リサイクルゴムとは?環境にやさしい再生素材の魅力

2025/01/06

リサイクルゴムとは?環境にやさしい再生素材の魅力

ゴムは再生可能な資源ですが、技術的な問題から、これまでは簡単にはリサイクルできないといわれてきました。しかしSDGsの達成へ向けた活動が推進される今、リサイクル技術が進歩したこともあり、ゴムの再生技術が再注目されています。

今回は、廃棄物処分の現状を踏まえ、リサイクルゴムのメリットとデメリットを解説。ゴムの多彩なリサイクル方法や再生して作られた素材の主な用途も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

1.リサイクルゴムとは

リサイクルゴムとは

まず、リサイクルゴムの特徴や作り方、種類・分類などを踏まえて、どのような素材なのか理解を深めていきましょう。

リサイクルゴムの特徴

「リサイクルゴム」とは、ゴムを原料とするタイヤやチューブなどの廃材から作られた再生素材です。上記の手法はマテリアルリサイクルといい、こうして作られたゴムは「再生ゴム」とも呼ばれています。

リサイクルゴムの作り方

リサイクルゴムは、ゴムの廃材を粉砕し、熱で再生剤と混ぜ合わせて作られます。

素材として再生させるほか、近年はタイヤなどのゴムを高温で蒸し焼きにし、オイルやカーボンブラック、スチールに分解してリサイクルする方法も開発されました。こうして分解されてできた素材は、主に燃料や再生カーボンブラックとして再利用されます。

なお上記の分解法によるリサイクル技術は、日本ではまだ実用化されていません。しかしゴム製の廃材を資源として輸出することで、最終的にリサイクルにつなげる取り組みはすでに海外で進められており、今後日本でも普及が期待されています。

ゴムのリサイクル技術が浸透すれば、ゴム業界のサステナブル化をよりいっそう後押ししてくれるでしょう。

リサイクルゴムの種類

リサイクルゴムには、主に次のような種類があります。

種類特徴
SBRスチレンとブタジエンの共重合体
EPDMエチレンとプロピレンの不飽和化合物
CRクロロプレンの重合体
NBRブタジエンとアクリロニトリルの共重合体

上記のうち、最も多いのはSBRです。SBRは性質が天然ゴムに近いので汎用性が高く、品質も安定しているにもかかわらず低価格のため、これまで多く流通していました。しかし近年は、性質のバランスがより良く利便性の高いEPDMやCR、NBRなどのリサイクルゴムの普及も進んでいます。

リサイクルゴムの品質分類

リサイクルゴムの品質は、JIS規格(日本産業規格)において、原材料の違いによって次の6種類に分類されます。

品質分類原材料
AN天然ゴム
AIブチルゴムを主とするタイヤ用チューブのゴム
BTトラック・バスなどの大型自動車のタイヤのゴム
BP乗用車のタイヤのゴム
C1自動車のタイヤチューブ以外のゴムのうちA級のもの
C2自動車のタイヤチューブ以外のゴムのうちB級のもの

上記のほか、色物再生ゴム、非汚染性再生ゴム、油展再生ゴム、特殊再生ゴムなどもあります。リサイクルゴムの品質を決めるのは、原料の良し悪しです。したがって、より高品質な製品を作りたいなら、天然ゴムに近い原料のリサイクルゴムを選ぶ必要があります。

2.リサイクルゴムの現状

リサイクルゴムの現状

ゴムやゴムくずは、最終処分率(廃棄物を埋め立て処分する割合)の高い素材です。環境庁の報道発表資料によると、令和3年度の天然ゴムと合成ゴム(廃プラスチック)の最終処分率はいずれも上位3以内となっています。

特に、ゴムくずを含む廃プラスチックの排出量は増加傾向です。ゴムのリサイクル自体は古くから行われていましたが、その複雑な工程から、なかなか普及が進んでいませんでした。

しかし近年のSDGs推進に伴い、すべての企業に「サステナビリティ」が求められるようになっています。その流れの中で、ゴム業界でもごみの排出量削減と資源の有効活用、自然環境保全の観点から、リサイクルの必要性が再注目されるようになりました。近年は、実際にゴムのリサイクル率が大きく拡大しており、例えば廃タイヤでは9割を超えているといわれています。

社会および産業の持続的な発展・推進のためには、リサイクルゴムのさらなる技術進歩と、ものづくりへの活用が不可欠です。

3.リサイクルゴムの5つのメリット

リサイクルゴムの5つのメリット

リサイクルゴムを活用することで、次のようなメリットが得られます。

コストが低い

リサイクルゴムは通常のゴムより練りなどにかかる時間が短く、生産効率がよいことから、低コストで仕入れられます。原価が抑えられれば、低価格で販売できるため、より多くのユーザーに手に取ってもらえる可能性が高まるでしょう。

製品化の幅が広い

リサイクルゴムは通常のゴムより押し出し・成形などの加工がしやすくなるため、多彩な製品が作れます。また安定した可塑性もリサイクルゴムの利点であり、さまざまな素材と組み合わせることが可能です。

ゴミ削減につながる

リサイクルゴムは、従来廃棄するしか方法がないと思われていた廃材を再生させた素材のため、ゴミの排出量が減らせます。廃棄されるタイヤなどのゴムは年間で約100万トンともいわれており、回収して再生した素材を活用すればゴミ削減に大きく貢献できるでしょう。

廃ゴムの不法投棄が防げる

廃棄と同じく、近年問題視されているのが廃材となったタイヤ・チューブの不法投棄です。天然ゴム以外のゴムは基本的に自然に還らないため、いつまでも廃棄地に留まり続け、悪臭や発火などのトラブルに発展する恐れがあります。ゴム製品のリサイクルの循環がシステム化して普及すれば、むやみな不法投棄の減少につながるはずです。

サーキュラーエコノミーが実現できる

ゴムをリサイクルすれば、従来は廃棄されていたゴムが循環できるため、サーキュラーエコノミーの実現に一歩近づきます。なおサーキュラーエコノミーとは、今ある資源を循環させて有効活用する経済システムのことであり、世界規模の課題の一つです。

例えば、天然ゴムは土に還るエコな素材ですが、限りある資源の有効活用の観点から、リサイクルするほうがよりサステナブルだといえます。企業がサーキュラーエコノミー形成に積極的に取り組むことで、焼却処分時の環境負荷の削減に貢献できるでしょう。

サーキュラーエコノミーとはどのようなものなのかを詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

関連記事>>循環経済(サーキュラーエコノミー)の実現を急げ!先進事例を読み解き、未来を拓くビジネスモデルの見直しを

4.リサイクルゴムのデメリット

リサイクルゴムのデメリット

高温・高圧・高速で加工するリサイクルゴムは、再生の過程で大きなダメージを与えるので、天然ゴムなどと比べ品質が落ちる場合があります。また、原料や薬品、化学反応などが原因の独特の強いニオイも問題であり、製品化には注意が必要です。

そのため従来の製品化の際は、リサイクルゴム単体では使用できないというのが通説であり、混ぜて使用するケースが大半でした。

とはいえ、近年はこうしたデメリットがカバーされた原料の開発も進んでおり、高品質なリサイクルゴムも少なくありません。サステナブルな視点から、リサイクルゴムにはさらなる技術進歩が期待されています。

5.原料再生だけじゃない!ゴムのリサイクル方法

原料再生だけじゃない!ゴムのリサイクル方法

ゴムのリサイクル技術には、原料に戻すマテリアルリサイクルのほか、多様な再生方法があります。ここからは、次の2つのリサイクル方法についてみていきましょう。

  • サーマルリサイクル
  • リユースリサイクル

サーマルリサイクル

サーマルリサイクルについて

「サーマルリサイクル」とは、廃ゴムの焼却で生じる熱をエネルギー化して発電・燃料・紙などに再利用する方法です。現在、廃タイヤの大半がサーマルリサイクルされるといわれています。

リユースリサイクル

「リユースリサイクル」とは、状態のよいゴム製の廃材を、中古や一部交換した更生製品として再利用する方法です。大型自動車のタイヤが使用されるケースが多い傾向にありますが、品質や信頼性の面から、現状ではあまり普及が進んでいません。

6.リサイクルゴムの用途

リサイクルゴムの用途

リサイクルゴムは、天然ゴムより生産・加工しやすいという特徴を活かし、次のような用途に使われています。

リサイクルゴムの使用例

  • タイヤ・チューブなどの工業用品
  • アスファルトなどの路盤材
  • スニーカー・サンダルなどのソール
  • バッグ
  • 財布
  • アクセサリー

従来、リサイクルゴムのほとんどが工業用品や資材などとして使用されていました。しかし近年はファッションアイテムの生地や材料にも用いられるようになり、廃ゴムがアパレルや雑貨などさまざまな製品にアップサイクルされています。

7.ゴムもリサイクルしてサステナブルな未来へ!

再生素材を取り入れたものづくりは、小売業や製造業が手軽にできるSDGs活動です。ゴムの再生技術の進歩に伴い、従来より高品質かつ使い勝手のよいリサイクルゴムが登場し、市場も拡大しつつあります。個々の企業が資源活用のソリューションを積極的に導入していけば、サーキュラーエコノミーの形成が実現できるはずです。

資源の循環やエコな素材を使ったものづくりに関するご質問・ご相談は「SUSPRO」へ!エシカルな企業となる第一歩を全力で応援します。まずはお気軽にお問い合わせください。

[出典]/環境庁/産業廃棄物の排出及び処理状況等(令和3年度実績)について/https://www.env.go.jp/press/110498_00001.html

SUSPRO編集部

【フルオーダーグッズ制作チーム】 Y.Y

多様な企業様の販売品・ノベルティを制作しているグッズの企画・営業担当。企画から納品まで一気通貫で担う中で、特にエコ素材に関する知識や取り扱い方法・トレンドなどに精通しています。

【フルオーダーグッズ制作チーム】 Y.Y

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