サステナブル生地

廃棄食材から生まれるエコ素材一覧。コーヒー粉、野菜・果物などのリサイクルで新たな資源に

2022/12/19

まだ食べられるのに、廃棄されてしまう食品を指す「食品ロス」。2022年6月農林水産省公表の「食品ロス量の推移」によると、2020年の「食品ロス」は、「事業系食品ロス量」「家庭系食品ロス量」ともに、2012年の推計開始以降で最小となりました。

[出典]農林水産省/食品ロス量の推移/https://www.maff.go.jp/j/press/shokuhin/recycle/attach/pdf/220609-5.pdf

この結果の背景にあるのは、国内で積極的に行われるようになった「廃棄食材」の発生抑制・有効活用を推進するさまざまな活動。今回はそれらの取り組みのなかから、「リサイクル資源への転換」に注目していきます。

廃棄食材を用いて生み出される、代表的な7つの「エコ素材」を例に挙げて解説。廃棄食材を取り巻く背景、エコ素材の特徴、企業事例を見ていきましょう。

目次

1.廃棄食材をめぐる日本の現状は?食品ロスとリサイクルの関係を知る

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[出典]農林水産省/我が国の食品ロスの発生量の推移/ https://www.env.go.jp/content/000046525.pdf

食品廃棄物の中でも、本来食べられるのに廃棄される食品を「食品ロス」と呼びます。

具体的にどのようなものかというと、形が不ぞろいなど規定外や賞味期限切れ、生鮮食品や惣菜の売れ残り、飲食店や家庭での食べ残しなどです。

2022年6月の農林水産省のデータによると食品ロスの発生量は5年連続で減少しており、最新の2020年度は522万トン(事業系275万トン・家庭系247万トン)。年々減ってはいるものの、この数字をもう少し身近に置き換えるとどうでしょうか?

[出典] 農林水産省/日本の食品ロスの状況(令和2年度)/https://www.maff.go.jp/j/press/shokuhin/recycle/attach/pdf/220609-6.pdf

まず、国民1人あたりの食品ロス量は1日約113gです。茶碗1杯分のご飯が150gほどなので、毎日茶碗に軽く1杯分くらいの食品を捨てていることになります。

さらに年間に換算するとなんと41kg。一人あたりの年間米消費量が約53kgなので、それと比較してもかなりの量であることがわかるでしょう。

このような現状ではありますが、事業系食品ロスについては、計測がはじまった2012年から徐々に減少し、過去最小値となっています。これらを踏まえた上で、農林水産省ではまず第一に食品廃棄物の発生を抑制することを呼びかけ。その上で、発生した廃棄物を再生するなど、有効活用するように呼びかけています。

2.廃棄食材から生まれるエコ素材はなにがある?

例えば、食品工場にて製品の製造過程に出てしまう廃棄食材を粉砕・乾燥させるなど手を加えて、動物のエサや野菜の肥料に転換。「廃棄物」を「資源」として再活用・循環させる取り組みは年々広がっています。

今回は食品の製造・加工過程などで出てくる廃棄食材として、卵殻やお茶殻、サトウキビやコーヒー豆の絞りかすなど、これまで廃棄されていた食材に注目。それらを加工することで、新しい「エコ素材」に転換・活用している例を紹介します。

<今回紹介する「廃棄食材」を活用した素材一覧>

・コーヒーの豆かす
・茶殻
・野菜・果物
・廃棄米
・卵殻
・麦芽
・サトウキビの搾りかす
・カカオの皮

3.国内の消費量は年間43万トン!「コーヒーの豆かす」を含有した素材で速乾性・消臭効果に期待

コーヒーの消費(抽出)後に残る「コーヒーの豆かす」には、かすと同量ほどの水分を含んでいるため、廃棄量は消費量のおよそ2倍の約86万トンにも及ぶと推定できます。

[出典]/出典元 全日本コーヒー協会「日本のコーヒー需要表(2022.8.9更新)/https://coffee.ajca.or.jp/pdf/data-jukyu202206.pdf

コーヒーの豆かすをリサイクルした素材の特徴

「コーヒーの豆かす」のリサイクルにおいて、早くから着目されていたのが、脱臭・消臭効果の高さです。また速乾性についても効果が期待されていることから、スポーツシーンやアウトドアでも活躍するファッションウエアなどにも活用されています。一方で、加工方法によっては脱臭・消臭効果が必ず得られるとは限りませんので、グッズ制作の際には気をつけましょう。

タンブラーやノートなどにコーヒー粉を使用する際には、コーヒー豆かすならではの、独特の質感や風合いを演出することができるのも魅力の1つ。アイグッズでは、エコであるというだけではなく、日常使いしたくなる、愛用したくなるデザイン性の高さにもこだわって製品作りを行っています。

「コーヒーの豆かす」を使った素材については、下記の記事で詳しく解説していますのでチェックしてくださいね。

>>内部リンク:「コーヒーの豆かす素材」とは?食品廃棄物から多彩なグッズへ生まれ変わる万能素材で、サステナブルを実現

4.「茶殻」の抗菌・消臭効果が期待できる代替原料に。身近な製品にリサイクル!

農林水産省によると、国内における荒茶(製品として最終仕上げする前の茶葉)の生産量(2021年分)は7万700トンです。

緑茶の消費量については、全国茶生産団体連合会・全国茶主産府県農協連連絡協議会の「茶類の国内消費量の推移」を見ると、長きに渡り、減少傾向にあることがわかります。

[出典]/出典元 農林水産省「「令和3年産茶の摘採面積、生葉収穫量及び荒茶生産量」/ https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/sakumotu/sakkyou_kome/kougei/r3/cha/index.html

[出典]/出典元全国茶生産団体連合会・全国茶主産府県農協連連絡協議会「茶類の国内消費量の推移」/ https://www.zennoh.or.jp/bu/nousan/tea/seisan01b.htm

茶殻をリサイクルした素材の特徴

茶殻のリサイクルに積極的に取り組んでいる企業と言えば、『株式会社伊藤園』が代表的。茶系飲料のトップブランド「お〜いお茶」シリーズを有する企業として、リサイクルだけでなく、アップサイクル製品の開発にも力を入れています。 

『株式会社伊藤園』では、「茶畑から茶殻まで」の一貫した環境経営による、社会貢献活動に注力しています。2001年と比較的早期の段階から「茶殻リサイクルシステム」を確立。これは多量の水分を含む茶殻を輸送・工業製品に配合できる技術で、腐敗防止のために避けることができなかった乾燥工程を省略することができ、燃料はもとより乾燥時に発生する二酸化炭素の削減にもつなげています。

茶殻配合製品の研究開発にも積極的に取り組んでおり、茶殻の持つ抗菌・消臭効果などの特性を生かした付加価値のある製品づくりにも注力。古紙使用量の削減として飲料運搬用の段ボール、抗菌・消臭効果が期待できるベンチや畳など、付加価値の高い建材・紙・樹脂等の茶殻リサイクル製品を多数生み出しています。

『株式会社ワンウィル』と『サンロック工業株式会社』と開発し製品化された「茶殻抗菌シール」など、強みを生かした製品を開発。さらなる需要に合わせた展開が期待されるでしょう。

>>外部リンク:株式会社伊藤園「茶殻リサイクルシステム」

5.活用例が多様な「野菜・果物」。本来捨てられるはずの規格外・不可食部をリサイクル

食べることはできるけど形や大きさ、色などが基準に満たない「規格外」や、皮・芯・種などの「不可食部」など、従来では捨てられていたはずの野菜・果物を活用した取り組みです。

さまざまな視点による研究開発が進むことで、ただ捨てられるだけだったものが「資源」として生まれ変わり、有効活用されていくように、多様性に富んだ新しいアイデアが生み出されています。

野菜・果物をリサイクルした素材の特徴

『東京大学生産技術研究所酒井(雄)研究室』の取り組みでは、捨てられるはずの廃棄食材から「完全植物性」の新素材を世界で初めて開発。野菜や果物など、植物由来の廃棄食材をフリーズドライした後に粉砕。水を加えて熱圧縮成形することで、生活雑貨や建築資材として活用されています。

実際の強度は、使用する食材によって異なりますが、最も強いものでは一般的なコンクリートの曲げ強度の4倍もの強度が確認されています。また、木材などと同様に塗装などで耐水処理を施すことができます。

また、熱圧縮などの工程でさまざまな条件を調整することで、原料である食材の香りや質感を残したり取り除いたり、色の調整はもちろん、塩や砂糖などの調味料を加えて味を付けることもできるため、建材としての役目を終えた後や非常時など、再び「食用」とすることを目的とした素材としての活用法も期待されるであろう一例です。 

>>外部リンク:東京大学生産技術研究所酒井(雄)研究室「廃棄食材から完全植物性の新素材開発に成功」

6.消費量の減少から「廃棄米」の活用が課題に。食事に対する意識改革の必要性高まる

2022年8月の農林水産省のデータによると、2021年の1人あたりの米の年間消費量は51.5kg。2倍以上の消費量があったピーク時の1962年以来、一貫して減少が続いています。

日本人の主食である米の消費が減少している主な理由は、パンや麺など主食の多様化や食生活の変化、糖質制限ブーム、高齢化による1食あたりのカロリー摂取量の減少など。人口減少に転じている今、今後もさらに減少していく可能性が高いとされています。

米の消費量が減るということは、収穫された米が余り、廃棄米の増加につながってしまうということが考えられます。少しでも廃棄を減らすためには、食べること以外の消費方法を積極的に取り入れていく必要が出てくるでしょう。

[出典]/農林水産省「米の消費拡大について」/https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/attach/pdf/index-101.pdf

廃棄米をリサイクルした素材の特徴

古くなった備蓄米や、米菓子製造時に発生する破砕米など、捨てられてしまう米を「エコ資源」として再生に取り組む動きがあります。

例えば、『株式会社バイオマスレジンホールディングス』によるバイオマスプラスチック「ライスレジン®︎」。石油系プラスチック製品と、強度や製造コストは変わらず、圧倒的に環境負荷が低いため、レジ袋や歯ブラシ、使い捨てのカトラリーなど、私たちが日常的に使うものにも多く使用されています。

また、お米由来で人にも環境にもやさしいことから、赤ちゃん向けの知育玩具にも採用されています。

>>外部リンク:株式会社バイオマスレジンホールディングス「ライスレジン」

7.日本は世界第2位の鶏卵消費大国。リサイクルで「卵殻」の廃棄0を目指す

日本養鶏協会による「鶏卵の需給見通し(2021年9月)」を見ると、2020年の一人あたりの鶏卵消費量は年間340個(前年比2個増加)。この数は、年間380個のメキシコに次ぐ世界第2位で、全体の消費量は272万トンにも及びます。

しかしながら、不可食部である卵殻の80%はごみとして廃棄されているという調査結果も。世界屈指の「鶏卵消費大国」として、卵殻を「エコ素材」としてアップサイクルすることは重大な課題と言えるでしょう。

[出典]/日本養鶏協会「鶏卵の需給見通し」/https://www.jpa.or.jp/stability/pdf/keiran202110_01.pdf

8.ビールの製造時に絞りかすとなる「麦芽」。食品以外の活用として研究進む

ビールの原料として欠かせない大麦麦芽ですが、麦汁を絞った後の「麦芽かす」は、コーヒー豆のかすや茶殻同様、食べられないもの(不可食部)として、その多くが捨てられています。リサイクルするにしても、飼料や堆肥としての利用が主流だったところ、食物繊維が豊富で高タンパクな特性を生かしたアップサイクルとして生まれたのが、ケーキやパンなどの材料となる「麦芽粕粉」。

また、食品以外のアップサイクルとして取り組まれているのが、麦芽かすを乾燥・粉砕して再生紙の材料に混ぜ込むリサイクルペーパーです。クラフトビールの工場から出た麦芽かすの有効利用からスタートしたため「クラフトビールペーパー」や「モルトペーパー」などと呼ばれ、その風合いある仕上がりが人気です。

9.未利用資源となっている「サトウキビの絞りかす」。アパレル素材として活用の動きが

内閣府の「製糖業の体制整備」でサトウキビの生産量の推移を見てみると、最も少ないのが2011年の54万トン、最も多いのが2019年は94万トンで、直近の2019年は74万トンとなっています。

サトウキビは、世界で最も多く作られている農作物の一つであり、その搾りかすは「バガス」と呼ばれます。「バガス」は有効な使い道や再生方法が未だ確立していない「未利用資源」。「バガス」を有効活用していくことは生産農家をはじめ、サトウキビに関わる多くの人たちのこれからを変える「きっかけ」になるとも考えられています。

その「きっかけ」につながる取り組みの一つが、アパレル素材への活用です。

[出典]/内閣府「製糖業の体制整備」/https://www8.cao.go.jp/okinawa/4/441.html

サトウキビをアップサイクルした素材の特徴

『株式会社Rinnovation』は、「SHIMA DENIM WORKS」というブランドで、さとうきびの搾りかすである「バガス」をアップサイクルした製品の開発・販売を行っています。 

工程としてはまず、回収した「バガス」を沖縄県内で粉砕加工。この資源を岐阜県の伝統工芸である「美濃和紙」の製造技術を活用して「和紙」に加工します。この「バガス和紙」を細く割いた後、撚って糸に加工し、デニム生産量日本一の広島県福山市の工場にて織り上げたのが「バガス生地」です。 

「バガス」や和紙の特性である高い消臭効果や抗菌効果、吸湿速乾性を保持した「バガス生地」は、沖縄ならではの「かりゆしウェア」としてもアップサイクルされています。 

また『株式会社BAGASSE UPCYCLE』では、アップサイクルされたアパレル製品のシェアリング(1日単位のレンタル)やサブスクリプション(1カ月単位のレンタル)、トレード(交換サービス)など、環境への負荷を考慮した新しいアパレルサービスの展開も行なっています。 

>>外部リンク:SHIMA DENIM WORKS

>>外部リンク:株式会社BAGASSE UPCYCLE 

10.チョコレート製造の際に70%廃棄される「カカオ」。果肉や皮のリサイクルに各社が乗り出す


チョコレートの主原料の一つであるカカオですが、実はチョコレートの製造に使われているのは、カカオの実全体のわずか30%ほどの「カカオ豆」のみ。残り70%を占める果肉(カカオフルーツパルプ)や皮の部分は、利用されることなく、これまで全て廃棄されていたのです。

しかしながら、昨今では、カカオの果肉(カカオパルプ)・カカオ豆の殻・皮の繊維部分など、それぞれの持つ特性を生かしたリサイクル・アップサイクルのさまざまな取り組みが、世界中で盛んに行われています。

これまで廃棄していた70%の部分を少しでも有効活用していくことは、環境負荷の減少、カカオ農家の経済状況の改善支援はもちろん、さらなる未来に向けた持続可能な経済活動につながっていくきっかけにもなるでしょう。

11.廃棄食材がエコ素材に生まれ変わる!リサイクルやアップサイクルの取り組みを企業・ブランドのメッセージに

活用されることなく、ただ捨てられるだけだった廃棄食材ですが、それらをもう1度「素材」として見つめ直し、特性を生かした有効活用していくことで、リサイクル・アップサイクル へとつながっていきます。

廃棄食材の多くは、私たちにとって身近な食材であり、そんな食材を活用した「エコ素材」は思わず手に取りたくなるような「親しみやすさ」があります。毎日の暮らしに自然に馴染む「エコ素材」を使った「アップサイクル製品」の採用は、企業のメッセージと共にサステナブルの輪を広げていく、第一歩につながるのではないでしょうか。

コメント一覧
  • わかりやすかった

    2023.11.20

    アイズニック太郎 様

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