各業界のSDGs

観光・レジャー業界が取り組むSDGsとは? サステナブルな観光施設「レゴランドⓇ・ジャパン・リゾート」を徹底レポート!

2022/07/29

企業活動の一環としてSDGsへの積極的な参画が叫ばれる昨今。2022年4月にはプラスチック削減を目指した新法案「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」も施行され、ますます多くの業界でサステナブルな取り組みが求められています。

そんな中、観光・レジャーの業界ではどのようにサステナブルな取り組みを推進しているのでしょうか。

愛知県にあるファミリーテーマパーク「レゴランド・ジャパン・リゾート」では、レジ袋の有料化や紙ストローの導入といった対ゲスト向けの改善のみならず、バックヤードも含めてリゾート全体で多くの施策を打ち出しています

今回は、「レゴランド・ジャパン・リゾート」を訪問し、サステナブル視点で園内を見学。「なごやSDGsグリーンパートナーズ」の認定エコ事業所にも定められた、愛知県屈指のサステナブル観光施設を徹底レポートします!

「レゴランド・ジャパン・リゾート」って、どんなところ?

撮影/アイグッズ

日本で唯一、レゴブロックの世界観を満喫できる「レゴランド・ジャパン・リゾート」。2017年4月に開園した屋外型テーマパーク「レゴランド・ジャパン」をはじめ、見て触って学べる体験型の水族館「シーライフ名古屋」や、夢心地に浸りながら朝まで過ごせる「レゴランド®・ジャパン・ホテル」からなる一大ファミリーリゾートです。

リゾート内では、人にも環境にもやさしいレジャー施設のモデルケースとして、脱プラスチックをはじめとしたサステナブルな取り組みに力を入れています。

「レゴランド・ジャパン・リゾート」をサステナブルな視点でチェック!

多角的な視点から、サステナブルにまつわるさまざまな取り組みを実践する「レゴランド・ジャパン・リゾート」。中でも核となるのは、使用プラスチックの大幅削減や、海岸ごみによる生物への被害などについて、楽しみながら環境のことを学べるコンテンツづくりです。

また、対ゲスト向けのサービスの場のみならず、「なごやSDGsグリーンパートナーズ」の認定エコ事業所としてスタッフの意識を高め、企業全体としてSDGsへの貢献を目指しています

まずは、一連の取り組み内容について概要をご紹介します。

1.飲食施設やホテルでの使用プラスチックを大幅削減

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リゾート内の飲食施設では2019年より、プラスチック製ストローを紙素材に変更。2020年には、ショップで無料配布していたプラ製レジ袋を有料化しました。現在、使用中のアルコール用プラスチックカップも、紙素材への変更を予定しているといいます。

また2022年4月からは、飲食施設におけるプラスチック製フォーク、スプーン、ナイフなどの使用を中止(一部を除く)。持続可能な資源由来のプラ素材(バイオマスプラスチック)に変更しました。

加えて、業界全体としてプラスチック製品の多用が課題視されているホテルにおいても、衛生面に十分配慮しながら、プラスチック製アメニティの利用を抑制しています。

2.ワークショップや水族館で、海洋ごみについて学べる場を提供

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水族館「シーライフ名古屋」では、海洋ごみについて学べるエリアを設置。レゴブロックを使い、プラスチックごみで汚れた海をきれいにする体験プログラムを実施するなど、海洋ごみについて考えるワークショップも開催しています。

そのほかにも「シーライフ名古屋」では、子どもたちがSDGsについて楽しみながら学べるコンテンツとして、名古屋市環境局などが企画する「なごやSDGs街(マーチ)」に参画。SDGsについて学べる施設「SDGs フィールド」のひとつとして、取り組みに協力しています。

3.「なごやSDGsグリーンパートナーズ」の認定エコ事業所として活動を推進

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「レゴランド・ジャパン・リゾート」では、リゾート全体における資源の節減、循環、および環境負荷低減活動を推進。またバックヤードや社内環境などを含め、スタッフが一丸となってSDGsに取り組んでいます。

このような一連の取り組みを通じて「レゴランド・ジャパン・リゾート」は、「なごやSDGsグリーンパートナーズ」のエコ事業所に認定。さらに2022年には、最上クラスである「認定優良エコ事業所」としての認定を目指し、取り組みを強化しています。

「レゴランド・ジャパン・リゾート」をサステナブル視点で徹底レポート!

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SDGsの観点から、多種多様な取り組みを実践する「レゴランド・ジャパン・リゾート」。パーク内のショップや飲食施設などを巡ると、園内のいたる所でサステナブルな試みに出合えます。

そこで、今回はSUSPRO編集部が「レゴランド・ジャパン・リゾート」に訪れ、サステナブルな取り組みを実際に見て来ました!広報担当の山本さんとともに、園内やホテル、水族館「シーライフ名古屋」を順に巡りながらレポートしていきます。

今日は「レゴランド・ジャパン・リゾート」のサステナブルな取り組みについて、いろいろ教えていただきたいと思っています。よろしくお願いします。

こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。

レジャー施設におけるSDGsの取り組みとして、先進的な活動をされているそうですね。

そうなんです。「レゴランド・ジャパン・リゾート」では、リゾート全体で資源の節減、循環、環境負荷低減活動を推進しています。順番にご案内していきますね。

エコ素材のカトラリーを使う「ファクトリー・サンドウィッチ・カンパニー」へ

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まずは、入り口からすぐの「レゴ・ファクトリー」エリアへと向かいます。レゴブロックが作られている工場の見学ができ、見ているだけで大人も子どもワクワクしてしまうこと間違いなし。

エリア内のレストラン「ファクトリー・サンドウィッチ・カンパニー」では、レゴブロックの世界観やキャラクターをモチーフにしたフードやデザートを提供しています。

ここではどのような取り組みをしているのですか?

サンドウィッチなどの軽食を「紙トレー」で提供しています。日本のみならず、世界各地のレゴランドで昔から取り組んでいるものです。

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プラスチック容器ではなく、紙製のものを使用しているんですね。

カトラリーも紙製ですか?

カトラリーについては、2022年4月以降、50%以上紙を含んだ素材に順次切り替えているところです。やや小さめに見えますが、子どもにも使いやすいサイズを意識しました。

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大人も子どもも使える、ちょうどよいサイズに感じますね。

ストローも紙素材を使っているのですか?

はい。2019年に、FSC認証紙のストローを導入しました。

ただし耐久性に不安があり、すぐにふやけてしまうという課題があります。より快適に違和感なく使っていただけるよう、改善策を考えているところです。

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その改善策の第一歩となったのが、2022年7月8日から新発売となったドリンク「シュワパチファンタミックス グレープ/メロン」のストローです。

こちらの商品には、食べられる「クッキーストロー」を採用。ベリーミックスと炭酸氷を使った、飲んでも食べてもおいしいドリンクに。食べられる「クッキーストロー」を使うことで、最後までおいしく飲める優れものです。実はこちらのクッキーストロー、紙製のストローよりも耐久性があるそうです。

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そのほか、2020年7月からはテイクアウト用の食品を入れる袋として、サトウキビを原料としたバイオマスプラ配合の袋を採用しています。現在はプラスチック製を使っているビール提供時のカップについても、「プラスチック製に替わる素材のものを検討中です」と明かしてくれました。

「ビッグ・ショップ」のショッピングバッグは、リサイクルプラスチック製袋を採用

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ファクトリーエリア内にある「ビッグ・ショップ」でも、サステナブルな取り組みを推進しています。こちらは面積895平米、約650種を販売するアジア最大級のレゴショップです。

スペースも広く、品数も多彩なので目移りしてしまいます。

ショップでは、お買い上げ商品をお渡しする際に膨大な袋が使われます。

そこで全世界のレゴランド共通で、リサイクルプラ素材を80%使用した袋でお渡ししています。

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袋は有料ですか?

開業当時からこの素材を使用しており、2020年7月から有料化しました。ショップの袋は、SSサイズ2円、Sサイズ5円、Mサイズ10円、Lサイズ30円、LLサイズ50円で購入できます。

厚めで丈夫、耐久性にも優れた素材なので、繰り返し利用されている方も多いようです。サイズ展開が多彩なので、お土産を小分けして渡したい時などにも便利ですよ。

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レゴブロックの箱の大きさや重さを考慮した、丈夫なショップ袋。リサイクル素材というだけでなく、袋そのものを再利用することでゲストもエコ活動に気軽に参加できます。

また、ショップ内ではオリジナルのエコバッグも販売されています。

園内のいたるところに設置された、ミルクジャグのリサイクルベンチでひと休み

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園内を歩いていると、いたる所にベンチがありますね。

実はこのベンチ、リサイクルミルクジャグという素材で作られているんですよ。

リサイクルミルクジャグとは、海外の各家庭で一般的に使っている牛乳用の容器のことです。大量に廃棄される容器をリサイクルし、再生プラスチックとして活用しています。

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この数字にはどんな意味があるのですか?

ロゴマークに書いてある数字の分だけ、ミルクジャグを使っているということがひと目でわかるように表示されているんですよ。

このリゾート内のベンチは、 2.1ガロンサイズのミルクジャグを約940本使って作られました。

廃棄されてしまっていた素材を、有効に活用されているのですね。

こちらのミルクジャグを使ったベンチは、耐久性の高さなどから世界中のレゴランド®️で使用されているのだそうです。

「シーライフ名古屋」で海洋ごみについて学ぶワークショップに参加しよう

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続いては、隣接する水族館「シーライフ名古屋」へ。

レゴブロックを使って海洋ごみについて考えるワークショップを開催されたそうですね。

はい。夏休み期間を利用して、子どもたちに海洋ごみについて学んでもらう企画を実施しました。

レゴブロックで作った浜辺にタイヤなどのごみを模したレゴブロックを置き、海の現状を表現。そこで子どもたちは、ごみを回収して、代わりにレゴブロックで作ったウミガメを置くことで「海に帰す」という疑似体験をしました。

レゴブロックで遊びながら海のことを学べる、素敵な企画ですね。

ワークショップだけではなく、「シーライフ名古屋」では、海洋ごみについて学べる展示エリアを常設しています。

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この水槽に浮かんでいる白いクラゲのようなものはなんですか?

クラゲのように見えますが、実はプラスチックなんです。実際に、高知県の海で保護されたウミガメのお腹から出てきた海洋ごみです。保護したウミガメは、1階で飼育展示していますよ。

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そうだったのですね。プラスチックの海洋ごみなどによって汚された海が、生き物たちに与えている影響の大きさを実感できる展示ですね。

ありがとうございます。「シーライフ名古屋」ではこれからも、SDGsの目標14である「海の豊かさを守ろう」の達成に向け、海の生き物のすばらしさや面白さについて楽しく学ぶ機会を提供していく予定です。子どもたちが海に興味を持つきっかけになればうれしいです!

「レゴランド・ジャパン・ホテル」でサステナブルな1日の締めくくり

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では続いて、「レゴランド®・ジャパン・ホテル」をご案内します。フロアごとの廊下や客室は、テーマごとにレゴの世界観を表現した空間になっているんですよ。

テーマパークで遊んだ後も、朝まで余韻に浸れますね。

ホテルの客室は、フロアごとに「パイレーツ」「キングダム」「レゴニンジャゴー」「レゴフレンズ」「アドベンチャー」のテーマが設けられ、テーマに合わせた空間が演出されています。

また、2段ベッドやテレビを完備した子どもたち専用のベッドルームにはトレジャーボックスを設置。部屋の中に隠されたクイズに挑戦してトレジャーボックスを開けると、中にはレゴブロックのプレゼントが!秘密基地のような客室が、子どもたちの好奇心をくすぐります。

ホテルでも、サステナブルな取り組みを積極的に行っているのでしょうか。

はい。各客室に備えられている歯ブラシやカミソリ、ヘアブラシといったアメニティは、2022年4月のプラスチック資源循環法の施行に伴い、素材を変更しました。

アメニティの素材としては、歯ブラシは麦がらを29%配合ヘアブラシは紙を30%配合カミソリはバイオマス再生プラを50%配合した素材に変更。外袋は現状プラスチックですが、随時変更していく予定です。

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今後はどのように取り組みを進めていく予定ですか?

ホテルとしては5t以上のプラスチック削減を目指しているので、アメニティの外袋の改善など順次切り替え、改革を進めているところです。

現在、シャンプーやリンス、ボディーソープはレゴキャラクターの絵柄が入った小分けボトルで設置していますが、秋頃には据え置きのディスペンサータイプに変更予定です。

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5tの目標を達成するためには、あらゆる所の見直しが必要なのですね。

そうですね。ホテルでは特に、利用いただくゲストの方々が快適に過ごせるように、衛生面も重視しながらアメニティや設置物などの見直しを進めています。

好評だった絵柄付きのアメニティをなくすことは心苦しいと話す山本さん。「より一層ゲストの方々に喜んでもらえるように、それに代わるようなサービスを検討中です」と明かしてくれました。

観光・レジャー業界が取り組むSDGsのヒント満載!進化する「レゴランド・ジャパン・リゾート」流のサステナブル

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スタッフの方が往来するサービス棟1階の掲示版に、「省エネ活動」 目標と進捗状況 が掲示されていますね。

実はもともと、バックヤードであるスタッフの働く環境レベルから、SDGsの取り組みを始めたんです。

バックヤードでは、照明や空調の設定を意識することで、電力量の削減につなげています。

「レゴランド®️・ジャパン・リゾート」では、各部署から1名ずつ委員を選出し、2019年1月に省エネ委員会を発足。電力量削減につながるエアコンの設定や、エネルギーコスト削減につながる水やガスの使用量抑制、廃棄物のリサイクルゴミステーションの設置などの取り組みが進められています。

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さらに、2か月ごとに進捗を“見える化”。全スタッフに取り組みを周知させるため、POP の掲示や目標・進捗状況の貼り出しなどを実践し、バックヤードでの取り組みも強化しています。

今後予定されている新たな施策やグッズ、設備があれば教えてください。

「レゴランド®️・ジャパン・リゾート」だけではなく、『レゴグループ』全体の動きとして、2030年までにレゴブロック本体の素材を、使用済みペットボトルによる再生素材へと変更する動きがあります。

それはすごく楽しみな取り組みですね!

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中部地方電気使用合理化委員会委員長表彰」 を受けたことが大きな転機となり、エコへの関心が高まり、取り組みを加速していった「レゴランド®️・ジャパン・リゾート」。

取材の最後には、「レゴランド®️・ジャパン・リゾート」流のサステナブルな取り組みへの思いや、今後の展望を伺いました。

「レゴランド®️・ジャパン・リゾート」は、2017年の開業から3年間の活動を通してさまざまな取り組みを進めてきました。2021年には「なごやSDGsグリーンパートナーズ」 の2つ星にあたる「認定エコ事業所」に定められ、私たちだけではなく来園されるゲストの方々も一丸となって、SDGs活動を進められていると、ひしひしと実感しています。

2022年からは、3つ星である「認定優良エコ事業所」の申請に向けて、バックヤードや園内施設での取り組みを推進しています。今後も引き続き、電力量削減、エネルギーコスト削減、廃棄物リサイクル率の観点から目標を立て、積極的に取り組んでいきます。

観光・レジャー業界のサステナブルな取り組みについて、大変勉強になることばかりでした。今日はありがとうございました。

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SDGsの取り組みについて、当初はバックヤードであるスタッフの働く環境レベルからスタートをしたという「レゴランド®️・ジャパン・リゾート」。

今では、ゲストを迎えるパークやショップ、ホテルへと視野を広げて取り組みを強化すると同時に、ゲストの方も巻き込みながらSDGsの思いに触れられる機会を幅広く提供しています。

全世界にファンを持つレゴブロックの聖地「レゴランド®️・ジャパン・リゾート」が、観光・レジャー業界のSDGsをリードすることで、多くの方の関心を高めるきっかけになるのではないでしょうか。

>>取材協力:レゴランド・ジャパン・リゾート
©2022 The LEGO Group.

取材・撮影/アイグッズ
編集/エディマート

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