製造業が取り組むSDGs。メリットと期待されるゴール、社会課題の現状を徹底解説
2021/12/16 (更新日:2024/09/30)
経済産業省・厚生労働省・文部科学省の3省による「ものづくり白書2021」では、製造業がニューノーマルに対応するために、「レジリエンス(復元力)」「グリーン化」「デジタル化」を主軸として展開していくことの必要性を解いています。日本の製造業が生き残るために、このような観点を核としたさまざまな取り組みが急速に進められているのです。
不確実性が高まる現代。多方面での対応が求められる製造業は、SDGsに取り組む際に何を優先課題として見据え、どのように取り組んでいくべきなのでしょうか。
時流を捉え、ビジネスの機会を逃さないために、知っておきたい社会の現状や概念について解説。あわせて、製造業におけるSDGsへの取り組みに関する基礎知識をまとめ、機会の創出へとつなげます。
1.製造業と関連性の高いSDGsゴールは?
SDGsが掲げる17のゴールの内、業種ごと、企業ごとに関連性の高いゴールは変わってきます。こと製造業に関しては、製造品目によっても実行効率の高いゴールが千差万別です。
製造業の現状と未来を理解した上で、自社のサービスや製造品目と照らし合わせながら、関連性の高いSDGsゴールについて検討することが重要でしょう。
経済産業省・厚生労働省・文部科学省「ものづくり白書2021」から製造業の現状と未来を理解する
「ものづくり白書2021」では、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大を引き金に、近年は、日本の製造業のサプライチェーンにとってリスクとなる「不確実性」が高まる一方であると説いています。その上で、世界各国でカーボンニュートラルやデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みが急速に進展したことを指摘しています。
こうした背景を踏まえ、製造業にとって新しいスタンダートに対応し、ニューノーマル時代での生き残りを実現するためには、「レジリエンス(復元力)」「グリーン化」「デジタル化」が重要な鍵を握るということが示唆されています。
「レジリエンス(復元力)」「グリーン化」「デジタル化」の潮流は、製造業におけるSDGsの実現とも親和性の高いテーマであり、紐解いていくことで、深い相関関係が見えてきます。
まずは、自社にとっての重要課題(マテリアリティ)を特定し、関連の深いSDGsの目標を見定めましょう。そうすることで、自社の資源を重点的に投入することができる仕組みづくりが可能に。最終的な着地点として、自社の本業に則した効率的なSDGsへの貢献を実現することができるはずです。
>>外部リンク「令和2年度ものづくり基盤技術の振興施策(ものづくり白書)」
製造業がSDGsに取り組むメリット
「ものづくり白書2021」で製造業の現状と未来を整理することができました。次に、製造業がSDGsを推進することで得られるメリットを再確認し、中長期的な計画を立てる礎としましょう。
製造業がSDGsを推進することで得られるメリット
・企業イメージが向上されることで、優秀人材の採用につながる
・製品、商品に付加価値を付与させることで、価格競争から脱却できる
・ステークホルダーからの信頼が高まる。投資家、顧客、協力業者、従業員と良好な関係を築くことができる
・同じ課題の解決を目指す企業のみならず、行政やNPO団体、教育機関などこれまで関わりのなかった組織とつながる機会に。新たなビジネスを生み出すチャンスの創出も
製造業と関連性の高い3つのSDGsゴール
『株式会社日経リサーチ』がビジネスパーソンを対象に行った調査(下部、外部リンク参照)によると、自社が取り組んでいるSDGsの目標について、17項目ある目標のうち、全体のトップ3に入ったのは、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」、目標8「働きがいも経済成長も」、目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」。いずれも20%を超える結果となりました。
製造業に絞った結果をみると、目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、目標12「つくる責任 つかう責任」、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」がトップ3にランクイン。さらに業務分野をセグメントしたアンケートによると「電機・精密機械」や「自動車・バイク・タイヤ」は、1位「分からない、特にない」を除き、製造業のトップ3に比例した結果となりました。
このように、業務内容に近い目標が上位に入る傾向が顕著となり、業界によって、達成が期待されている目標が異なることも浮き彫りに。
例えば製造業では、生産段階や輸送段階などでエネルギーを消費するため、目標7の「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」に向けて業務改善を図ることは不可欠でしょう。また、より少ないエネルギーで稼働する製品を開発・製造するということは、目標12「つくる責任 つかう責任」に照らし合わせると、エネルギーの“つかい手”としての視点と、製品の開発・製造という“つくり手”としての立場、両側面から働きかけることにつながります。
目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」については、イノベーション の推進を図るという捉え方に置き換えることができ、大半の製造業にとって関わりのある目標となるのではないでしょうか。
製造業で多くの企業が取り組んでいるSDGsゴール
・ゴール7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
・ゴール9「産業と技術革新の基盤をつくろう」
・ゴール12「つくる責任 つかう責任」
そこで今回の記事では、製造業と関わりの深いこの3つの目標に焦点を当てて、「各ゴールの現状」「製造業として取り組むべきこと」を中心に解説していきます。
>>外部リンク「株式会社日経リサーチ・【2回連載】日経リサーチ、ビジネスパーソン「SDGs」調査」
【番外編】製造業におけるCSV(共有価値創造)の機会を理解しておく
企業が社会課題や問題に取り組む活動が注目される昨今。CSVというキーワードに触れる機会が増えてきました。SDGsの「各ゴールの現状」「製造業として取り組むべきこと」を深く理解するために、番外編として解説しておきたいと思います。
CSVとは、2011年、ハーバード大学のマイケル・E・ポーター教授とマーク・R・クラマー氏が提唱した考え方で、Creating Shared Valueの略。「共通価値の創造」や「共通価値の戦略」と訳されます。
従来、社会的利益と企業の利益、経済効果は両立できないと言われてきました。しかしこのCSVという考え方では、営利企業が社会的価値を戦略的に追求することで、経済的価値も生むことができ、ひいてはそれぞれが高め合う状況を目指すという新しい手法として注目を集めています。
しばしば比較される、類似した概念にCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)が挙げられます。CSRは、「自社の利益を追求するだけでなく、社会の課題に目を向けなければいけない」という考え方から、環境保全やボランティアに取り組む活動です。利益を生む本業とは切り離して考えられるため、必ずしも利益につながる活動であるとは限りません。
つまり、受動的CSRから戦略的CSRへの転換が起きたのです。
CSVは、社会の利益と企業そのものの利益を同時に求めることができるため、持続可能な経営には不可欠な視点と言えるのです。
では実際に、どのような切り口でCSVを考えると良いのでしょうか。「製造業 SDG INDUSTRY MATRIX-産業別SDG手引き-」によると、製造業の共有価値創造の機会は[持続可能な製品][持続可能な生産][低コスト製品][企業開発]の4つに分類されます。
■持続可能な製品
・より持続可能な車両、船舶、そして航空機を開発する。これには公共のバス、鉄道、および路面電車を含むことが重要である
・廃水、廃棄物、汚染物質の排出が少ないより資源効率の高い機械を開発する
・貯蔵容量を増大し、信頼性を高め、そしてコストを削減する再生可能エネルギーのインフラと技術を開発する
・精密農業を促進するため、農業ビジネス機械化、農業機器の開発、産業化の工程を通じて、水使用量、エネルギー消費量、土壌圧縮を削減する
・家庭と事業所における、照明、換気、冷暖房、空調等のエネルギー効率を改善する製品を開発する
・製品設計の際にはサーキュラー・エコノミーの考え方を適用し、製品ライフサイクルの最終段階における再利用とリサイクル可能性を向上させる
■持続可能な生産
・長期間の生産と試作に起因する廃棄物を削減するために3D印刷などの革新的技術を製造工程に取り入れる
・水、原材料、非再生鉱物、その他投入物、副産物、廃棄物を削減、再生、リサイクルするために改良された工程(例 クローズド・ループ型の製造)を開発して実行する
・再生可能資源に由来するエネルギー(太陽光、風力、バイオマスを含む)の割合を増やし、化石燃料燃焼を削減する
・持続可能資源(例:林産物)および組込みエネルギー(エンベデッドエネルギー)の少ない成分に由来する材料を調達する
・製造工場のプラントや流通ネットワークのエネルギー効率を高める
■低コスト製品
・低・中間所得国での質の高いヘルスケアへのアクセスを高めるために低コスト医療機器を開発して製造する
・低所得コミュニティのために、農村と都市の双方で使えるように改良され、耐久性があり、低コストの給水ポンプと衛生技術を開発する
・農業生産性を高めるために低コストの農業機械と工具を開発する
・農村や地域社会から取り残されたコミュニティに対し、手頃な価格の再生可能エネルギーをもたらすために効率的なマイクログリッド技術を開発する
■企業開発
・インフラ、技術、生産への相互補完的な投資を実現する工業地区を設立するために政府およびその他企業と協力する
・低・中間所得国で現地調達された材料と部品の割合を増やす
・グローバルなサプライチェーンに参加するために、中小企業の生産能力を開発する。これには女性とマイノリティグループが所有する企業を含む
・異常気象およびその他経済的、社会的、環境的打撃や災害にサプライヤーが晒されないようにすること、またその脆弱性を低減するために新興経済国でのサプライヤーのレジリエンスを確立する
>>外部リンク「製造業 SDG INDUSTRY MATRIX-産業別SDG手引き-」
それではCSVの概念を踏まえつつ、目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、目標12「つくる責任 つかう責任」について解説していきます。
2.製造業におけるSDGsゴール7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を考える
製造業が目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の実現へ向けて取り組む際、どのようなアプローチが可能なのでしょうか。エネルギーにまつわる現状の振り返りとともに、おさえておきたいポイントなどをまとめます。
SDGsゴール7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の事実と数字
目標7では、世界中のすべての人が安全かつ安心して使えるクリーンエネルギーを普及させ、地球上のあらゆるエネルギー問題を解決することを目指しています。
目標7のターゲットを読み解くと、いずれも、すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーを届けるということを目指した内容になっています。
この目標の背景にあるのは、世界のエネルギー事情です。国際連合広報センターが発表した「持続可能な開発目標(SDGs)報告2021:インフォグラフィックスでみる17の目標ごとの進捗状況 日本語版」によると、世界で約7億5,900万人が電力を利用できず、世界人口の3分の1にあたる約26億人が、危険で非効率的な調理システムを使用しているというデータ(2019年)が明らかにされています。
特に、貧しい人々の大多数は、調理時に、木材や木炭などの有害で汚染された燃料に依存しているとされ、事実、2012年の統計によると、世帯エネルギーとしての可燃燃料使用による屋内空気汚染によって430万人が命を失っているなど、世界のエネルギー事情は深刻です。
統計的に見ると、エネルギーの最終消費に、近代的な再生可能エネルギーが占める割合は電力部門が25.4%、暖房部門が9.2%、輸送部門が3.4%(2018年)。暖房部門や輸送部門における近代的な再生可能エネルギーの普及は急務と言えるでしょう。
エネルギーは気候変動を助長する最大の要素。安全かつ安心して使えるクリーンエネルギーを全世界に届けることが、誰も取り残さず、持続可能な社会を実現するための必須条件なのです。
SDGsゴール7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」に対して製造業が取り組むべきこと
SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」が目指すのは、「すべての人に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保すること」。その実現へ向けて、製造業が期待される共有価値創出の機会としては、主に下記のような点が挙げられます。
・エネルギーインフラと技術の開発により、信頼性の向上、蓄積容量の増加、そしてコスト削減を達成すること。それにより、再生可能エネルギー(例:太陽光や風力)がより経済的に説得力のある選択肢になります。
・より効率的なマイクログリッド技術の開発により、再生可能エネルギー源を統合する。この実現により、農村や取り残されたコミュニティに対して手ごろな再生可能エネルギーを届けることができるようになります。
・持続可能なエネルギー源を使って効率的に稼働する産業機械や車両、船舶、航空機などを開発・販売すること。それによって、生産段階や輸送時の環境負荷を軽減します。
・サプライヤーに対して、再生可能資源に由来する消費エネルギーの比率を増やすように促し、これを支援します。
・企業の直接操業における再生可能資源に由来する消費エネルギーの比率を増やし、またサプライヤーにも同様の取り組みを促すこと。その一つの取り組み例として、「RE100」への参加を検討するのも良いでしょう。「RE100」とは、企業が自らの事業の使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的なイニシアチブです。「RE100」に参加し、100%再生可能エネルギー電力に移行することを誓約するという選択肢もあります。
3.製造業におけるSDGsゴール9「産業と技術革新の基盤をつくろう」を考える
次に、製造業にとって非常に親和性の高い目標とも言える目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」について考えます。この目標の実現へ向けて、製造業が取り組むにあたってどのようなアプローチが可能なのでしょうか。
SDGsゴール9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の事実と数字
目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」が目指す社会を考える上で、近年の新型コロナウイルス感染症による危機が大きく影を落としています。
新型コロナウイルスの感染拡大、長期化により、世界の製造業の生産高は急減しました。また、人と物の移動が制限されたことにより、グローバルな製造業と運輸業は混乱しました。
国際連合広報センターが発表した「持続可能な開発目標(SDGs)報告2021:インフォグラフィックスでみる17の目標ごとの進捗状況 日本語版」によると、例えば航空機利用者数は、2019年の45億人から、2020年には18億人に減少し、およそ60%減という壊滅的な状況になりました。
今回の新型コロナウイルス感染症に象徴されるような危機を迎えた時、企業が解決策を見出すには、工業化、インフラの改善、および研究開発への投資を増やすことによる技術革新の促進が重要であり、これはまさに、SDGsの目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に合致します。
インフラの整備について、世界の実情に目を向けると、多くの開発途上国では依然として道路や情報通信技術、衛生施設、電力、水道といった基礎インフラが整備されていません。
国際連合広報センターが2018年に発表した「持続可能な開発目標(SDGs)―事実と数字」では、世界人口の16%は、携帯ブロードバンド・ネットワークにアクセスできない状況下にあり、低所得国をはじめ、多くのアフリカ諸国では、インフラの未整備により、企業の生産性が約40%損なわれていると記されています。
また、製造業で雇用が1件増えれば、他の部門で2.2件の雇用が生まれると推測されるなど、産業化による雇用乗数効果は、社会に好影響を与えます。特に、全世界の企業の内、90%以上を占め、雇用の50~60%を創出する生産加工と製造に携わる中小・中堅企業は、産業化の初期段階で最も欠かせない存在であり、多くの雇用を生み出します。
さらに、後発開発途上国には、食料・飲料(農産業)と繊維・衣料産業の分野で巨大な潜在能力があり、持続的な雇用創出と生産性向上を達成できる見込みも十分にあります。中でも注目は、アグリビジネスです。開発途上国の国内で加工される農産物は、わずか30%。98%が高所得国で加工されます。このことは、開発途上国に大きなアグリビジネスの機会があることを示していると、レポートされています。
農業生産性、事業の収益性、雇用を高めるためには、地方の道路の接続性やモバイルネットワークのカバー率向上が不可欠であり、貧困の削減にも役立つのです。
SDGsゴール9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に対して製造業が取り組むべきこと
SDGsの目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」が目指すのは、レジリエントつまり強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図ることです。
その実現へ向けて、製造業が期待される共有価値創出の機会としては、下記のような点が挙げられます。
・インフラ、技術、生産への相互補完的な投資を実現する工業地域設立へ向けて、政府や他企業と協力すること。
・従来のセメントおよびコンクリート製品に代わる、より環境配慮型の建設資材について調査し、これを開発・製造すること。
・手ごろなマイクロローンを通じて低所得層の人々が建設資材を購入できるようにする、革新的な財務戦略を策定すること。
4.製造業におけるSDGsゴール12「つくる責任 つかう責任」を考える
製品のつくり手として、また製造段階でのエネルギーのつかい手としてなど、両側面から製造業が大きく関与するのが、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」です。この目標の実現へ向けて、製造業が取り組む際、どのようなアプローチが考え得るかを検証しましょう。
SDGsゴール12「つくる責任 つかう責任」の事実と数字
目標12「つくる責任 つかう責任」が目指すのは、責任ある生産と消費です。
この目標の背景にあるのは、生産性の向上による物の大量生産、経済の発展による大量消費です。食品ロス(フードロス)や温室効果ガスの排出、水やエネルギーの浪費など、地球環境に影響をおよぼしている消費社会の実情について、省みることから始めてみましょう。
国際連合広報センターが2018年に発表した「持続可能な開発目標(SDGs)―事実と数字」によると、2050年までに世界人口が96億人に達した場合、現在の生活様式を持続させるためには、地球が3つ必要になりかねないと警笛を鳴らしています。
国際連合広報センターが発表した「持続可能な開発目標(SDGs)報告2021:インフォグラフィックスでみる17の目標ごとの進捗状況 日本語版」によると、全世界の「マテリアル・フットプリント」つまり、消費された天然資源の指標は、2000年から2017年までの間に70%増加。国際連合広報センターが2018年に発表した「持続可能な開発目標(SDGs)―事実と数字」によると、開発途上国の1人当たりの「マテリアル・フットプリント」は、2000年の5メートルトンから2017年の9メートルトンへと増大しました。
“つくる”、“つかう”にまつわる最たる天然資源といえば、水です。人間は、莫大なコストを費やして給水のためのインフラを整備することで、自然が河川や湖沼で再生、浄化できる以上の速さで水を汚染し、水の使いすぎによって世界的な水ストレスを助長しているのです。
現に、「持続可能な開発目標(SDGs)―事実と数字」では、「全世界の水資源のうち(飲用に適した)淡水は3%に満たず、しかも2.5%は南極や北極、氷河で凍り付いています。よって人類は、全体のわずか0.5%の淡水で人間生態系の淡水ニーズを満たさなければなりません」とデータを交えて現状を伝えています。
さらに、淡水にアクセスできない人々は、依然として10億人を超えているとも言われています。
エネルギーに目を向けると、全世界の人々が電球を省エネ型に変えたと仮定した場合、全世界で年間1,200億米ドルが節約できるというデータが表されています。
技術の進歩による省エネの促進にもかかわらず、経済協力開発機構(OECD)諸国のエネルギー使用は、2020年までにさらに35%の増大を続けると見られます。世界的に見ると、エネルギーの使用が最も急速に拡大しているのは輸送部門であり、商業用・住宅用のエネルギー使用がこれに次いでいるという結果に。この現状は、製造業にとっても由々しき事態です。
食料による環境への影響も見逃せません。食料の生産段階(農業、食品加工)では多くのエネルギーが消費され、廃棄物の発生による環境への影響も生じています。
具体的な数字として、「持続可能な開発目標(SDGs)―事実と数字」によると、毎年生産される食料全体の3分の1に相当する13億トン、価値にしておよそ1兆ドルの食料が、消費者や小売業者のごみ箱で腐ったり、劣悪な輸送・収穫実践によって傷んだりしているそうです。
食料部門は、全世界のエネルギー消費の約30%と、温室効果ガス排出量全体の約22%を占めるなど、地球環境に多大な影響を及ぼしていることは明白なのです。
SDGsゴール12「つくる責任 つかう責任」に対して製造業が取り組むべきこと
SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」が目指すのは、持続可能な消費と生産パターンを確保することです。
その実現へ向けて、製造業が期待される共有価値創出の機会としては、下記のような点が挙げられます。
・低燃費で水使用量が少なく、さらに廃水、廃棄物、および汚染の発生が少ない商用機械や車両を設計・生産すること。
・内部炭素価格を投資計画の意思決定に組み入れることが効果的です。
・製品設計の際にはサーキュラー・エコノミーの考え方を適用し、製品ライフサイクルの最終段階を、再利用とリサイクルを通じて改善をすることが必要です。
・水、原材料、非再生鉱物、その他投入物、副産物、廃棄物を削減、再生、リサイクルするために、改良された工程を開発して実行することが求められています。
・製造工場で新技術と工程改善を特定して導入することにより、化石燃料の燃焼を削減することが求められています。
>>リンク「SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」。日本の「現状」と「課題」を整理してものづくりの未来を解く」
5.「ものづくり白書」で製造業の現状や事例を知り、SDGsを自社の課題に落とし込む
製造業がSDGsに取り組むにあたっては、製造業界の現状と未来を把握するために、「ものづくり白書」の参照が必須です。その上で、製造業がSDGsの目標達成に向けて期待されることや、CSVの思考に則り、社会的利益のみならず企業利益も同時に生み出すことのできる戦略的な施策を打ち出すことが求められています。
「製造業 SDG INDUSTRY MATRIX-産業別SDG手引き-」などを活用しながら、企業の基本的な事業方針、企業特性などと照らし合わせて自社の課題に落とし込み、SDGs実現のために取り組むべき方向性を定めていくことが必要なのではないでしょうか。
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いつも濃い記事をありがとうございます。弊社は製造業でしたので、特に勉強になりました。
2021.12.17
ムッキー 様
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