サステナブル生地

「再生ウール」とは?生地の残り糸から作られる素材でSDGsの取り組みを実現

2021/10/22 (更新日:2021/11/29)

生産過程で出る生地の残り糸などを集めて作られる「再生ウール」。手触りや品質は純粋なウール生地とほぼ変わりなく、マフラーやブランケット、手袋など織り製品に幅広く対応できる素材です。

純粋ウールとの大きな違いは、生産過程で生じる環境負荷を抑えられるということ。純粋ウールは天然素材という点で好印象を持たれがちですが、実は、紡績から染色、製品化まで水やエネルギー、薬剤などを使用することで、環境へ一定の負荷をかけています。

一方、再生ウールは資源を再利用することで、生産過程で必要な水、エネルギーを大幅にカット廃棄物の削減にも貢献できます。SDGsに貢献できるサステナブルなアイテムとして注目されているのです。

今回はそんな再生ウールについて、特徴や生地を使用するうえでのメリット、デメリットを紹介していきます。

1.ファッション業界でも注目を集めるサステナブル素材。再生ウールの特徴

ウールのリサイクルは、国内で100年以上、ヨーロッパで何百年も昔から行われてきました。なかでも近年、注目を集めているのが素材としての「再生ウール」です。概要を見ていきましょう。

SDGs達成をめざす世界の潮流に合う、エコなウール素材

再生ウールは、使い古したウール製品や工場で出る裁断くずなどをリサイクルしたウール素材のため、同一色で染めた糸で作る純粋ウールとは違い、さまざまな原材料の色をそのまま生かし、組み合わせて作ります。そのため、絶妙に色の変化があらわれ、表情が豊かな製品に仕上がります。

SDGsへの世界的な意識の高まりを背景に、再生ウールは需要の上昇が見込まれます。パリコレクションの2021年秋冬コレクションでは、イギリスのハダースフィールド、イタリアのビエラと共に世界三大毛織物産地に数えられる愛知県の尾州で作られた再生ウールが登場し、サステナブルなウールとして各国のファッション業界の注目を集めました。

再生素材なのに、純粋ウール同様の使用感が期待できる

機能面では、再生ウールと純粋ウールの違いはほとんどないとされています。ウール素材ならではの保温性をはじめ、伸縮性通気性撥水性などは、純粋ウールと同様のものが期待できるのです。

ただし前述のとおり、色合いは純粋ウールとは少し異なります。では、こうした純粋ウールとの相違点や、なぜ再生ウールがサステナブル素材なのかというポイントを含め、再生ウールについてさらに詳しく見ていきましょう。

2.再生ウールの生産過程とサステナブルなポイント

再生ウールの生産工程 作成:アイグッズ

再生ウールは、古着や製造工程で生じる切れ端、裁断くずなどを回収し、リサイクルできない部分を取り除く仕分け作業を行います。その後、粉砕してやわらかいワタ状にし、糸を紡ぎ、ウール生地へと再生させていくのです。

こうした製造方法により、廃棄物が削減でき、純粋ウールに比べて製造工程での環境負荷が軽減されるという点でSDGsに貢献できます。

古着などの廃棄物を削減できるサステナブルな素材

環境省が2021年4月に発表した「ファッションと環境に関する調査」によると、2020年に国内の家庭や企業からゴミとして廃棄された衣類は51.2万トン。1日当たりに換算すると、総重量11tの大型トラック約130台分もの衣類がゴミとして毎日捨てられたことに。

SDGs達成のためには廃棄物を削減し、リサイクルされたサステナブル素材を積極的に取り入れることが望まれます。再生ウールは、使用済みのウール製品や生地の切れ端などを利用することで、廃棄物削減の貢献につながるといえるでしょう。

3.再生ウールのメリット・デメリットとは?

再生ウールをアイテムの素材とする際に、知っておきたいメリット・デメリットについて、それぞれ紹介します。

メリットは、純粋ウールの良さを残しサステナブルかつ安価に

再生ウールは純粋ウールよりも安価なことが大きなメリット。純粋ウールは羊を育てるために多くの資源を必要とするのでコストがかかります。一方、再生ウールはリサイクル素材のため、原料コストを大幅にカットできるのです。

さらに、仕上がった製品の使用感については、ウール素材がもともと備えている保温性、伸縮性などのメリットが、再生ウールでも変わりなく享受できます。

再生ウールのメリット

  • 保温性が高い
  • 伸縮性がある
  • ほどよい通気性がある
  • 撥水性がある
  • 純粋ウールに比べて安価
  • さまざまな色の糸を使用するため、一点一点異なるニュアンスの生地が生まれる

同一製品の大量生産には不向きな点がデメリット

再生ウールの生産過程では、手作業の割合が多くなっています。例えば、原材料からボタンやチャックなどリサイクルできない部分を取り除く作業。また、さまざまな色や毛質、細さなどを仕分ける作業などは、機械よりも人の手で行うほうが正確に対応できます。そのため、手作業で生産できるスピード、量に限りがあるので、早く大量に生産したいアイテムの素材には不向きかもしれません。

また、再生ウールは前述したように染色ができません。リサイクルしたさまざまな糸を混ぜた織物になるため、生地の箇所によって色や毛質などの混率に差が出ることも。さらに、純粋ウールに比べると強度が落ちることがあり、補強するために、ポリエステル繊維やアクリル繊維などとの混紡が必要になることもあります。

4.再生ウールにぴったりなおすすめグッズ

純粋ウールと同様に、再生ウールでは縫製品に幅広く対応できます。マフラーやブランケットをはじめ、手袋、バッグ、ポーチなどの素材にしてはいかがでしょうか。色合いの微妙な変化が出やすいことを生かし、一点一点異なる表情が楽しめるノベルティや、オリジナルグッズ制作などに取り入れるのもおすすめです。

5.表情豊かな再生ウールで、オリジナリティを発揮しながらSDGsに貢献

廃棄されるはずだった古着や裁断くずなどを利用する、エシカルリサイクル生まれの素材、再生ウール。生産過程に染色工程がなく、純粋ウールよりも環境負荷が少ない点でもサステナブルな素材です。

再生ウールが課題とする色や毛質の混率差は、アイデア次第ではニュアンスや素朴な風合いとして生かすことも可能。アイグッズでは、こうしたサステナブル素材の持ち味を生かすノウハウの蓄積により、SDGs達成に向けた企業活動をサポートしています。

コスト面、機能性、SDGsへの貢献度などを比較しながら、まずは純粋ウールの代替として検討してみてはいかがでしょうか。さらには、表情豊かな再生ウールだからこそ実現できる、オリジナリティのあるグッズ製作のアイデアにつながるかもしれません。

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