ビジネス向け エコ単語解説

【ビジネス向け解説】フェアトレードとは?意味や企業の取り組み事例を紹介

2021/11/11 (更新日:2021/12/24)

「公平・公正な貿易」を意味する、フェアトレード(Fairtrade)。貿易のしくみを公平・公正にすることで、発展途上国の生産者や労働者の自立を目指し、環境を守りながら持続可能な社会を目指す取り組みです。

現在、世界中の人々がその実現を目指して活動していますが、決して簡単なものではありません。だからこそ、企業や個人それぞれが数多くの社会問題と向き合うことが求められています。

今回の記事では「フェアトレード」の意味を、ビジネス視点で事例を参考にしながら解説したいと思います。

1.SDGs、ESGとの関連性とは?サステナブルな社会に向けた目標

フェアトレードの仕組み 作成:アイグッズ

フェアトレードと聞くと、発展途上国の生産者を守るための取り組みというイメージを抱く人が多いのではないでしょうか。もちろんそれは重要な目的のひとつではありますが、それだけにとどまらず、その理念はサステナブル(持続可能)な社会の構築に影響を及ぼしています。

サステナブルといえば、国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)、そして、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取った言葉であるESGを大切にする考え方に注目が集まっています。フェアトレードの本質を理解するために、まずこの2つの言葉との関連性を確認していきましょう。

フェアトレードとSDGs

SDGsには17の目標(ゴール)が設けられています。フェアトレードと関連がある目標を探してみると、実は17の目標ほぼすべてが、フェアトレードの考え方を導入しないと到達できないような内容。フェアトレードが、それだけ持続可能という概念に大きな影響を及ぼしているということがわかります。 

特定非営利法人フェアトレード・ラベル・ジャパンによると、SDGsの中でも特に8つの目標達成に対して、フェアトレードが大きく寄与するとしています。

フェアトレードが関わる、主なSDGsの目標

「1 貧困をなくそう」…適正価格での長期的な取引

「2 飢餓をゼロに」…農薬の使用制限など、フェアトレード環境基準の適用

「5 ジェンダー平等を実現しよう」…女性の社会的地位の向上や、育児などのサポート

「8 働きがいも 経済成長も」…よりよい労働条件や生活賃金の保証

「12 つくる責任 つかう責任」…ビジネスとして生産者と消費者をつなげる仕組みづくり

「13 気候変動に具体的な対策を」…50%以上のフェアトレード認定生産者がオーガニック認証も取得

「16 平和と公正をすべての人に」…フェアトレードの基本理念である公正から平和へ

「17 パートナーシップで目標を達成しよう」…持続可能な農業開発に向けた資金調達

フェアトレードとESG

フェアトレードとSDGsの深い関連性に気づけば、ESGとのつながりもおのずと見えてくるでしょう。地球温暖化問題や人権問題など、国境を越えた社会的課題に企業としてどう向き合っているか。その姿勢が投資の可否の判断材料となる時代に入ってきています。フェアトレードはESGに関わる取り組みのひとつであり、その内容が今後の企業の未来を左右すると言っても過言ではありません。 

2.そもそもフェアトレードとは?その意味を解説

それではあらためて、フェアトレードの基本的な考え方と、フェアトレードを認証する制度にはどのようなものがあるかを見ていきましょう。

フェアトレードの基本情報

フェアトレードのフェア(Fair)には「公平な」「公正な」、トレード(Trade)には「貿易」「通商」といった意味があり、一般に「公平・公正な貿易」と訳されています。特に発展途上国との貿易に目を向けているのがポイントです。

バナナ、コーヒー、チョコレート、そしてコットン製品など、私たちが手にする食料品や日用品には、発展途上国で生産されたり、原料がつくられたりするものが数多くあります。フェアトレードとは、立場の弱い発展途上国の生産者からこれらの原料や製品を適正価格で継続的に購入することで、その国の労働者の生活を豊かにして自立につなげる取り組み全体を指しています。

かつて発展途上国の人々を支援しようと「オルタナティブ・トレード」という考え方が広がりましたが、品質管理まで行き届かずに市場が狭まり、行き詰まってしまいました。そこで、国際的な一般市場で通用する高い品質を目指そうとあらためて始まったのが、フェアトレードなのです。

フェアトレード認証とは?

フェアトレードによる製品を明確に識別するために始まったのが、「フェアトレード認証」です。フェアトレードに基づいていると認められた製品には認証ラベルが与えられますが、発行団体によりいくつかの種類があります。 

フェアトレード認証の種類

・国際フェアトレード認証ラベル

Fairtrade International(国際フェアトレードラベル機構)が所有し、ライセンスを行う国際登録商標で、世界的に最も認知された認証ラベルのひとつ。基本となるラベルのほか、やむを得ず一部非認証原料を含む場合、認証原料と調達方法の確認を促すラベル、コットンに特化したラベルなど、用途に応じてラベルデザインが分けられています。

・WFTO認証ラベル

WFTO(世界フェアトレード機関)加盟のフェアトレード団体や企業に与えられる認証ラベル。「国際フェアトレード認証ラベル」は各製品に付けられるものですが、「WFTO認証ラベル」は団体や企業の取り組み全体に対し、WFTOの基準をクリアしているかを判断され与えられるラベルとなっています。

・その他の認証ラベル

このほか、国や企業、団体ごとにフェアトレードの判断基準を設けて認証し、発行されているラベルもあります。多様な認証ラベルの存在は、フェアトレードに対する世界的な意識の高まりの表れとも言えます。

3.フェアトレードとビジネスの関係(事例)

このように、サステナブルな社会への取り組みの一環として、企業や消費者は「フェアトレード認証を受けているか」といった条件を、ひとつの物差しにしています。

コーヒーやチョコレートなど食品の業界において急速に成長しているフェアトレードですが、その事例はほかにもさまざまな業種の企業に見ることができます。前述したようにフェアトレードの概念はSDGsの17の目標のほぼすべてに関わっているため、遅れをとらないように積極的に取り入れる必要があるのです。

具体的に、業界ごとにどのような取り組みが見られるのか。大手の企業が取り組んでいる活動を例に、フェアトレード導入へのヒントを探ります(事例は随時、更新)。

フェアトレード×食品丨​スターバックス「コーヒーの倫理的な調達を推進」​

『スターバックス コーヒー』では2015年4月、提供するほぼすべてのコーヒーをエシカル(倫理的)に調達することを達成。毎月20日を「エシカルなコーヒーの日」と題し、店舗ごとにクイズやセミナー等を通して、世界中の生産者とのつながりを来店客に理解してもらう取り組みを行っています。

スターバックスで販売されているフェアトレード認証のコーヒー豆「フェアトレード イタリアン ロースト」は、パッケージに「国際フェアトレード認証」のラベルを印字。世界で最も多く、国際フェアトレード認証のコーヒー豆を購入しているコーヒー会社として、コーヒーを育てる生産地と消費者にとってより良い未来を目指した取り組みを続けています。

>>取材協力『スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社』  

フェアトレード×ホテル丨ホテルJALシティ羽田 東京「ホテル内でフェアトレードコーヒーを提供」 

『ホテルJALシティ羽田 東京』では、併設するレストラン Cafe&Dining HARUHOROで提供するワインやコーヒー、チョコレートなどを、フェアトレードの基準を満たしたものに変更しています。 

同ホテルは空港に隣接し、世界から宿泊客を迎えることから、2018年11月にフェアトレード認証コーヒーを採用。国内のホテルチェーンでは初の導入となりました(※フェアトレード・ラベル・ジャパン調べ)。ホテル内でのコーヒー消費量は年間100,000杯近くにも上り、生産地への大きな貢献へとつながっています。 

また、過去には国際フェアトレード認証ワインを提供するディナーフェア「フェアトレードワインフェア」といったイベントを開催。フェアトレード製品の導入促進などを進め、利用客の満足度向上を目指しています。 

>>取材協力『ホテルJALシティ羽田 東京』 

フェアトレード×食品丨​イオン「持続可能なコーヒー、カカオの調達」

※2021年11月時点の情報です

『イオン』は、2030年までにプライベートブランドのコーヒー並びにチョコレートで使用するカカオを、持続可能性の裏付けが取れたものに変更する目標を定めています。

イオンが認定する国際フェアトレード認証などの第三者認証を取得した原料を使用していることを持続可能な裏付けの根拠の一つにしています。

※2021年11月時点の情報です

また、イオンは生産者や労働者が抱える社会課題の解決に向けたプロジェクトも行っています。「生活・報酬面の課題解決」「環境保全活動」「労働環境の改善」「教育機会の拡大」など、生産地の持続的な発展につながる支援をイオンが直接行うことも、持続可能な裏付けのひとつとしています。

>>取材協力『イオン株式会社』  

※文章、画像は企業に掲載許可をいただいております。無断転載はご遠慮ください。

4.今後注目!フェアトレード〇〇

「公平・公正な貿易」と、フェアトレードが意味する範囲は広く、今後は別の言葉と組み合わせて意味を限定する機会が増えていきそうです。すでにビジネスシーンで使われている言葉には、以下のようなものが挙げられます。

フェアトレードビジネス

フェアトレードというと、これまではCSR(企業の社会的貢献)活動の一環として見られてきましたが、もはや「フェアトレードに取り組んでいて当たり前」という時代に突入しています。当たり前に取り組んでいるフェアトレードを、ビジネスチャンスに結びつけるのは自然な流れと言えるでしょう。

フェアトレードを行い、それを広報することでブランド構築につながります。原材料の調達業務に良い影響をもたらすとともに、消費者とのコミュニケーションの大きなきっかけにも。フェアトレードによって生まれる新たなビジネスの土壌をどのように生かしていくのか。

「フェアトレードビジネス」という概念は、業界を問わず今後ますます注目されていくはずです。

フェアトレードファッション

2013年、バングラデシュで5つの縫製工場が入ったビル「ラナ・プラザ」が崩落し、1,000人以上の労働者たちが犠牲となりました。事前にビルの亀裂が発見されていたものの、オーナーはそれを無視して労働者を働かせ、結果的に数千台ものミシンの振動が崩壊につながった原因のひとつと言われています。

この事故がきっかけとなり、「フェアトレードファッション」という概念が広がりました。発展途上国の劣悪な労働環境改善や、生活の質向上につながるよう、生産者にとって不利益とならない取引がアパレル業界全体で重視されるようになったのです。私たちもフェアトレードを行っているファッションブランドを見極め、認証ラベルが付いているかを確認する消費行動が今後ますます求められていくでしょう。

フェアトレードフード

1991年にフェアトレード専門ブランドの『ピープルツリー』が誕生しました。ファッションや雑貨などのラインアップだけではなく、20年以上前からコーヒー、紅茶、チョコレートといった「フェアトレードフード」を取り扱っています。キャッチフレーズは「食べる人においしさを、つくる人にやさしさを」。ピープルツリーで扱う食品の原材料にはできるだけオーガニックのものが使われ、添加物も自然由来にこだわっています。

また、WFTOが定める「フェアトレードの10の指針」を守り、農家や工場労働者とのコミュニケーションを重視しながら商品づくりを進めています。フェアトレードによって生産者を支えるとともに、顔の見える人たちがつくるからこそ、食の安全・安心につながるという考え方です。

>>外部リンク「ピープルツリー」

フェアトレードタウン

「フェアトレードタウン」とは、街全体でフェアトレードを支援する自治体を指します。市民や企業、行政や学校など、地域が一体となってフェアトレード製品を積極的に購入・販売。啓発イベントを開催するなど、フェアトレードを広める活動を積極的に行っています。

フェアトレードタウンの活動はイギリスの小さな街、ガースタングで始まり、2000年4月にガースタングが世界初のフェアトレードタウンとなりました。以降、全世界で急速に広がり、現在では30カ国以上、2,000以上の自治体がフェアトレードタウンとして認定されています

日本では2011年4月、フェアトレードタウン運動を推進し認定する母体として「一般社団法人日本フェアトレード・フォーラム」が設立。同年6月には熊本市がアジア初、日本初のフェアトレードタウンに認定され、さらに2015年9月には名古屋市、2016年7月には逗子市、2017年11月には浜松市と続きました。現在、認定に向けて準備中の自治体も合わせると、日本で20近くの自治体が活動に取り組んでいます

5.【番外編】フェアトレードに関連する言葉

フェアトレードへの理解が社会の中で進むにつれ、SDGsやESGの考え方に基づく他の言葉とともに用いられることが増えてきました。ここではそれらの言葉の意味と、フェアトレードとのつながりを振り返っておきましょう。

サステナブル

「サステナブル」は「持続可能な」という意味の形容詞。地球温暖化や資源の枯渇といった問題を前に、未来に向けて持続可能な社会の構築が叫ばれ始めてから、注目される言葉となりました。フェアトレードが目指す発展途上国の労働環境改善などの問題も、そこで暮らす人々が今後も持続可能な生活を送れるよう、サステナブルな視点で捉える必要があります。

>>サステナブルとは?

エシカル

「エシカル」は「倫理的な」という意味の形容詞。例えば「エシカル消費」といった具合に名詞と組み合わせて使われることが多いようです。自分にとって「安い」「得だ」といった基準でものを選ばず、もっと広い視野で「人や社会、環境などに優しい」ものを選ぶ消費行動やライフスタイルを指します。常に他者や社会全体に目を向ける点では、フェアトレードの理念と共通する考え方です。

>>エシカルとは?

アップサイクル

「アップサイクル」は、「創造的再利用」とも呼ばれています。廃棄物や不要な製品に手を加えて、これまで以上の価値を与える作業を指します。ポイントは「これまで以上」という部分で、手を加えて再利用できたとしても、元の価値より下がるようならばアップサイクルとは言いません。フェアトレードによって、生産効率重視でこれまで不要とされてきたものに価値が見いだされたなら、それはひとつのアップサイクルとなります。

>>アップサイクルとは?

エコ

「エコ」とは、生態学や自然環境を意味する「エコロジー」の略称。環境に優しいという意味合いが強くなり、私たちの生活にもすっかり浸透しています。フェアトレードでは、エコな視点で取引を行うことが商品価値を高め、生産者や労働者の生活改善、自立につながるとされています。

オーガニック

「オーガニック」とは、有機農産物やその加工食品のこと。「有機」は生物を構成する物質を指し、化学物質の農薬や肥料を使っていない食品全般を指します。体に優しいオーガニックの食品づくりに取り組むことで価値が上がることから、フェアトレードが行いやすく、発展途上国の生産者に積極的に推奨されています

6.フェアトレードの本質を理解して、サステナブルな社会を目指す企業へ

発展途上国で正当な対価が支払われない。さらには、生産性を上げるために必要以上の農薬が使用されて環境が破壊される、あるいは生産者の健康に害を及ぼす。これらの社会問題を解決するフェアトレードは、持続可能な社会の構築にそのままつながっていることが理解いただけたでしょうか?

フェアトレードはすでにCSRの概念を越え、どの企業のビジネスにも求められる必須要件となっています。フェアトレードに取り組むこと自体が、サステナブルな社会を目指す企業となり、企業そのものも持続可能な組織となるわけです。

アイグッズでは、オリジナルグッズやノベルティの製作で培ったノウハウをもとに、生地に再生素材を使ったり、コーヒー豆かすやココナッツの皮などを再利用したりと、サステナブルなものづくりを提供。SDGsへの取り組みのひとつとして、グッズ制作を考えている企業のサポートは、アイグッズにお任せください。フェアトレードをはじめとした環境や社会、人を守る社会の取り組みに参加し、持続可能な未来づくりの一端を担っていきましょう。

コメント一覧
  • フェアトレードって全然フェアじゃないし、市場原理壊してるし、結局は高くて売れないとか色々と10年以上前は言われていましたけど、今はフェアトレードに悪い印象は全くない。ついつい店頭でフェアトレード製品に手を伸ばしてしまう自分がいますね。世の中の流れって不思議。中身は変わっていなくても印象は年々変化する。

    2021.12.27

    マッキーおじさん 様

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