ホテルアメニティは再利用を!廃棄量を減らす新たな方法と処分以外の使い道

2025/03/12

ホテルアメニティは再利用を!廃棄量を減らす新たな方法と処分以外の使い道

近年、ヘアブラシや歯ブラシ、スリッパをはじめとするホテルアメニティの廃棄量の増加が問題視されています。環境問題の観点からも、プラスチック製品からの転換および処分後の再利用への対応が急務です。

そこで今回は、ホテルアメニティの再利用にまつわる知識を分かりやすく解説します。再利用に適したアメニティグッズや導入時の注意点、実際の取組事例も併せて紹介しているので、特にホテル・旅館のアメニティ資材担当者様は、ぜひ参考にしてください。

1.ホテルアメニティの再利用が課題となっている理由

ホテルアメニティの再利用が課題となっている理由

ホテルアメニティの再利用が注目され始めたのは、その廃棄量の増加が主な背景です。「令和2年版消費者白書」によると、日本のプラスチックごみの廃棄量は年間約9,400千トン。そのうち、リサイクル目的で回収されるのは9分の1に満たない量といわれています。

現在、大半のホテルアメニティがプラスチック製であり、その多くがワンウェイ(使い捨て)です。また一説によると、プラスチック製ホテルアメニティの廃棄処分は年間約40トンにも上るといわれています。

その結果、製造・廃棄時のCO2排出量膨大なプラスチックごみなどの問題が深刻化しました。社会全体のプラスチックごみ問題の解決のためには、宿泊業界にも転換が不可欠だといえます。そこで注目され始めたのが、ホテルアメニティの再利用です。

現在、ホテルアメニティ再利用推進の流れを受け、持続可能な循環型経済の構築が推進されています。その具体例は、プラスチック製品の使用を必要最低限に留めるため、ホテルアメニティの提供方法や原材料をエコなものに代替するといった取り組みです。

ホテルアメニティを再利用するサステナブルな取り組みを積極的に取り入れることで、ビジネスに「エシカル」という新たな価値観が生まれます。現代は、自らの行動にエコを意識する人が増えてきている時代です。環境配慮の姿勢をアピールすれば、それに賛同する新規顧客やリピーターの獲得にもつながるでしょう。

2.ホテルアメニティの再利用と「3R+Renewable」の関係性

ホテルアメニティの再利用と「3R+Renewable」の関係性

ホテルアメニティの再利用について考えるに当たり、ぜひ知っておきたいキーワードが「3R+Renewable」。プラスチック製品の「リデュース(Reduce:減らす)」「リユース(Reuse:繰り返し使う)」「リサイクル(Recycle:再資源化する)」および「リニューアブル(Renewable:再生可能な資源に置き換える)」の4つのキーワードで構成される環境用語です。

ホテルアメニティと3R+Renewableが深く関わっているのは、現在流通するアメニティの多くがプラスチック製品であり、法的規制の対象となることに由来します。

もともと、環境問題を背景として2006年に施行された「循環型社会形成推進基本法」により、3Rが先行して推進されていました。リデュース・リユースに関する対応の具体策にはアメニティバイキングやボトルの再利用などがあり、それらは比較的早いうちに普及・浸透しています。しかし、リサイクルに関しては、プラスチックの素材によって適切な対応が異なるため、再資源化のサイクルの構築が思うように進みませんでした。

そんな中、従来の3Rに新たな概念であるRenewableを加えて原則とした「プラスチック資源循環法」が2022年4月に施行。同法では、項目ごとに目標値が設定されています。それゆえに、特定プラスチック製品を取り扱う企業・事業者では、提供量および排出量を減らさなければならなくなりました。

なお、政府が示した特定プラスチック製品への対応策は次のとおりです。

特定プラスチック製品への対応策

  • リデュース・リユース:特定プラスチック使用製品の使用合理化の推進
  • リサイクル:特定プラスチック製品の製造・販売事業者等による自主回収・再資源化および排出事業者による廃棄抑制・再資源化を推奨
  • リニューアブル:プラスチック使用製品設計指針の提示

ホテル・旅館で提供されるプラスチック製アメニティも新制度の対象の一つ。そのため、ホテル・旅館でもリサイクル・リニューアブルによるアメニティの再利用に取り組む必要があります。

プラスチックのリサイクル手法は複数ありますが、プラスチック資源循環法で推奨されているのは「マテリアルリサイクル」です。マテリアルリサイクルとは、資源を分解して再度別のプラスチック製品に生まれ変わらせる技術を指します。

ゆえに法制度への対応のためには、ホテルアメニティのリサイクルおよび素材の転換が急務となりました。そこで登場したのが、アメニティに関連する複数の事業者が設立した「一般社団法人アメニティ・リサイクル協会」です。

同協会の設立目的は、アメニティのリサイクルの仕組みを確立させること。プラスチック製アメニティ回収・管理やガイドラインの作成、証明書発行などの取り組みを通し、マテリアルリサイクルの普及拡大を目指しています。

またマテリアルリサイクルが普及すれば、回収・加工の工程で新たな産業が生まれます。新産業の展開により、障がいのある方の就労施設や発展途上国などにおける就労機会の創出にもつながるでしょう。

3.捨てる以外の活用方法も!再利用できると人気のホテルアメニティ

使わなかったら持ち帰りもOK!再利用できると人気のホテルアメニティ

再利用や持ち帰りできる製品として人気のホテルアメニティの具体例として、次の8つが挙げられます。

歯ブラシ

歯ブラシ

歯ブラシは、ホテルアメニティの定番アイテムです。洗浄して使い回すことはできませんが、未使用かつ密閉パッケージであれば、再利用が可能です。

また、本来の用途以外にも、来客用のストックや掃除用具として活用できるため、宿泊客に持ち帰ってもらうことで、無駄なく有効活用できます。特に、デザイン性や品質にこだわった歯ブラシであれば、「持ち帰りたくなる」アイテムとして、再利用の促進につながります。

さらに、ホテルが使用済みの歯ブラシを回収し、リサイクルプラスチックとして再生することも一つの選択肢です。施設単位での資源循環を推進することで、環境負荷を軽減し、よりサステナブルな運営を実現できるでしょう。

カミソリ

カミソリ

カミソリは、男女問わずニーズの多い、ポピュラーなホテルアメニティ。面倒な刃の付け替えやお手入れがいらないことから、日常的に愛用している方も少なくありません。

イチオシは、自然素材やバイオマスプラスチック配合のカミソリ。見た目がおしゃれで利用者の心を掴めるうえ、環境配慮もバッチリです。

スリッパ

スリッパ

ホテルアメニティに多い袋入りのスリッパは、館内だけではなく持ち帰り用としても重宝されるグッズです。室内やオフィス内のほか、館内を移動する際の履き替え用に便利なので、繰り返し利用できると喜ばれます。

持ち帰りも想定したスリッパには、軽くてかさばらないものがおすすめ。持ち運びやすく、収納にも便利です。

ボトル類

ボトル類

シャンプー・リンス(コンディショナー)やボディソープなどを入れるディスペンサー付きボトルは、施設内での再利用を想定したグッズです。また、紙コップの代わりに持ち帰りできるボトルを設置すれば、持ち帰りと再利用の双方に活用できます。

ボトルは紙コップなどと比べ高級感があり、使いやすさもバッチリ。利用者の満足度向上および差別化の一環として、有名ブランドと提携したボトル類をアメニティとして導入しているホテル・旅館もあります。

ヘアブラシ・ヘアコーム

ヘアブラシ・ヘアコーム

アメニティに必ずといってよいほど含まれる、身だしなみを整えるのに欠かせないヘアコームやヘアブラシ。ホテル・旅館では、設置スペースを考慮して全体的にコンパクトなサイズのヘアブラシ・ヘアコームを提供されるケースが多く、ユーザーから持ち歩き用としても重宝されています。

無機質な印象のプラスチック製ヘアブラシ・ヘアコームが多い中、イチオシは木や竹など自然素材。木製のほか、バイオマスプラスチックなどから選べます。法規制に対応できるだけではなく、その物珍しさから話題になること間違いなしです。

バスアメニティ

バスアメニティ

バスアメニティの多くが、利用者単位での再利用が可能です。例えば、ヘアゴム・ヘアバンドやシャワーキャップ、ボディタオル・スポンジなどは、使わなかったら持ち帰ってそのまま使えます。

近年、温泉施設・銭湯などでバスアメニティの有料化が進む中、持ち帰ったホテルアメニティは節約のお助けアイテム。またボディタオル・スポンジなどは体を洗うほか、カットして食器洗浄や清掃用のウエス(掃除に使う端切れ)にするなど、さまざまな使い道があります。

衛生用品

衛生用品

基本的に使い捨てとなるコットン、綿棒、糸ようじ、爪やすりなどの衛生用品は、無料でもらえるならぜひ持ち帰りたいと考える方が多い傾向にあります。安さ重視の衛生用ホテルアメニティが多い中で、環境やお肌にやさしいこだわりの自然素材にすれば、高級感の演出競合との差別化が図れるはずです。

トートバッグ・ポーチ

館内での所持品の持ち歩きにあると便利なトートバッグやポーチ・巾着。持ち帰って記念にするほか、おしゃれな素材・デザインなら普段使いにも活用できます。ほかのアメニティを入れ、セットで販売・配布するのもおすすめです。

SUS amenityではエコなアメニティを多数展開中です。エコアメニティに興味がある方はぜひ、ご覧ください。

4.備え付けのホテルアメニティを再利用する際の注意点

備え付けのホテルアメニティを再利用する際の注意点

施設の備品としてホテルアメニティを設置し、それを再利用する場合は、入念なお手入れが必要です。もしゴミや汚れが付着していると、クレームやイメージダウンの原因になりかねません。そもそも、見知らぬ人が使用したホテルアメニティを再利用することに抵抗感を覚える方もいるでしょう。

そこで肝心なのが、お手入れはもちろん、リネン類の場合は除菌・滅菌などの衛生管理も徹底し、清潔な状態で提供すること。また使用期限のホテルアメニティは定期的にチェックし、適宜入れ替えることも大切です。

管理が徹底されたホテルアメニティを提供することで、利用者自身での再利用や施設側の回収もしやすくなるだけではなく、印象や満足度もぐっと上がるはずです。

5.【番外編】ホテルアメニティのアップサイクルサービスを紹介!

エコなアメニティ・客室備品を提供する「SUSPRO(サスプロ)」では再利用できるグッズの展開のほか、ホテルアメニティを別のアメニティにアップサイクルするサービス「SUS CYCLE(サスサイクル)」を提供しています。

SUS CYCLE(サスサイクル)

例えば、竹素材の歯ブラシ・ヘアコームはコースターにアップサイクル。竹素材を再利用して制作したコースターは、竹のくず繊維が表面にあり、見た目からエコであることが訴求できます。

竹製アメニティ再利用コースター
竹製アメニティ再利用コースター

当アップサイクルサービスでは、まず使用した竹歯ブラシやヘアコームなどのアメニティを回収し、竹素材を粉砕してペレット化。その後、ペレット化した素材を用いて新しい製品へと生まれ変わらせます。

エコな製品の再利用は「3R+Renewable」の目標達成の第一歩。もともとエコなアメニティを、使用後さらに回収・再利用することで、よりハイレベルなサステナブルの循環が実現できるでしょう。

現時点ではコースターのみですが、今後はバンブーファイバー配合カミソリをはじめとする幅広いアップサイクルグッズの製品化の実現を目指しています。

6.ホテルアメニティの再利用で環境問題の解決に貢献しよう!

アメニティは、ホテル・旅館などが提供するサービスのうち、顧客満足度の向上に欠かせないツールの一つ。環境問題との関連も深く、消費者のエシカル意識が高まる中、再利用やエコ素材への代替は新たな商機になりえます。実用性やデザインなどが異なる多彩なホテルアメニティが展開されているので、施設の雰囲気やニーズに応じて選びましょう。

エコなホテルアメニティを導入するなら「SUSPRO」へご相談を!高級感あふれる既製品への名入れ対応のほか、ノベルティや販売用にも活用できるオリジナルアメニティグッズの制作も承ります。また、本記事でも紹介した廃棄物のアップサイクルサービス「SUS CYCLE」も展開中。サステナブルな取り組みを検討中のホテル・旅館様はぜひ一度お問い合わせください。

([出典]/消費者庁/第1部 第2章 第3節 (1)プラスチックごみ問題の現状/https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2020/white_paper_135.html/)

SUSPRO編集部

【サステナブルグッズ制作チーム】 T.M

エコ素材アメニティや客室備品の企画・販売担当。実際にいただくホテルマーケティング担当者様の声を基に、サステナブルなアメニティや客室備品を開発。最新のエコ素材を取り入れたものづくりやホテルブランディングに日々取り組んでいます。

【サステナブルグッズ制作チーム】 T.M

コメントを残す

※コメントは管理者の承認後に掲載されます。