2022年4月施行の新法案「プラスチック資源循環法」とは?対象製品や企業の対策を徹底解説!

2022/03/28 (更新日:2024/09/30)

2022年4月施行の新法案「プラスチック資源循環法」とは?対象製品や企業の対策を徹底解説!

海洋プラスチックごみの増加や気候変動など、プラスチックが地球環境にもたらす影響が問題視される昨今。日本では、こうした環境問題への対策としてプラスチックの資源循環を推進するため、2021年6月11日に「プラスチック資源循環法」が公布されました。

この法案は、プラスチックの廃棄量を削減するだけではなく、廃棄することを前提としない循環型の経済活動「3R+Renewable」を目指すもの。これにより、一部の使い捨てプラスチック製品は有料化されることになりました。

2022年4月1日の施行を目前に、プラスチックを扱う事業所や自治体は「3R+Renewable」の実現のために、どのような対応が必要になるのでしょうか。

今回は「プラスチック資源循環法」の概要や、有料化の対象となる製品について解説。脱プラスチックのために効果的な、代替素材を使った製品例を紹介します。

1.2022年4月ついにはじまる、プラスチック資源循環法とは?

1.2022年4月ついにはじまる、プラスチック資源循環法とは?

暮らしにあふれるプラスチック。そのプラスチックがもたらす環境問題への対策となるのが、2022年4月1日施行の「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(以下、プラスチック資源循環法)」。その概要や措置内容を解説していきます。

法案の目的と成立した背景

そもそもプラスチック資源循環法が生まれた背景には、海洋ごみや気候変動などの環境問題があります。また、諸外国の廃棄物輸入規制が強化され、これに対応する必要が出てきました。こうしたことをきっかけに、日本でもプラスチックを使い捨て続けるのではなく、資源循環を促すことが重要となっていったのです。

新法案でキーワードとなったのが「3R+Renewable」。Reduce(リデュース)・Reuse(リユース)・Recycle(リサイクル)の「3R」に、Renewable(リニューアブル)がプラスされた新しい概念です。

「3R+Renewable」とは?

  • Reduce(リデュース)……廃棄物の発生抑制
  • Reuse(リユース)……再使用
  • Recycle(リサイクル)…再資源化
  • Renewable(リニューアブル)……再生可能資源への代替

製品設計から廃棄物処理に至るまで各段階において、この「3R+Renewable」をプラスチックに関わる事業所や自治体などが意識することで、プラスチック資源を循環させる仕組みを整えます。それを促進する手立てがプラスチック資源循環法というわけです。

この法案の誕生により、脱プラスチックがさらに推進され、SDGsのゴール12「つくる責任 つかう責任」やゴール14「海の豊かさを守ろう」の達成にもつながることが期待されます。

プラスチック資源循環法による措置

プラスチック資源循環法ではプラスチックにかかわる事業者などを「製造事業者」「提供事業者」「販売事業者」「排出事業者」および地方自治体などに分類。それぞれに向け、次のような対策・指針を掲げ、循環促進を目指します。

1)プラスチック使用製品設計指針
プラスチックを使った製品をつくる事業者に向けた指針を決定。この指針に合う設計を主務大臣が認定し、その設計に基づくプラスチック使用製品の調達や使用を促す。
2)特定プラスチック使用製品の使用の合理化
「特定プラスチック使用製品」とは、コンビニで無料提供されるスプーンなど商品などに付随するプラスチック使用製品のこと。ムダを省き、ゴミとなる量を抑えるために、これらの提供事業者が取るべき手立てや判断基準を新法案で定める。
3)市町村の分別収集・再商品化
プラスチックを使用製品の廃棄物を再商品化する仕組みを導入。「容器包装再商品化法」の仕組みを活用し、市町村や再商品化事業者による効率的な再商品化が見込まれる。
4)製造・販売事業者等による自主回収及び再資源化
製造事業者が自らつくったり、販売したりしたプラスチック使用製品について、使用済品をスムーズに再資源化できる仕組みをつくる。事業者が自主回収・再資源化事業計画を作り、国が認定することで、廃棄物処理法の規定による許可を受けずに再資源化できることに。
5)排出事業者の排出抑制及び再資源化等
排出事業者とは、事務所、工場、店舗などでの事業活動に伴って、プラスチックごみを出す事業者のこと。そうした事業者が排出抑制や再資源化を促進するために取り組むべき判断基準を決定。さらに、廃棄物処理法の規定による許可を受けずにスムーズに再資源化を実施できる仕組みもつくる。
[出典]/環境省 プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案の閣議決定について(※2022年3月時点)

2.2022年4月から有料化となるプラスチック製品

2.2022年4月から有料化となるプラスチック製品
12品目の特定プラスチック使用製品一覧

プラスチック資源循環法により、新たに有料化となるプラスチックがあります。その対象は「特定プラスチック使用製品」とされる12品目。これらは3Rとともに、「Renewable」として、プラスチックから紙、木などへ代替素材への移行が進められています。

カトラリー

①カトラリー

コンビニやスーパーマーケットなどで弁当などの食料品を購入すると、使い捨てプラスチックカトラリーが無料で提供されることがあります。こうしたフォーク、スプーン、ストローなどカトラリー全5種が「特定プラスチック使用製品」対象となり、有料化されることになりました。

飲食業界の一部店舗などでは、プラスチックカトラリーからエコ素材への移行が、早い段階でスタートしています。「スターバックスコーヒー」では紙ストローに切り替えたほか、コンビニ大手「ローソン」でも2021年8月から実験的に都内の一部店舗で木製スプーンを導入しました。このようにカトラリー類は「紙」「木」などエコな代替素材へ移行することが求められる潮流にあります。

アメニティ

②アメニティ

プラスチックのアメニティは、これまで多くのホテル・旅館などで施設利用者へ無料で提供されてきました。こうしたアメニティも「特定プラスチック使用製品」の対象で有料化されます。品目はヘアブラシ、くし、かみそり、シャワーキャップ、歯ブラシが挙げられます。

環境省では「提供方法の工夫」により、業種や業態の実態に応じた取り組みを選べるよう働きかけています。例えば「アメニティを有償化する」「繰り返し使用を促進する」「受け取りを辞退した消費者へポイントを還元する」といった工夫です。

そのほか、衛生面とコスト面のバランスを考えながら、プラスチックから代替素材へ転換する試みも行われています。

このようにホテル・旅館においては、プラスチック新法案への対応は避けられない課題です。SDGsの取り組みの一貫にもつながり、「人や地球にやさしいホテル」としてブランド力が上がる機会になる可能性も秘めています。

代替素材として注目されている「竹」を使ったアメニティを導入するなど、すでにプラスチック新法案への対応を進めているホテル・旅館は徐々に増加しています。


なかでも北海道にある『木ニセコ』や、茨城県の『見晴らしの丘真壁うり坊』、高知県の『湖畔遊』では、アイグッズが展開する「SUS organic」シリーズを採用しています。

>>関連記事:「ホテル業界が取り組むSDGs。期待されるゴールとその理由、社会課題の現状と数字を徹底解説」

ハンガー・衣類用カバー

③ハンガー・衣類用カバー

クリーニング店などが取り扱うプラスチック製ハンガーや衣類用カバーも「特定プラスチック使用製品」対象のため、有料化されます。

全国クリーニング生活衛生同業組合連合会では、この対策として主に4つの方法を予定しています。1つ目は、こうしたハンガーやカバーを有償で提供すること。2つ目は、消費者へ受取りの意思確認を行うことです。3つ目は、受け取りを辞退した消費者へポイントを還元する方法。4つ目は、回収して再利用する方法です。

今回のプラスチック新法案では、クリーニング事業者はプラスチックの「排出事業者」ではなく「提供事業者」に分類されています。提供量が年間5トン以上の多量提供事業者の場合は、組みが不十分であると勧告・公表・命令対象となる予定です。

各クリーニング店にとっては対策を試みながら、消費者と新しい利用スタイルを作り上げ、SDGs達成に貢献していく契機となるでしょう。

1966年から続く「ポニークリーニング」では、SDGsへの取り組みとして「使用後のハンガーの回収」を行い、再利用できるものはリユース、できないものにはリサイクルを実施。そのほかにも省エネ設備への投資や女性が働きやすい環境づくりなど、SDGsの目標達成に向けたさまざまな取り組みを行っています。

3.脱プラスチックの対策が叶う、エコ素材の製品例

日本では、すでに企業が「Renewable」による脱プラスチックを推進した事例が多くあります。ここでは、脱プラスチック社会に適応するための、環境にやさしい資材を使ったアイテムづくりの実例についてを紹介していきます。

紙やコットン生地のショッピングバッグ

紙やコットン生地のショッピングバッグ

プラスチック資源循環法の施行に先駆けて、2020年7月1日にはプラスチック製買い物袋が有料化されました。これを受け、ファッション業界ではショッピングバッグをFSC認証紙の紙袋や布製などに変えて有料化するなどの対応が主流に。

例えば、アパレルブランド「BEAMS」では、年間39万枚を用意することもあったプラスチック製ショッピングバッグを廃止。2021年5月から、GOTS認証を受けた100%オーガニックコットンを使用したショッピングバッグを550円で販売開始しました。

代替品に地球にやさしい素材を採用することで、サステナブルな選択を消費者に提供することを実現した事例と言えるでしょう。

石灰石を使ったレジ袋

石灰石を使ったレジ袋

レジ袋の有料化は、一般消費者にとってエコバッグ使用が広がる契機になりました。その一方で、エコバッグを持参していない消費者に対しては、有料のレジ袋を販売することが一般的となっています。

そこで、レジ袋自体の素材を見直す取り組みもスタート。生分解性プラスチックやバイオマスプラスチックなど環境にやさしい素材が積極的に使われる傾向にあります。

その一例が、天然資源である石灰石を主原料として、石油系樹脂を混ぜた新素材「LIMEX(ライメックス)」を使ったレジ袋。LIMEXを使うことで石油由来プラスチックの使用量を削減できます。さらにLIMEXは紙を作る時に水をほとんど使わず、森林伐採も不要。紙やプラスチックに替わる素材として今後も注目されていくことでしょう。

バガスを使ったテイクアウト容器

バガスを使ったテイクアウト容器

飲食業などのテイクアウト容器としては、木材パルプで作る紙容器よりもさらにサステナブルな「バガス」を使ったものが登場。バガスとは、廃棄物として処理されていたサトウキビの絞りかすです。バガスを木材パルプの代わりとすることで森林伐採量を減らせるので、森林保護や二酸化炭素の削減にも貢献できるというわけです。

バガスはプラスチックより環境にやさしく、紙よりも丈夫で耐水性や耐油性が高いのも魅力。オーブンでは使えませんが、電子レンジでの加熱はできるなど、使い勝手がよいことからも、バガスを使ったテイクアウト容器は今後ますます普及することが見込まれます。

FSC認証紙を使った紙ストロー

FSC認証紙を使った紙ストロー

使い捨てプラスチックストローは、プラスチック資源循環法で有料化となる「特定プラスチック使用製品」12品目のひとつ。施行前から、すでに飲食店などではプラスチックからFSC認証紙へ素材を切り替える取り組みが行われてきました。

FSC認証紙を使ったストローは、フラペチーノやタピオカドリンクなどの固形を含んだドリンクを飲むための太い口径タイプなども開発されています。中でも「スターバックスコーヒー」では紙製ストローへの切り替えで年間約2億本分のプラスチックストローが削減できると公表しています。

紙製ストローによってプラスチック使用量が削減できるのはもちろん、FSC認証紙を選ぶことで森林保護にもつながります。

麦わらを使った持ち運び用カトラリー

麦わらを使った持ち運び用カトラリー

コンビニやスーパーなどで無料提供される、使い捨てカトラリー。有料化にともない、「マイスプーン」などカトラリーの持ち運びが増えるだろうと予想されています。

こうした持ち運び用カトラリーは、エコ素材で製作することで、さらに環境へ配慮することができます。例えばアイグッズでは、廃棄される小麦のわらを素材の30%利用したカトラリーセット「Eco Cutlery」を販売。素材の風合いが穏やかで、おしゃれな雰囲気に仕上げています。食事に使うものなので、再生プラスチックは使用しないなど衛生面にも配慮しました。

使い捨てではなくても持ち運びやすく、かつ衛生的で、環境にやさしいカトラリー。こうしたアイテムづくりによって、プラスチック新法案に対応しながらサステナブルな暮らしをサポートできると考えています。

>>「Eco Cutlery」

竹を使ったホテル用アメニティ

竹を使ったホテル用アメニティ

歯ブラシやコーム、カミソリなどのアメニティを提供するホテル・旅館では、プラスチックから「竹」を使った素材への移行が進められています。

竹は二酸化炭素を吸収するうえに、育てる際に人工肥料や農薬が不要。発芽してから3年で成木になるほど成長が早く、安定的な供給が可能な素材です。さらに、伐採後は切り株から再生するため土壌への負担も少ないサステナブルな資源として注目されています。

竹を使ったアメニティは、ホテルや旅館、スポーツジムなどでも活用事例が増加。アイグッズでも、こうした竹を使ったアメニティ「SUS amenity」シリーズを販売しています。竹が持つ自然由来の色味や使い心地、「持ち帰って使いたい」と思えるような特別感が魅力となることが期待できます。

>>「SUS amenity」

>>関連記事: 「竹」素材はなぜエコ?脱プラスチックに対応するグッズでSDGsを実現

4.エコな代替素材を使ったグッズで、新法案に対応しながらSDGs活動をより加速

脱プラスチックへの対策として期待されるプラスチック資源循環法。プラスチック資源の循環を促すための、「3R+Renewable」を事業者などが意識することがポイントとなっています。

「再生可能資源への代替」を意味する「Renewable」を促進するため、代替素材としてFSC認証紙やバガス、小麦のわら、竹、オーガニックコットンなどを積極的に採用する企業も増加しています。

アイグッズでも「SUS organic」シリーズなどを展開するなど、エコ素材を使ったグッズ企画・製作について実績を重ねてきました。企業によって異なる状況やご要望をふまえながら、こうしたグッズ製作などを通し、SDGs達成に向けた企業活動をしっかりとサポートさせていただきます。

SUSPRO編集部

【サステナブルグッズ制作チーム】 T.M

エコ素材アメニティや客室備品の企画・販売担当。実際にいただくホテルマーケティング担当者様の声を基に、サステナブルなアメニティや客室備品を開発。最新のエコ素材を取り入れたものづくりやホテルブランディングに日々取り組んでいます。

【サステナブルグッズ制作チーム】 T.M

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