。

6.People(従業員):従業員のスキルや意識。

[出典]/未来につなげるSDGsとビジネス~日本における企業の取組み現場から(GCNJ・IGES)/https://www.iges.or.jp/en/pub/sdgs-and-business-future-actions-private/ja

2.持続可能な目標を自社に定着させる

SDGsの実現に向け、設定した目標を企業に定着させる。

持続可能性に関する目標を実践するためには、組織の改革や事業への統合が必要です。そのため、経営のトップや上層部が主導し、リーダーシップを発揮することが大きな推進力となりま。その上で、SDG Compassでは、部門や個人のモチベーションを高めるための審査体制や報酬制度を全社的な制度に組み込むことも有効であると説いています。

SDGsの目標を企業に定着させる3つのポイント

・経営トップの理解とコミットメントを得る

・社内スタッフの企業理念に対する理解を促進する

・わかりやすいKPIを設定し、社内制度に関連付ける

経営トップや経営幹部のコミットメントを取り付け、目標を事業へ落とし込む。

持続可能な目標を組織内に確実に定着させるには、時として大幅な組織改革が求められることもあります。そのため、経営トップであるCEOや経営幹部の深い理解とコミットメントを得ることが先決です。そうすることで、SDGsに資する経営戦略や計画の策定、SDGsの目標達成に向けた事業の展開などがスムーズになります。

逆に経営トップや幹部による理解、コミットメントが確保できない場合、SDGsの経営への統合、実践の規模は縮小せざるを得ないでしょう。

経営幹部の認識を高めるためには、例えば取締役会の議題としてSDGsに関する方針や戦略を取り上げること。また、CEOなど企業のトップが、SDGsに関連するインタビューや対談などを通じ、積極的に取り組む姿勢をトップメッセージとして示すことによって機運を高めるといったことも、手法の1つとなります。

社員の企業理念への理解を促進し、理念に紐づいた発案、実践を引き出す。

経営トップのリーダーシップに加え、必要となってくるのが社員の積極的な発案、実践です。その際に重要となるのが、企業理念です。企業理念はその企業の存在意義や中核的な価値観が表現されているため、あらゆる取り組み、方針を社員が検討する上で、行動指針や判断基準になります。

SDGsを推し進めるためには、企業理念について社員が深く考え、理念に基づいた上で、SDGsに資する発案、行動ができるような機会を設けることも有効でしょう。

裏を返せば、SDGsの目標を経営に統合するためには、SDGsの精神に通じる企業理念を持っていることが重要であるとも言えます。例えば、「社会的な目標を見出せない」「目標実現のための具体的な組織像が見えない」「目標を実現するための、あるべき人材像が社員に伝わらない」など、企業理念がSDGsの実践に対して推進力を発揮しない内容になってしまっている場合には、企業理念自体の見直しも検討すべきでしょう。SDGsの精神を踏まえて、企業のあり方や今後の方向性を考えることは、自社の存在意義や将来性を見つめ直す上でも、非常に有意義なことなのです。

わかりやすいKPIを設定し、報酬制度や人事制度など、社内の仕組みに関連付ける。

SDGsの実践に際し、わかりやすいKPIを設定することは、社員の理解や共有を促すことにつながり、1つの指針となります。例えば「温室効果ガスの排出を〇年後までに△%削減する」、「カーボン・プライシングの考え方を導入する」、「世界的に信頼されているサステナビリティの格付けで上位クラスを目指す」、「環境や社会影響の分野で高い評価を得ている製品群を採用する」など。

世界有数の消費財メーカーであるユニリーバのSDGsの取り組みは、特に多くの企業の模範となっているので、事例として紹介しておきましょう。ユニリーバでは、「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」の中で、温室効果ガスについて「2020 年までに、製品のライフサイクル全体にわたって温室効果ガスの負荷を半減させます」、また廃棄物についても「消費者の皆さまが製品を廃棄する際に生じる廃棄物を 2020 年までに半分にします」という明確な目標を設定。その進捗を随時、報告しています。

[出典]/ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン/https://www.unilever.co.jp/Images/uslp-2010-j_tcm1291-462824_1_ja.pdf

こうした理想的な取り組みへの第一歩として、ステップ3で定めた自社の目標を達成するために、まずは計画を策定することが重要です。また、そのようなSDGsの目標達成に向けての具体的な役割に応じて、部門や個人に対して特別報酬の制度を設ける、取り組みの達成度や貢献度を全社的な達成度の審査や報酬体系に組み込む、役員や管理職の評価や報酬に反映される、といった仕組みづくりもあわせて検討しましょう。

3.すべての部門に持続可能性を組み込む

すべての部門に浸透させ、目標を全社の合意として“自分ごと化”させる。

SDGsの実践には、担当部門や専門とするプロジェクトチーム、専門家の役割もさることながら、全社を挙げた取り組みとして機運を高めることが重要です。例えば、これまではCSR部門が主体となり、SDGsの取り組みの実践へ向けて基盤をつくってきた企業においても、実践へと移すためには一歩踏み出し、全部門、全社員が関連する取り組みであるという認識を浸透させる必要があるでしょう。

もちろん、各企業の性質や設定したSDGsの目標によって、部門ごとの関連性の高さや重要度に差が出るのは当然ですが、社内の全部門の理解と主体的に取り組む企業風土の醸成は不可欠です。

以下に、すべての部門に持続可能性を組み込むための、代表的な手法をご紹介します。

推進主体の見直しや格上げなど、実践を推し進めるための組織体制を整備する。

これまでSDGsに対する取り組みは、企業の中のCSR部門などが一業務として担うケースも多く見られました。しかし近年、SDGsやESG問題に関する認知が広まり、その重要度が意識されるようになったことから、事業に深く浸透させるために推進主体を見直す動きが広がっています。

例えばCSR部門から経営層や経営企画部門へと移行する、もしくは従来通りCSR部門が担うものの、該当する部門を格上げし、執行役員直結の部門へと体制を転換するといったような手法です。また場合によっては、ガバナンス体制に、取締役会レベルのSDGsに関連する委員会を含めるケースもあります。

このようなSDGsを重視した組織の強化は、SDGsの取り組みにおいてスピード感のある決定が可能となり、大きな推進力となります。

全社員への働きかけにより認知度を高め、主体的な取り組みを促す。

全社的なSDGsを実践し、中核事業に根付かせるためには、自社スタッフ全員の理解と納得が肝であり、一人ひとりのSDGsに対するリテラシーを高めることが求められます。そのための第一歩となるのは、「SDGsとは何か?」「なぜ自社が取り組む必要があるのか?」「取り組むことでのメリットは?」といった観点から、SDGsへの学びを深めることです。このベースがなければ、主体的な取り組みを期待することは難しいでしょう。

社員一人ひとりが“自分ごと化”するためには、計画的かつ実務にリンクした研修などを開催し、現場に結びついた取り組みへと意識を転換することが重要です。また、単発の研修やセミナーではなく、さまざまな機会を設けたり、社内報などのメディアを活用したりしながら、意識が低下しないように継続的な学習の機会を提供することも心がけましょう。

さらに、一人ひとり、もしくは部門ごとの学びと意識を束ね、全社的な合意として形成して根付かせるためには、丁寧なコミュニケーションが鍵に。上層部からの情報の押し付けだけではなく、各部門のスタッフが議論を重ねて調和と意思疎通を図ること。ひいては、部門ごとの偏りなく、それぞれが不可欠な業務として認識する状況まで導くことです。

社員への働きかけの事例

・SDGsに関する資料・情報の共有について、LINEのノート機能やクラウドストレージを活用することで、情報の確認やアイデアの共有がしやすいように工夫。

・他社の取り組みから参考になる部分を学ぶなど、刺激を受ける機会を増やすため、同業他社の交流会参加などを促す。

・社内の環境活動の一環として行ってきたクイズ形式の社内テストで、SDGsに関する問題を出題。

・カードゲーム「2030 SDGs」などのツールを活用し、楽しみながら学べる機会を提供。

・海外出身の従業員が多い企業において、SDGsの説明資料を翻訳し、英語版も配布。

多様なメンバーを集めたチーム編成で、部門の枠を超えた取り組みへと発展させる。

SDGsのみならず、新たな事業のテーマを設定する際に重要なことは、幅広いリサーチによって多様なアイデアを集めた上で絞り込むことです。

そういった観点で考えた場合、従来の固定概念や常識に囚われず、SDGsを新たな視点で推し進めるためには、既存の組織の枠を超えた多様なメンバーを集めることも鍵となります。上司からの指示待ちばかりする部下や、新人のアイデアに耳を傾けない上司など、悪しき上下関係がはびこる風土は排除し、SDGsをきっかけに、アイデアや意見を出しやすい自由な発想を生む組織づくりを実践しましょう

特にSDGsの取り組みについては、優先課題の特定、実践、報告など幅広い部門が関連します。そのため、SDGsの目標に対する戦略の策定、実施を推進すべく、部門横断的な協議会や委員会、プロジェクトチームを設置する企業も増えています。例えば、各部門の責任者の相互連携をより強固にするために、部門長で構成するSDGs委員会を設置するといった事例も、ヒントになるでしょう。

さまざまな視点から、事業に定着させたSDGsの共通目標を実践に移す。

SDGsを企業経営に統合し、社員一人ひとりの課題として定着させた目標をいよいよ実践に移していきます。とはいえ、企業にとってSDGsは、従来の制度や組織を超越した新しい試みも多く、一筋縄ではいかないことも多いでしょう。そんな時には、多様な視点、方法論、アプローチを検討し、有効活用することで糸口となることもあります。

以下に、SDGsに貢献するための代表的なアプローチをご紹介します。

企業活動を通じてSDGsを実践することで、事業機会を拡大する。

SDGsに取り組む上で、王道ともいうべきアプローチは、本業を通じて貢献する道筋です。本業を通じてSDGsに貢献する方法として、大きく2つの考え方があります。1つは、製造過程や商品・サービスの提供の仕方を見直し、改善していくというアプローチ。例えば、事業活動に必要なエネルギーの使い方を見直すことです。これはコスト削減につなげることもできます。

もう1つは、製品やサービスそのものを改善するなど、中核的事業を通して実践する方法です。これは、技術開発などを伴うこともあり、長期的な取り組みとなる場合もありますが、巨大な事業機会を現実へと変えていく可能性を秘めています。

いずれも、製品やサービスの付加価値を高めたり、企業価値を向上させたりというメリットにもつながり、新たな価値創造に直結すると同時に、企業経営の強みを生む機会にもなり得ます。

ステップ2で見出した優先課題に対し、どのように資源を投入するべきかを見極めながら進めましょう。

国の制度、仕組みを利用してSDGsを実践することで、組織運営の足がかりとする。

本業を通じ、事業として経営レベルで貢献することが難しい場合には、国や自治体の制度、仕組みを活用することも選択肢となります。例えばSDGsのターゲット5(ジェンダー平等を実現しよう)や、ターゲット8(働きがいも経済成長も)などにつながる雇用の分野においては、女性の活躍推進や仕事と育児の両立、若者の雇用増進といった課題に対して、国や自治体で多様な認定制度を設けています。また、環境の分野においても認証、登録制度があります。

認定、認証されれば税制の優遇措置が受けられたり、助成金の加算対象になったり、低利融資の対象になったりと、SDGsに取り組むハードルを低くしてくれるでしょう。

また、国や自治体による認証や認定といった第三者評価を得ることは、SDGsの取り組みの“見せる化”にも役立ちます。企業の社会性を高め、社会からの信頼性や認知度の向上にも役立ちますので、有効に活用しましょう。

行政による支援制度の例

・地方創生 SDGs 登録制度(国)

SDGs に取り組む民間企業を登録・認証する制度。

・ジャパン SDGs アワード(国) 

SDGs の達成に向けて優れた取り組みを行う企業・団体等を、全国務大臣を構成員とする SDGs 推進本部が表彰する制度。

・ESG ファイナンス・アワード(国)

ESG金融や環境・社会事業に積極的に取り組む企業、投資家、金融機関、諸団体等を表彰する制度。 

社会貢献性の強い事業を通じてSDGsを実践することで、新たな機会創出につなげる。

社会貢献性の強い事業、あるいは事業に関係する社会貢献活動は、すぐには収益として反映させづらいものの、企業の社会性を高め、将来的に本業で稼いでいくための布石となります。まずは地域活動への社員の参加、募金、寄付など間接的な貢献からスタートするのも選択肢の1つです。

以前はコストとみなされがちだった分野ですが、近年は将来のビジネスへの投資、中長期の経営リスクへの対応として評価される傾向が強まり、いわば戦略的活動ともいえます。取り組むにあたっての一時的なコストについては、国や自治体の支援制度や補助金を活用したり、国際機関と連携したりすることで、コストを軽減することも可能です。

募金による途上国支援の事例

公益社団法人日本青年会議所では、街頭募金、自動販売機型募金、クラウドファンディングによって集めた資金を使い、アジア各国に安全な水を届ける取り組みを実施。これまでに、バングラデシュに雨水貯留タンクを設置、カンボジアに魚の養殖事業の導入、インドの小学校にトイレの設置などを実現している。

さらにこの事業に関しては、日本青年会議所の一員として事業に携わった給排⽔衛⽣設備工事などを手がける民間企業の代表が、自社の事業として引き継ぎ、進化、発展させた。利益のすべてをカンボジアに寄付し、上下水道整備などの公共投資に回すための仕組みを構築。公共事業の財源確保からインフラ整備に⾄るまでのサイクルを確⽴した。

市場環境の整備を推進し、SDGsの取り組みが正当に評価されるように働きかける。

SDGsの取り組みが推奨される現代においては、持続可能性についてしっかりと向き合う企業が正当に評価され、生き残っていけるためのルールづくりや規範の制定などが求められています。そのような市場環境を整備するために、産業界の取り組みを先導し、ルールづくりやイニシアチブに参加する行為もSDGsの実践に向けた大切なアクションです。

例えば電子機器関係のメーカーや大手サプライヤーが自主的に規範を整備したことをきっかけに、今や電子業界の企業内では、事業を営む上で環境配慮、人権尊重を考慮することは常識化しています。

企業は自社の強み、経験、知見などを業界内で共有しながら、SDGsに基づいた市場環境づくりへの貢献も期待されているのです。

イニシアチブの事例

大手デジタルカンパニーであるコニカミノルタ株式会社は、取引先に自社の環境に関する技術やノウハウを提供することで、省エネや省資源による環境負荷の低減、コストダウンによる事業価値創出の両立を推進。また、省エネや省資源のノウハウをプラットフォーム上で参加企業と共有することで、参加企業自身の実行力につなげると同時に、プラットフォームも成長させ、グローバルに拡大していくことを狙う。

4.パートナーシップの強化により、視野を広げる

社外のパートナーシップを積極的に構築し、取り組みを加速する。

SDG Compassによると、2014年に実施されたある調査において、「3万8000人の企業の役員・管理職およびオピニオンリーダーのうち90%が、持続可能性の課題は、企業単独では効果的に対処することはできない」と回答したと伝えています。

つまり、SDGsの実践において、企業単独の力で進めるには限界があるということです。SDGsへの取り組みを強く、広く進めていくためには、社外との連携をしっかり構築していかなければなりません。パートナーシップを通じた取り組みは、自社だけでできること、考え得ることの枠を超え、想像を超越する価値を生み出すきっかけにもなります。

ステークホルダーや同業他社、地域との連携など、SDGsの取り組みを加速させるために、さまざまなパートナーシップの構築を検討することが期待されています。

ステークホルダーとの関係性を強化することで、市場に新しいソリューションを生む。

バリューチェーンに関わる多様なステークホルダーの関与、連携を求めて、積極的に働きかけましょう。バリューチェーン内の企業が共通目標を設定し、互いのコア・コンピタンスを活用し、技能や技術、資源などを相互補完しながら取り組むことで、SDGsの精神を汲んだ新たな制度の制定、市場変革などをもたらすでしょう。そして、新たなソリューションを提供するといった将来像も現実味を帯びてきます。

同業他社や業界団体との連携により、情報共有や市場の整備を推進する。

市場の整備、変革という観点で考えると、同業他社や業界団体とのパートナーシップも有効です。業界全体の基準、慣行の引き上げ、共通課題の克服に向けた取り組みとして、SDGsに対する感度の高い企業のリーダーがパートナーシップを組み、イニシアチブを取りながら、積極的に活動している例も見られます。

情報共有はもとより、社会への発信力、取り組みを加速する上で、業界内のパートナーシップは必須条件と言えるでしょう。

異業種や民間非営利団体などに呼びかけ、取り組みの効率化を図る。

取り組み内容によっては、業種の枠を超えて異業種の他社と手を組むことで、効率性を高めることができます。また、着目したESG問題の当事者と接点がない場合には、NPOや市民団体、市民活動推進センターなど、民間の非営利セクターの協力が重要な役割を果たすケースもあるでしょう。

地域、公的セクターとの関係を深めることで、地域性の強いSDGsを盛り上げる。

地域を中心に活動する企業にとっては、地域内でのパートナーシップが重要になります。環境省でも、プラットフォームをつくり、地域の民間企業、協同組合、社団法人、財団法人、NPO、金融機関などの登録を呼びかけています。

また、取り組みたい活動に関して、有効なパートナーシップが見つからない場合や、他のパートナーシップと有効な関係性が構築できない場合などは、地域の自治体や商工会議所など公的セクターに相談するのも1つの方法です。公的セクターを介して、パートナーシップを探す、またはSDGsの推進に関して地域レベルで独自の支援制度を設けている場合もあるので、相談してみると良いでしょう。

5.まとめ

SDGsの取り組みを経営に統合することでメリットを生み、社会と企業の持続的成長につなげる。

SDGsは、地球規模の優先課題や世界のあるべき姿など、グローバルなニーズを企業戦略と結びつけ、ビジネスソリューションへとつなげる新しい視点を提供する考え方です。SDGsの取り組みに経営的視点、ビジネスの要素を取り入れ、事業に組み込んでいくことにより、そこに関わる人それぞれにメリットが生まれ、社会の持続可能性を高めるでしょう。そして、ひいては企業の持続的成長にもつながるのです。

SDGsの取り組みを重要な事業の1つと捉え、企業に定着させると共に、さまざまなパートナーシップに働きかけることで、実践を加速させましょう。

次の記事では、SDG Compassの最終段階となる「報告とコミュニケーション」について考えていきます。 

>>STEP5┃報告とコミュニケーション 

ステップ4のアイグッズ的ポイント

・CEOや経営幹部による積極的なリーダーシップは、SDGs推進に不可欠

・社内の全部門に理解を得て、研修の開催や同業他社のコミュニティへの参加推進などを通じて、当事者意識が芽生えるように働きかける

・共通の目標、優先課題の下、社外のパートナーと力を結集することが重要

・SDGs意思決定層と現場の乖離を埋めるために、事例を探す

(他の会社がどのように現場との壁を乗り越えているのかを確認する)

参考文献

「SDG Compass」(GRI・UNGC・WBCSD)

「すべての企業が持続的に発展するために-持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド-[第2版]」(環境省)

「未来につなげるSDGsとビジネス~日本における企業の取組み現場から~」(GCNJ・IGES)

・『図解入門ビジネス 最新SDGsの手法とツールがよ~くわかる本』(秀和システム)

・『やるべきことがすぐわかる! SDGs実践入門』(技術評論社)

コメントを残す

※コメントは管理者の承認後に掲載されます。