ホテルのエコとは?推進の背景とエコフレンドリーな施設運営の手引き

2024/09/25 (更新日:2024/09/27)

ホテルのエコとは?推進の背景とエコフレンドリーな施設運営の手引き

現在、エコ活動は企業・個人の枠を超え、世界中の共通目標になりました。もちろんホテル業界でもエコ活動の推進が求められており、各々のコンセプトやブランドイメージと組み合わせた取り組みが広がっています。今やエコ活動はホテル業界の一大トレンドになりつつあり、乗り遅れると今後の経営に影を落とす原因になりかねません。

今回は、ホテルでエコ活動が重視され始めた背景と、具体的な実践方法をご紹介します。エコ活動に興味があってもどんなことから始めればよいか悩んでいる企画・運営担当者の方は、ぜひご一読ください。

1.「エコ」は新たなホテル選びの基準に

「エコ」は新たなホテル選びの基準に

世界中でSDGs活動がトレンドとなっている今、エコは消費者の選択における新たな基準の一つです。ホテル業界でも、地球環境への配慮や持続可能な社会実現への貢献をコンセプトにした宿泊施設およびその取り組みが注目を集めています。

当社がインターネット上で意識調査を行った結果、全体の7割以上が環境に配慮しているホテル・旅館に好感を抱いていました。

意識調査
意識調査

さらに、年6回〜10回以上旅行する層の約74.7%がエシカル消費(地球に配慮した消費)を意識しています。エコ活動は年間の宿泊回数にかかわらず評価が高い傾向にありますが、特にリピーターの共感を誘うことが分かりました。

要するに、エコな取り組みは幅広い層へ好印象を与えます。また、強く印象に残るため、リピーターの囲い込みにも効果的です。

近年は日本でも「エコホテル」「サステナブルホテル」「エシカルホテル」「SDGsホテル」と称する宿泊施設が増えており、それぞれ独自の環境活動を推進しています。

2.ホテルのエコが推進される5つの要因

ホテルのエコが推進される5つの要因

ホテル業界でのエコ推進がトレンドとなっている背景には、次の5つの要因が深く関わっています。

  • CSR
  • SDGs
  • パリ協定
  • 経費削減
  • ブランディング

CSR

「CSR(Corporate Social Responsibility)」とは、直訳すると「企業の社会的責任」を意味する用語です。企業は周辺地域や利害関係者に対して大きな影響力を持っているため、利益の追求だけではなく、社会的公正や環境への配慮へ進んで貢献する責任があると考えられています。

特に、宿泊施設は地域の住民や環境と密接に関係します。ホテル業界にとって、エコによる社会貢献は単なる慈善活動の一環ではなく、積極的に推進する義務のある活動だといえるでしょう。

SDGs

「SDGs(Sustainable Development Goals)」とは、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」といいます。2015年に全193カ国から成る国連総会で採択され、17のゴールと169のターゲットから成るユニバーサルな目標です。先進国・発展途上国にかかわらず「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことが明記されています。

さらに2022年4月から施行された「プラスチック循環促進法」により、一定の基準に合致する事業者の特定プラスチック製品の使用削減が求められるようになりました。特定プラスチック製品には、カトラリーやヘアブラシ、歯ブラシなど、ホテルのアメニティや備品として用いられている多くのものが該当します。

したがって、ホテル業界でも積極的かつ持続的なSDGs推進が必要であり、環境保全および資源の有効活用に配慮した活動が課題です。

関連記事>>【ビジネス向け解説】SDGsとは?意味や企業の取り組み方を徹底解説!17項目のゴールと日本の現状まとめ

パリ協定

「パリ協定」とは、COP21(第21回国連気候変動枠組条約締約国会議)で採択された、2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組みです。日本も後援国の一つであり、SDGsのゴール13「気候変動に具体的な対策を」も踏まえ、資金支援や達成へ向けた取り組みを行っています。

なお、日本における中期削減目標は、2030年度の温室効果ガス排出量マイナス26%(2013年度比)です。ホテル業界でも、敷地内のエアコン・冷蔵庫など、温室効果ガスを出す機器の使用に配慮が求められています。

経費削減

現在、ホテル業界は競合他社の増加で苦境に立たされているケースが少なくありません。さらに近年のコロナ禍の影響により、多くのホテル・旅館で諸経費の削減が重要な課題となっています。

資源の有効活用などのエコ活動を推進することで、環境保護につながるのはもちろん、水道・光熱費などのコストカットも実現できるでしょう。

ブランディング

現代は「エシカル」が消費者の選択に関与する要因の一つであり、サステナブルなホテルとしてのブランドはイメージアップにつながります。内装やホスピタリティ、アメニティ・グッズなどのプロダクトに環境への配慮を盛り込むことで、効果的に宣伝・PRできるはずです。

またブランディングが成功すれば、積極的に宣伝しなくてもお客さまから選ばれるホテルになれるでしょう。

3.ホテルがエコを実践する方法

ホテルがエコを実践する方法

ホテルのエコ活動と一口に言っても、その実践方法はさまざまです。ここでは、具体的な施策をご紹介しますので、マーケティング戦略の立案時に意識してみてください。

ホテルがエコを実践する方法

  • エコマーク認証の取得
  • エコな宿泊プランの提供
  • 顧客を巻き込むエコ企画の導入
  • エコ清掃の実施
  • 3R活動の推進

エコマーク認証の取得

「エコマーク」とは、日本環境協会によるサステナビリティの認証制度です。つまり、エコマークを取得すれば、資源循環に配慮した環境にやさしいホテルであることが証明できます。

エコマークの認定基準は、必須項目・選択項目の2つで構成されており、業種ごとに認定基準が異なります。なお、ホテル・旅館の基準は以下のとおりです。

評価カテゴリー必須項目数【選択項目】
基準の例
【選択項目】
選択項目数
(最大ポイント数)
お客さまとのエコ活動1.環境保全活動の発信
2.特定プラスチック製品の使用・提供の工夫
・エコツアーの情報提供
・サステナブルな食材提供およびその説明
10項目
(12pt)
エコな備品・設備を使う・なし・詰め替え容器の活用11項目
ごみを減らす1.食材の在庫管理・発注量の調整
2.ごみの分別とリサイクル
・食品廃棄物の再生利用または熱回収
・使い捨て製品の削減またはエコ素材の使用
9項目
(12pt)
省エネ1.エネルギーの使用量の把握
2.従業員への空調停止・消灯ルールの周知
・エアコンの設定温度の適正化
・省エネ機器の導入
11項目
(14pt)
節水1.水の使用量の把握と削減
2.従業員への節水ルールの周知
・シーツ・タオル類交換の選択制
・共用・バックスペースへの節水機器の導入
6項目
(9pt)
エコな施設運営1.該当する環境法規などの遵守・環境方針の体制整備・実施
・従業員への環境方針の周知
9項目
(12pt)

上記の必須項目に加え、選択項目ごとに設定されているポイントの合計数が基準を満たしている場合にエコマーク認証が取得できます。選択項目で満たすべきポイント数は、食事提供ありの施設は25pt、なし(もしくはテナントのみ)場合は21ptです。さらに、独自の取り組みを認定するその他のカテゴリがあり、認定の当否は審査委員会によって判断されます。

ごみ削減・省エネ・節水を基本とし、利用者への環境保全活動の普及・啓発を促すホスピタリティを提供することで、エコマークが取得できるでしょう。

関連記事>>【ビジネス向け】環境ラベル一覧&関連商品を解説!企業がSDGs活動で差をつけるために知っておくべき認定制度とは

エコな宿泊プランの提供

利用がSDGsへの貢献になる環境配慮型の宿泊プランの提供も、ホテルができるエコ活動の一つです。具体例として、次のようなプランが挙げられます。

  • 宿泊時に排出した温室効果ガスに応じて削減活動に投資する(カーボン・オフセット)
  • 該当プランの予約・宿泊でエコポイントが貯まる

こうしたプランの提供は、旅行や出張での宿泊そのものが環境保全になるようサステナブルな取り組みとして注目されています。

顧客を巻き込むエコ企画の導入

顧客参加型の環境負荷軽減活動は、ホテルならではのエコ活動です。具体的には、以下のような取り組みが例として挙げられます。

  • Web予約や受付の電子化でペーパーレスにする
  • マイカトラリー、マイ歯ブラシの持参を呼びかける
  • 未使用のアメニティを返却してもらう

また、環境負荷軽減活動に参加・協力してくれた宿泊客に対しては、一般的に何らかのプレミアムがつけられます。なお、プレミアムとして進呈されるのは、ミネラルウォーターやお菓子などの粗品が中心です。

活動への協力で環境保全に貢献できるだけではなく、ちょっとしたプレミアムも付くため、喜んで参加してくれる宿泊客が多い企画だといえます。

エコ清掃の実施

「エコ清掃」とは、環境保全に配慮した客室清掃システムです。宿泊中の毎日の清掃やシーツ・タオル交換を止めることで、水や電力の使用量を削減します。

エコ清掃はお客様に強制するものではなく、あくまで協力の「お願い」であり、希望・選択制にするのが妥当です。また、協力してくれた宿泊客に対してはミネラルウォーターやお菓子などのプレミアムをつけて協力を仰ぐ方法もあります。

3R活動の推進

3R活動の推進

「3R(スリーアール)活動」とは「Reduce(減らす)」「Reuse(くり返し使う)」「Recycle(再生利用)」の頭文字を取って作られた用語です。また3R活動は、2000年に公布された「循環型社会形成推進基本法」に明記されているキーワードでもあります。

ホテルにおすすめの3R活動は、エコ素材のアメニティの導入です。エコ素材のアメニティ導入なら、従来の宿泊・清掃のシステムを変える必要がないため、気軽に取り組めます。また、めずらしさから持ち帰って繰り返し使用してもらえるケースも多く、ごみ削減・リユース推進にも効果的です。

4.エコなホテルでSDGs活動と収益アップの両立を!

ホテルのように大規模な宿泊施設でエコ活動を推進すれば、循環型社会の実現に大きく貢献できます。また、ただ義務的な取り組みなのではなく、業務効率化や人件費削減、ブランドイメージ向上による収益アップにもつながるため一石二鳥です。エコ認証や環境配慮型の宿泊プラン、サステナブルな備品を積極的に取り入れ、エコな企業を目指しましょう。

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[出典]/PR TIMES/“環境に配慮している”宿、71%が好印象と回答 ホテル旅館に対する旅行者意識調査/https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000137.000032175.html
[出典]/プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(新プラ法)の普及啓発ページ/プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律/https://plastic-circulation.env.go.jp/
[出典]/エコマーク認証サービス/エコマーク「ホテル・旅館」の認定取得/https://www.ecomark.jp/service/hotel/index.html

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