ホテルのアメニティを脱プラへ!合理化推進の背景と環境配慮素材への転換のススメ
2024/12/02
現代の脱プラの波に伴い、ホテル業界にも大きな転換期が訪れています。その大きな要因は、特定プラスチック製アメニティの使用の規制化です。廃止や再利用化、環境配慮素材への切り替えなど、各社が独自の方法でホテルアメニティの見直しを進めています。
今回は、ホテルアメニティの脱プラにスポットライトを当て、その背景と対象、具体的な対処法をまとめました。実際の事例も紹介していますので、ホテルアメニティの合理化の方向性に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
1.ホテルアメニティの脱プラのきっかけとなった「プラスチック資源循環法」
ホテルアメニティの脱プラは「プラスチック資源循環法」をきっかけとして進められるようになりました。はじめに、プラスチック資源循環法とはどのような法律なのか、適用の開始時期も併せて確認しておきましょう。
プラスチック資源循環法とは?
「プラスチック資源循環法」とは、プラスチック製品の合理的な使用と廃棄物の自主回収および資源化を促進するためのルールを定めた法律です。正式名称は「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」となっています。
基本原則は、2019年5月に策定された「プラスチック資源循環戦略」に基づく循環型経済活動「3R+Renewable」の実現です。「リデュース」「リユース・リサイクル」「再生利用・バイオマスプラスチック」にかかわる6つのマイルストーンを掲げ、脱プラスチックが推進されています。
プラスチック資源循環法についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
関連記事>>2022年4月施行の新法案「プラスチック資源循環法」とは?対象製品や企業の対策を徹底解説!
適用はいつから?
ホテルアメニティの廃止や有料化は、プラスチック資源循環法が施行された2022年4月から始まりました。
なお特定プラスチック製品の設置禁止や有料化は、法的な義務ではありません。規定はあくまでも「合理化」を求めるものであり、目標設定も企業・事業者に一任されます。
とはいえ、プラスチックごみの排出量や条件によっては、勧告・公表・命令・罰則の対象です。そのため、法律の対象となる企業・事業者は、取り組みが不十分だと判断されないよう注意しなければなりません。
2.ホテルアメニティにかかわる脱プラの対象は?
次に、プラスチック資源循環法における特定プラスチック製品の合理化の対象業種および製品をみていきましょう。
合理化の対象業種
プラスチック資源循環法における使用合理化の対象となるのは、主に小売・サービス事業者です。具体的には、以下の業種が該当します。
- 各種商品小売業
- 飲食料品小売業(野菜・果実小売業、食肉小売業、鮮魚小売業及び酒小売業を除く)
- 宿泊業
- 飲食店
- 持ち帰り・配達飲食サービス業
- 洗濯業
なお、小売業は店舗の有無を問わず合理化の対象です。そしてホテル業は上記の宿泊業に属するため、合理化を進めなければなりません。
また、前年度の特定プラスチック製品の提供量が5トン以上の場合は「特定プラスチック使用製品多量提供事業者」となり、以下の取り組みが求められます。
- 目標の設定
- 情報の提供
- 体制の整備等
- 安全性等の配慮
- 実施状況の把握
- 関係者との連携
- 加盟者における特定プラスチック使用製品の使用の合理化
取り組みが著しく不十分な場合は、指導・助言ののち勧告・公表・命令の措置がなされ、それでも違反したときには50万円以下の罰金が課される恐れがあります。
合理化の対象製品
使用合理化の対象となる特定プラスチック製品は、全部で12品目です。複数の素材が使用されているときは、製品全体を占めるプラスチックの割合が重量比で最も大きい場合に対象となります。
ただし、対象すべてに一律の規制が設けられるのではなく、業種によって該当製品はさまざまです。例えば、ホテルにおける特定プラスチックの対象製品は以下のとおりとなります。
- フォーク
- スプーン
- テーブルナイフ
- マドラー
- 飲料用ストロー
- ヘアブラシ
- くし
- カミソリ
- シャワーキャップ
- 歯ブラシ
つまり、ホテルアメニティの大半が合理化の対象です。在庫をすべて処分する必要はありませんが、これからのホテルビジネスには、プラスチックをいかに合理化できるかが大きな課題となるでしょう。
3.ホテルができるアメニティの脱プラ対策
ホテルアメニティの脱プラに当たり、思い切って配布自体を取りやめてしまえばよいのではないかと考える方もいるでしょう。しかしアメニティは古くからホテルサービスの一環として根付いてきた歴史があります。突然廃止すると顧客の満足度が低下する恐れがあるほか、事前に周知徹底しておかなければ知らずに予約した顧客からクレームが入るかもしれません。
そこで以下では、ただ取りやめるのではなく、違うアイデアで代替する方法をご紹介します。
顧客側の選択制にする
最もシンプルな脱プラ方法は、顧客側にアメニティの要否を選択してもらうことです。注文式のほか「アメニティバイキング」のように必要な人が必要なぶんだけ使えるようにすれば、特定プラスチック製品使用の合理化が図れます。
また、Web予約が主流になりつつあることを踏まえると、申し込みフォームにアメニティの要否に関する入力欄を設置することも有効な手段です。プラスチック製アメニティの合理的な使用につながるうえ、ペーパーレスによるSDGsへの貢献にもなり一石二鳥だといえます。
ただし、選択制でユーザーにエシカルな行動を促すためには、粗品やポイントを進呈するなど何らかのプレミアムが必要です。また、あくまでも消費者の判断に委ねられるため、ホテル側による能動的なアクションには限界があります。
有料化する
これまで無料配布していたホテルアメニティを有料化すれば、従来より大切に繰り返し使ってもらえるようになると考えられます。また、オリジナルのアメニティ一式をセット販売し、新たな商材とするのもよいでしょう。アメニティを有料化・商品化しているホテルはまだ少ないので、メディア受けや消費者内の話題の広がりが期待できます。
ただし有料化するなら、サステナブル・利益向上の両面から、お客様の手に取ってもらえる上質なアメニティを提供しなければなりません。くわえて、販売するに当たり、消費者の関心を引くプロモーション活動も必要です。適切な商品およびアプローチ方法の選択のためには、市場の動向や消費者のニーズなど、綿密なリサーチに基づくマーケティング戦略が求められます。
回収して再利用する
使用済みのアメニティをホテル側で回収し、洗浄もしくは再資源化して再利用すれば、プラスチックの有効活用になります。ただ、廃棄物を洗浄し、そのままリユースするのは抵抗感を覚える顧客もいるでしょう。
そこで回収してリサイクルできる素材のアメニティに転換すれば、プラスチック製品の使用量が減らせるうえ、資源の循環が促せます。ただし再資源化には特定の設備や技術の導入が必要で人件費もかかるため、はじめから整備されている場合を除き外部へ依頼するほうがよいでしょう。
「SUSPRO(サスプロ)」では、サステナブル素材のアメニティ制作から廃棄物の回収と再資源化、製品化までを一貫サポートするアメニティアップサイクルサービスを展開中。「ごみは捨てるもの」という概念を覆す、新たな選択肢を取り入れてみることで、話題性UPにもつながります。
持ち帰りを促す
カトラリーや衛生用品の持ち帰りを推奨し、プラスチックごみの量を減らす方法もあります。持ち帰りを促すためには、アメニティを普段使いできるレベルに引き上げることが必要です。繰り返し使いたくなるようなアメニティを制作する際には、ある程度のコストがかかることをあらかじめ把握しておきましょう。
環境配慮型の素材に切り替える
最もおすすめしたいのが、環境配慮型の素材を用いたアメニティへの切り替えです。天然素材やサステナブルな新素材を利用したアメニティは、環境にやさしいだけではなく、エシカルを全面に打ち出した新たなブランド戦略の基盤にもなります。
またサステナブルでエコな素材のホテルアメニティは、独特のナチュラルな風合いも大きな魅力。そのめずらしさから、利用客の持ち帰りも増えるかもしれません。
4.脱プラアメニティでホテルに新たなビジネス戦略を!
脱プラスチックとは、ただプラスチック製品をなくすことだけが方法ではありません。「資源の循環」こそメインテーマであり、サーキュラーエコノミーに基づくサステナブルなホテルアメニティへの転換が求められています。
エコアメニティの企画・制作や廃棄物のリサイクルに関するご相談は「SUSPRO」へ!回収・再資源化・製品化の全サイクルをワンストップでサポートします。サステナブル素材を使った既製品のアメニティ・客室備品も豊富に取り揃えていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
[出典]/「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」の普及啓発ページ/特定プラスチック使用製品の使用の合理化/https://plastic-circulation.env.go.jp/about/pro/gorika?anc=gorika02/
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