ホテルに必要なマーケティング戦略とは?現代における重要性や成功事例もご紹介
2024/10/28
ホテル業界で顧客獲得競争が激化するなか、各施設では生き残りをかけて多彩なマーケティング施策が実施されています。さまざまな施策がありますが、成功のキーポイントは「マーケティングミックス」。複数のマーケティング施策の特徴を知り、それらをうまく組み合わせることが予約数アップの秘訣です。
とはいえ、有効なマーケティング施策の立案は簡単にはいかないもの。どのような方向性でマーケティング戦略を考案すればよいかわからず、お困りの方も多いのではないでしょうか。
今回は「ホテルマーケティング」にスポットライトを当て、その意義や重要性に迫りました。有名な成功事例も紹介しているので、マーケティングの方向性を決めかねている担当者の方はぜひ参考にしてください。
1.ホテルや旅館に有効な5つのマーケティング戦略
マーケティングにはさまざまな手法がありますが、ホテル経営を成功へ導くポイントは、複数の施策を組み合わせた戦略を考案すること。これを「マーケティングミックス」といい、多くのホテル・旅館が取り入れている手法です。
各施策をうまくミックスするためには、ホテル・旅館業と相性のよいマーケティング手法を知っておかなければなりません。ホテル・旅館業で特に有効とされているのは、以下5つのマーケティング戦略です。
- ブランドマーケティング
- ペルソナマーケティング
- コンテンツマーケティング
- SNSマーケティング
- 口コミマーケティング
ブランドマーケティング
「ブランドマーケティング」とは、自社ブランドを作り上げ、その価値を高める集客手法です。いわゆる「ブランディング」のことであり、独自のブランドイメージによってファン獲得を狙う、ブランド戦略の一環です。
ブランドマーケティングで重要なポイントは「ランク」と「コンセプト」。一般的にホテルのランクは「星」で評価され、各施設の設備や料金、人気などから大手メディア・旅行会社の独自基準によってその獲得数が決められます。
設備を変えるのは容易ではないため、料金やサービス面での利便性や独自性が重要です。独自性の演出に大切なのは、ホテルごとの強みやアピールポイントともいえるコンセプト。各ホテル・旅館が打ち出したいコンセプトを設定し、それを全面に打ち出した戦略を立てることで、顧客の取り込みを図ります。
ブランドマーケティングにおけるコンセプトによくある例は、食事や温泉(お風呂)ですが、ありふれた方向性では競合他社と差別化できません。そこで成功の鍵を握る要素こそ「ホスピタリティ」です。自社でしか味わえない最上のおもてなしや体験を確立・アピールできれば、ホテル・旅館への宿泊自体が旅の目的になり、多くの集客が見込めるでしょう。
簡単に取り入れられるブランドマーケティング施策の具体例は、コンセプトに基づくアメニティの差し替えやノベルティの配布です。設備やプランなどのように大規模な回収がいらず、気軽に試せます。
ペルソナマーケティング
見込み顧客へ効果的に宣伝するには「コンテンツマーケティング」が有効だといえます。コンテンツマーケティングは別名「CMI」といい、ユーザーの悩みや課題を解決する情報を提供することで集客につなげるマーケティング手法です。
単にホテルの商品・サービスを宣伝する一方通行のマーケティングでは、もともと自社に興味を持っている顧客層にしか訴求できません。そこでコンテンツマーケティングを併用することで、自社を知らない層が興味を持つきっかけが作れます。
なお、代表的なコンテンツマーケティングのアプローチ手段には以下の例が挙げられます。
- コラム記事・ブログ
- 動画
- メールマガジン
自社サイトのホームページやオウンドメディアの運営など、顧客のニーズに応じたコンテンツを充実させることで、大きな集客効果が期待できるでしょう。
なお、コンテンツはただ数を増やせばよいというわけではありません。ユーザーにとって価値のある情報を提供することで、自社ホテルへの信頼感や満足度が高まり、ファン創出につながります。
また、コストパフォーマンスの高さもコンテンツマーケティングのメリットの一つ。広告出稿のように継続的かつ多額の出費を要さないため、宣伝費用の削減にも効果的です。
SNSマーケティング
「SNSマーケティング」とは、FacebookやX(旧Twitter)、InstagramなどのSNSでの自社アカウント運営による集客手法です。
平成29年版「情報通信白書」によると、日本における代表的なSNSの利用率は、2016年時点ですでに71.2%に達しています。またSNS利用者の割合は、2012年の41.4%と比べるとわずか4年間で1.7倍以上も増えており、普及率の高さが伺える結果となりました。
こうした爆発的な普及を背景に、現代においてSNSはマーケティングに欠かせないツールとなっています。ホテル・旅館が運営するSNSの代表例は、周辺の観光スポットやイベント情報などを掲載した記事やコンテンツ。近年は、各種情報の動画投稿もトレンドとなっており、YouTubeなどの他サービスとの連携も行われています。ホテル・旅館の公式アカウントの情報を充実させるほど、大きな集客効果が期待できるでしょう。
さらに、影響力の強いユーザーに協力してもらう「インフルエンサーマーケティング」もSNS運用によく用いられる手法です。くわえて、SNSは後述する「口コミマーケティング」とも関連が深く、アイデア次第でさまざまな展開が期待できます。
口コミマーケティング
「口コミマーケティング」とは、実際の利用客の声を活用した集客手法です。具体的なやり方は、基本的に実際の利用客の声を集めて掲載するだけ。手間やコストがほとんどかからないため、費用対効果が抜群です。
なお、アメリカ「Tripadvisor, Inc.」の調査によると、回答者の5人中4人(81%)が宿泊先を予約する前にレビューを読んでいることが分かりました。また、同等のホテルで比較した場合、10人中8人(79%)がより高評価のホテルを予約する傾向にあります。さらに、52%がレビューのないホテルには予約しないと回答しました。
つまり、ホテル・旅館にとって、利用客からの高評価の口コミ獲得は重要な課題です。特に、近年はインターネットやSNSの普及で重要性がより高まっています。
ただし、口コミの意図的な操作は自社の信頼を下げる結果につながりかねないため、おすすめできません。また「合同会社mingoo」の調査で、全体の73%が「口コミ・レビューの評価を理由に宿泊を取りやめた経験がある」と回答していることから分かるとおり、数さえ多ければよいというわけでもないようです。
したがって、あくまでサービスの質の向上を前提としたうえ、特典の進呈など、高評価の口コミ発信を促す施策の併用が求められます。
2.ホテル業界でマーケティングが重視される理由
ホテルや旅館でマーケティング戦略が重視されているのは、近年の競合過多による顧客獲得競争の激化が主な要因です。
厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、2022年度現在の旅館業に属する施設は90,705施設であり、2018年度と比べ5,088施設の増加していました。それにもかかわらず、旅館・ホテル営業に焦点を当てると、その数は年々減少傾向です。
一方、カプセルホテルやゲストハウスなどを代表とする簡易宿所営業では、2018年度から年平均1,000施設以上の増加がみられます。要するに、現在の業界では、従来のホテル・旅館以外の形態の施設が急成長しているのです。
簡易宿所の最大の強みは、圧倒的な低価格で大人数が泊まれる点だといえます。宿泊施設は、金額の安さのみが大切なわけではありません。しかし「株式会社ベストアクティ」の調査結果が示すとおり、宿泊施設を選ぶ際、多くのユーザーが重視するのは宿泊料金です。一般的なホテル・旅館では、簡易宿所の料金の安さだけで対抗するのは困難でしょう。
したがって、今の時代のホテル・旅館に必要なのは、顧客に「ここに泊まりたい」と思わせるマーケティング戦略です。自社独自のマーケティング戦略を打ち出し、数ある競合他社に差をつけられなければ、今後のホテル・旅館業界で生き残るのは難しいかもしれません。
3.ホテルマーケティングの新たなキーワード「サステナブル」
ここまで解説してきた一般的なマーケティング戦略にくわえ、今後のホテル業界に求められる課題はサステナブルな施設運営です。これは、世界的なSDGsの意識の高まりによる持続可能な観光(サステナブル・ツーリズム)が背景にあります。
2021年6月、日本政府観光局(JNTO)は「SDGs への貢献と持続可能な観光(サステナブル・ツーリズム)の推進に係る取組方針」を発表しました。その中で、地球の環境・文化・経済を守り育む取り組みの推進が示されています。
また、2021年12月に実施した弊社独自の調査でも、全体の71%が環境に配慮しているホテル・旅館に対し好印象を抱くことが判明しました。年に6~10回以上旅行するリピーター層の約74.7%が「エシカル消費(環境に配慮した消費行動)を普段意識する」と回答したことからも、環境への意識の高まりが伺えます。
つまり、SDGsへの貢献は今後のホテル・旅館経営に欠かせないテーマです。顧客の興味を引く従来のマーケティング戦略へSDGsをいかに絡められるかに今後のホテル業界での生き残りがかかっているといっても過言ではありません。
4.ホテルマーケティングの有名な成功事例
ここからは、実際にどのようなホテルマーケティングが実施されているのか、有名な成功事例をみていきましょう。
帝国ホテル
独自のマーケティング戦略で「ジャパン・ラグジュアリー」を体現する「帝国ホテル」は、いわずと知れた日本を代表する宿泊施設です。
帝国ホテルのマーケティング戦略の軸は、徹底したフェアなホスピタリティ。顧客の属性にかかわらず、すべての方へ最善のおもてなしを提供することで、それぞれにとって最高の体験が味わえる場を作り上げています。
同時に、マニュアルにとらわれない温かみのある接客という、本来フェアとは相反するホスピタリティを打ち出している点も特徴です。
こうして長きに渡りブランド力を高め続けてきた帝国ホテルは、今や国内外・老若男女問わず、多くのユーザーから多大な支持を受ける宿泊施設としての地位を確立しました。くわえて近年では、サービスのサステナブル化に力を入れています。
もともと帝国ホテルでは、SDGsが推進され始める以前から生ごみのリサイクルによる食品ロスの削減に取り組んでいました。さらに2020年にはサステナビリティ推進委員会を立ち上げ、食事・アメニティ・電力のSDGs活動を新たなおもてなしとして提供し、成功を収めています。
星野リゾートグループ
ブランドマーケティングの成功事例として名高いのは、国内外に数多くの拠点を設ける「星野リゾートグループ」。
星野リゾートグループのマーケティング戦略の基軸は、自社ブランドの細分化です。複数のブランドそれぞれに「非日常」「地域性」「参加者みんなで楽しめるアクティビティ」など別コンセプトを設定し、独自の価値を創出しています。
マーケティングにはInstagramをはじめとするSNSをうまく取り入れているのも星野リゾートグループの戦略の一つ。SNSによるイメージ戦略で「気軽に泊まれる憧れのホテル」としてのブランディングの確立に成功しました。
また近年は「勝手にSDGs」と称した独自の経営方針を打ち出し、サステナブルをテーマとする次のような活動が積極的に推進されています。
- エアコンがいらない地域性を活かした環境建築の導入
- 農業体験ができるアクティビティの実施
- フードロスをテーマにした選択制の料理メニュー「シュル・ラ・カルト」の提供
- プラスチックごみが減らせるポンプ式のアメニティの採用
伝統や文化を活用し、公益性と経済的利益の両立を目指す「CSV経営」を実践しています。
アパホテル
近年の旅行客減少を物ともせず、黒字を上げ続けている「アパホテル」。コロナ禍の非常時では、自宅療養者の受け入れ施設として真っ先に名乗りを上げたことでも有名です。
アパホテルのマーケティングにおける重要なファクターは、公式アプリによる統一した予約システム導入とポイントバック戦略だといえます。出張の多いビジネスワーカーをメインターゲットとし、安易な値下げではなく、会員ランクごとのポイント付与制度でリピーターの創出に成功しました。
くわえて、アプリ使用による「1ステップ予約」や「1秒チェックイン・チェックアウト」など、自社アプリ内での予約・決済を促す仕組みを取り入れています。さらに、キャンセル料無料で宿泊当日まで最安値で予約できるシステムを確立し、平均単価と稼働率を向上させていることも大きな成功要因です。
また、SDGs活動として「TABETE」アプリの提供を開始。フードシェアリングを通して食品ロスを削減し、新たなブランディングの確立を目指しています。
【SUSPRO事例紹介】アメニティでサステナブルをアピールするホテル事例
ここからは、実際に弊社製のエコアメニティで顧客の心を掴んだ事例をご紹介します。
サステナブルな施設運営の一例として挙げられるのが、エコなアメニティ・客室備品の導入です。アメニティ・客室備品の脱プラスチックとしてエコ素材に一新し、エコなイメージのブランディングを図るホテルが増えてきています。
例えば、鹿児島県大島郡徳之島町にある「日本企画株式会社」では、徳之島が世界自然遺産に登録されたことをきっかけに、より環境やサステナブル意識を取り入れたサービスを開始しました。「ホテルからのささやかなプレゼント」と位置付け、とうもろこし由来のアメニティ7種セットをチェックイン時に手渡しでご提供。環境配慮の姿勢ととうもろこしの自然由来の風合いが好評のようです。
このように、とうもろこしをはじめとするエコ素材は、その独特の見た目で分かりやすくサステナビリティへの貢献がアピールできます。設備を入れ替えるより低コストで、手軽に導入できるマーケティング施策です。「プラスチック資源循環法」でプラスチック使用の合理化が進むなか、ひと足先にエコ素材を取り入れれば、大きなアドバンテージにつながります。
5.SDGsを意識したマーケティングミックスでホテルの新たなブランディングを!
複数のマーケティング施策の特徴を理解し、うまくミックスすれば、集客の相乗効果が生まれます。さらに、上質なサービス・ホスピタリティの提供と組み合わせることで、自社ホテルだけの魅力的なブランディングが確立できるでしょう。
また、ホテルマーケティングでは、顧客のニーズに合わせて戦略を柔軟に見直すことも大切です。集客のPDCAサイクルの好循環を目指し、自社に適したマーケティングの方向性を考えてみてください。
ホテル・旅館にとって最も手軽にできるマーケティング戦略は、エコ素材のアメニティ・客室備品の導入による環境配慮のアピールです。「サステナブル」は今後のホテル経営に不可欠のテーマであり、簡単に取り入れられる点にも大きな利点があります。
エコアメニティやサステナブルな客室備品の制作は「SUSPRO」へおまかせください。既製品のエコアメニティなら「SUS amenity」、サステナブルなグッズは「SUS supply」で承ります。また、完全特注のオリジナル制作もOK!ご依頼のほか、ご相談だけでも喜んで受け付けておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
[出典]/総務省/平成29年版 情報通信白書/https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc111130.html/
[出典]/TripAdvisor/Online Reviews Remain a Trusted Source of Information When Booking Trips, Reveals New Research/https://ir.tripadvisor.com/news-releases/news-release-details/online-reviews-remain-trusted-source-information-when-booking/
[出典]/PR TIMES/「ハズさない宿泊先選び」先人たちに学ぶポイントを大調査。ホテルや旅館選び、旅行好きたちは「口コミ」や「レビュー」を重視していた?!/https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000128472.html/
[出典]/厚生労働省/令和4年度衛生行政報告例の概況/3 生活衛生関係/https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/22/dl/kekka3.pdf/
[出典]/PR TIMES/【アンケート調査】宿泊施設を選ぶときに重視するポイントは?「宿泊料金」や「清潔さ」を気にする人が多数/https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000061.000122119.html/
[出典]/帝国ホテル 公式サイト/サステナビリティレポート2023/https://www.imperialhotel.co.jp/sustainability/report/
[出典]/星野リゾート 公式サイト/経営戦略/https://hoshinoresorts.com/jp/recruit/strategy/
[出典]/アパホテル 公式サイト/https://www.apahotel.com/apamembers/
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