サステナブル生地

「パイナップルレザー」とは?有名ブランドも採用、サステナブルな食品廃棄物素材でSDGsをリード

2021/10/04 (更新日:2021/11/29)

環境問題やアニマルウェルフェア(動物福祉)への関心が高まる中、服飾雑貨で使われる「レザー」の種類は実に多様化しています。

 「パイナップルレザー」は、主にパイナップルの葉を原料に作られたヴィーガンレザーの一種。『シャネル』や『ナイキ』、『H&M』といった大手ブランドがこれを活用した商品を発表するなど、現在、世界規模で注目されている新素材です。

 廃棄素材を活用するサステナブルな面と同時に、風合いや耐久性はパイナップルレザーならではの特徴があります。バッグやポーチ、財布などさまざまな製品に活用可能ですが、アイテムの使用シーンやコンセプト、イメージにマッチするかどうかを考えて選択する必要があるでしょう。

そこで今回は現在主流となるレザーの種類を紹介しながら、パイナップルレザーの特徴について解説していきます。

1.フィリピンの伝統衣装にも使われてきた繊維。パイナップルレザーの特徴

パイナップルの繊維と言われてもイメージがわきづらいかもしれませんが、新素材として突然スポットライトを浴びたわけではありません。

その歴史を踏まえ、まずはパイナップルレザーの特徴について見ていきましょう。

イギリスの『ANANAS ANAM社』が開発した天然由来素材

パイナップルレザーを開発したのは、イギリスの企業『ANANAS ANAM』(アナナス・アナム)社です。「ピニャテックス」という素材名で、有名ブランドを中心に従来レザーの代替品として既に多くの製品で使われています。

開発のきっかけは、レザーグッズを手掛けていた創業者がその製造過程で生まれる環境負荷に憂いを抱いていたこと。たまたまフィリピンから新産業サポートの依頼を受け、同国にパイナップル繊維でできた伝統衣装があることから着想しました。

なお、製品1㎡当たり約480枚の葉が使われ、パイナップルの樹16本分に相当します。

高い柔軟性と軽さでサステナブルな生地に

パイナップルレザーの機能面としては柔らかく軽い生地感が挙げられ、従来の動物の皮(アニマルレザー)、それ以外の合成皮革等(ヴィーガンレザー)双方の良い面を発揮できているといえます。

加工面では簡単にプリントや裁断が行え、多様な製品への利用が可能。パイナップルレザーは従来のレザーと同等の機能を持ったサステナブルな生地なのです。

2.パイナップルレザーのサステナブルなポイント

フィリピンで古くから使われてきたパイナップルの繊維が、SDGsが求められる時代に再注目されるのは、サステナブルなポイントがあるから。

 ここでまず、一般的なレザーの種類について解説します。パイナップルレザーの相対的な特性から、そのサステナブルなポイントを理解しておくと良いでしょう。なお、レザーの種類については考え方や定義が多岐にわたりますので、ここでは「アニマルレザー」「ヴィーガンレザー」の2つに分けて考えていきます。

薬品を使う「なめし」が必要なアニマルレザー

アニマルレザーとは文字通り動物の皮を使ったレザーのことで、天然皮革と呼ばれることも。アニマルウェルフェアの観点から、近年では使用を控える動きが少しずつ広がってきているようです。

もう一つ負の側面として、「なめし」工程の環境負荷が指摘されています。なめしとは、皮の腐敗や乾燥を防いで柔軟性を保つために薬品を使う作業のこと。その工程で大量の水を必要とし、薬品を扱う作業者の健康面にも負荷がかかることから、サステナブルな素材とはいえなくなっています。

植物性から人工・合成皮革まで幅広いヴィーガンレザー

動物の皮を使わないレザーを総称して、ヴィーガンレザーと呼びます。ヴィーガンとは「動物の命を搾取しない」ことを表す言葉。パイナップルレザーはヴィーガンレザーに含まれますが、広く人工皮革や合成皮革も含めて考えられることが多いようです。

そして近年注目を集めるのが、パイナップルやサボテン等を使った植物性レザーや、キノコ由来のレザー、あるいは魚の皮を使ったレザーです。アニマルレザーの代替品として、加工工程まで含めて環境負荷を与えない新素材として研究開発が進んできました。

パイナップルレザーの環境にやさしい製造工程

パイナップルレザーの生産工程 作成:アイグッズ

時代の声に応え、『ANANAS ANAM社』以外にもパイナップルレザーづくりを手掛ける企業が増えているようですが、ここでは開発した同社の製造工程を確認しておきましょう。

 まず、パイナップルの葉から繊維を取り出し、繊維は水で洗った後、天日干しにします。この状態ではまだ糊のようにネバネバしたガミングと呼ばれる成分が残っており、これをバクテリアに食べさせて除去する工程に移ります。

その後、繊維に針を当てるニードルパンチを行い、フェルト状に加工。フェルトができたらコーティングとタンブラー乾燥を施して完成です。

 水を使うのは、基本的に葉から繊維を取り出したときだけ。繊維が抜かれた葉は、バイオマスとして栄養豊富な天然肥料やバイオ燃料に再利用されます。

3.パイナップルレザーのメリット・デメリットとは?

ご紹介したパイナップルレザーの特徴を踏まえ、素材としてのメリット・デメリットを整理してみましょう。

軽量さで優位に。パイナップルレザーを使うメリット

ナチュラルなシボ(模様)があり、見方によってはアニマルレザーと比べても遜色ない印象です。軽い手触り感にアニマルレザーとの違いを感じますが、この感触の方がよいという人がいるかもしれません。麻や綿に近い手触りと感じる人もいるようです。

 経年劣化も人工皮革や合成皮革に比べたら、気にするほどではないようです。そして、使う人にとって最大のメリットとなるのは、その軽量さ。バッグや財布など、アニマルレザーで作った同じ形状の製品に比べ、20%以上軽く仕上げることができます。

パイナップルレザーのメリット

  • ナチュラルなシボ(模様)と、麻や綿に近い軽い手触り
  • 人工皮革や合成皮革に比べて経年劣化が少ない
  • アニマルレザーに比べて20%程度軽く仕上げることが可能

流通数の増加を。パイナップルレザーを使うデメリット

繊維素材から作られているので、生地表面に若干の繊維感が残ります。ただしメリットとして挙げたように、この繊維感がよいと感じる人はいるでしょう。

 また、まだ生産数が少なく、高価である点もデメリットとなります。製造会社や取扱商社が増え、品数が市場にもっと出回るようになれば価格も下がり、商品化までにかかる時間も短縮されるはずです。

 そして、植物性レザーとはいえ、完全な生分解性ではないことも気になる部分です。パイナップル繊維は土に返りますが、加工工程でプラスチックや樹脂がごく少量含まれ、これが完全な生分解を妨げることになります。

4.パイナップルレザーにぴったりなおすすめグッズ

2019年に有名ブランドの『シャネル』が、パイナップルレザーを使った帽子を発売して話題を呼びました。最もアピールできる長所は、その加工性にあります。

従来のアニマルレザーを使って製作していたバッグやポーチ、カバン、そして帽子のような服飾関係のものまで十分にカバー。さらに水に強い特性を備えたことから、水辺のレジャー等に持ち出せるアイテムづくりにも幅を広げそうです。

 代替性のポテンシャルは高く、『シャネル』の帽子のように高級感を出したいアイテムには特におすすめです。

5.天然由来のパイナップルレザーを選択肢に加え、SDGsへの意識の高さを訴求

人にも環境にもやさしく、廃棄物利用の点でフェアトレードにもつながるパイナップルレザー。繊維感の残る見た目や軽い手触りでアニマルレザーとの違いはありますが、その部分が逆に好きという人も多いようです。

何よりもパイナップルからレザーを作るというインパクトは絶大で、SDGsへの意識の高さを訴求するにはもってこいの素材ではないでしょうか。アイグッズではまだまだ高価なパイナップルレザーを最適価格で調達するルートを確保。加工性に優れたパイナップルレザーで、御社のSDGsへの取り組みを加速してみてはいかがでしょうか。

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