アップサイクル素材とは?持続可能な未来を踏まえた活用アイデア
2025/01/07
サステナブルなものづくりの鍵を握るキーワード「アップサイクル」。環境保全やサステナブルな社会の実現に向け、注目度が高まっている概念です。
現在、これまで捨てるしかないと思われていたごみが「アップサイクル素材」として生まれ変わり、活用が進められています。資源の再利用が法制度化し、よりいっそう推進される中で、アップサイクルの重要性は今後ますます高まっていくでしょう。
そこで今回は、アップサイクル素材が注目される背景とその魅力に迫ります。素材の種類や活用アイデア、実際の事例も踏まえて解説していますので、ぜひ参考にしてください。
1.アップサイクル素材とは
まず、アップサイクル素材とはどのような素材なのかを確認していきます。
アップサイクル素材の意味
そもそも「アップサイクル」とは、資源を再利用して新たな付加価値を創出することです。別名「クリエイティブ・リユース(創造的再利用)」と称されることもあります。
つまり「アップサイクル素材」とは、廃棄物に魅力的な性能・質感などを付与して生まれ変わらせた再生素材です。また、こうした新たな価値を創造する循環を「アップサイクリング」といいます。
従来、再生素材は低品質なケースも多い傾向にありました。なお、再生して低品質な素材になることを「ダウンサイクル」といいます。
しかし近年はリサイクル技術が進歩。高い機能・性質・デザイン性を持つ高品質のアップサイクル素材の開発が進んでいます。
アップサイクルとリメイクの違い
「リメイク」とは、廃棄物や不用品に手を加えて新たなグッズを作ることです。新たな価値が生まれる点はアップサイクルと同じですが、リメイクでは原料をそのまま活かしつつ、加工前とは異なるグッズを手作りします。例えば、古着の生地を組み合わせて異なるアイテムを作るのがリメイクです。
一方、アップサイクルでは原料をもとに、見た目や用途のまったく異なる別の素材を作り出すこと。廃棄食品や使用済みの製品などを分解・加工し、新たな価値のある素材にリサイクルします。
アップサイクルのロゴ
アップサイクルには、国や政府が定めた公的な環境ラベルは存在しません。ただし、アップサイクルの普及推進を目指す一般社団法人「アップサイクル」により、独自のロゴが設定されています。アップサイクルのロゴを使用したい場合は、同法人への入会が必要です。ロゴを活用することで、アップサイクル素材であることが視覚的にアピールできるでしょう。
2.アップサイクルと併せて覚えておきたい用語「3R+Renewable」
アップサイクルについて考えるに当たり、押さえておきたいのが「3R+Renewable」の概念です。3R+Renewableとは、2022年4月施行のプラスチック資源循環法の基本原則。事業者には、政府が掲げた指針に沿ったプラスチック製品の設計と使用の合理化、回収および再資源化が求められています。その中で、アップサイクルの重要性が注目されるようになりました。
ここでは、3R+Renewableを構成する用語の意味をみていきましょう。
なおプラスチック資源循環法については、こちらの記事で詳しく説明しています。
リデュース(Reduce)
「リデュース(Reduce)」とは、廃棄物の発生を抑制する取り組みです。いわゆる使い捨てといわれる石油由来のワンウェイプラスチック製品の使用を減らし、代替素材へ転換することが推奨されています。
リユース(Reuse)
「リユース(Reuse)」とは、不用品を洗浄してそのまま繰り返し再利用することを指し、端的にいうと中古品の使用です。そのほか、不要になった資源を捨てずに堆肥化させるコンポストもリユースに含まれます。リユースが推進されれば、ごみ排出量の削減に直結するでしょう。
リサイクル(Recycle)
「リサイクル(Recycle)」とは、廃棄物や廃材などのごみを化学的に分解・融解して再資源化することです。アップサイクルもリサイクルの一種ですが、両者の大きな違いは新たな価値が生まれるかどうかという点にあります。
リサイクル素材は、資源化後の性能・品質を問いません。一方アップサイクルは、元の素材の特徴を残しつつ、何らかの価値が新たに付与された素材です。また、リサイクルでは再資源化の際に化学処理がなされますが、アップサイクルでは素材を活かして再生・循環されます。
リニューアブル(Renewable)
「リニューアブル(Renewable)」とは、資源を再生可能な素材へ代替する取り組みを指します。具体的にいうと、従来の素材を再生素材などのサステナブルな素材に転換することがリニューアブルです。
なお日本では、2030年までに再生素材の利用を倍増、バイオマスプラスチックの導入量を約200万トンまで増やすことを目標として掲げています。つまり、再生素材の開発・普及推進がリニューアブルの大きなテーマです。
3.アップサイクル素材の種類
アップサイクル素材には、大きく分けて食品ロス由来と廃材由来の2種類があります。以下では、上記2種類のアップサイクル素材の解説と、廃棄物由来のグッズの具体例についてまとめました。
食品ロス由来のアップサイクル素材
本来なら問題なく食べられるにもかかわらず、形が悪いなどの理由による規格外、食べ残し、不可食部、賞味・消費期限切れで廃棄される食材のことを「食品ロス」といいます。近年、食品ロスをリサイクルする取り組みが活発化。抽出後のコーヒー粉や茶殻、野菜・果物・トウモロコシなど、さまざまな食材がアップサイクル素材として生まれ変わっています。
食品ロス由来のアップサイクル素材の詳細は、こちらの記事をご参照ください。
廃材由来のアップサイクル素材
アップサイクル素材は、商品の製造過程で出た廃材からも作られます。例えば、布製品の端切れや裁断くず、古紙、廃プラスチック、廃木材、廃ゴム製品などが原料の一種です。また、漁網をはじめとする海洋ごみもアップサイクル素材の原料に用いられます。
廃材由来のアップサイクル素材の特徴は、原料が極力そのまま活かされている点。ただのリサイクルより環境にやさしく、製造コスト削減にもつながります。
【SUSORO調査隊】営業担当者が語るオススメのアップサイクルアメニティ
プラスチック資源循環法の施行から、脱プラスチック化が特に推奨されるホテル・旅館業界。今回は、200社以上のホテル・旅館様へエコなものづくりを推進してきた「SUSPRO」ブランドのうち、宿泊者様から好評な廃棄物由来のサステナブルアメニティをランキング順に紹介していきます。
1位 廃棄物再利用コースター(竹)
【製品の特徴】
廃棄予定の竹製アメニティを30%使用したエコなコースターです。その見た目は、一言で表すと上質感。表面に竹の繊維感のある落ち着いたデザインを採用し、一目でエコだと伝わりやすいグッズに仕上げました。深いブラウンカラーがおしゃれな印象で、シックな印象のホテル・旅館様との親和性が抜群です。実際に「部屋に置いておくだけでもおしゃれ」「見た目でエコが訴求できる」といった声をいただくほど人気のグッズとなっています。
廃棄物再利用アメニティ製品の最大の特徴は、施設単位で資源の循環システムが構築できること。廃棄予定だった竹を活用したアメニティを生産し、さらにその使用した竹アメニティをコースターにアップサイクルできます。
またこちらのコースターは、竹だけではなく、卵殻や籾殻などさまざまな廃棄物から制作できます。
2位 コーヒー粉・麦わら再利用 クリアボトル
【製品の特徴】
廃棄予定のコーヒー粉と麦わら素材を使用したクリアボトルです。廃棄物をアップサイクルする「エコ」と「機能性」を特徴としています。
本製品の原料は、日常生活で愛飲されるコーヒー。一般的に廃棄されるコーヒー粉部分と、収穫できない麦わらを再利用して作られました。また、サイズは500ml/350mlの2種展開で、用途やターゲットの性別、飲料量などに合わせて選べます。
特に多くご注文いただいているのは、ホテルへのウォーターサーバー導入のタイミング。お客様への配布用ボトルとして利用できるとして、昨今のプラスチック資源循環法をきっかけとするエコ活動への取り組みに活用されています。
3位 ペットボトル再利用 クッションスリッパ
【製品の特徴】
ペットボトルの再生素材を使用して作ったスリッパです。この製品の特徴は、何といっても素材の珍しさ。不織布などのエコ素材を使用したスリッパはよく見かけますが、ペットボトルをスリッパにアップサイクルするのは珍しいので、SDGsの取り組みにおいて他ホテル・旅館と差別化しやすいといえます。
また、エコ素材の中では比較的安価に制作できるのもうれしいポイント。「手軽に環境を配慮したアメニティを制作できる」と、価格面でも高評価をいただいています。
4.アップサイクルのこれまでとこれから
そもそも、アップサイクル素材はどのような経緯で生まれ、現代において注目されるようになったのかご存じですか。ここからは、アップサイクルの歴史と今後を起源・現在・未来の可能性を踏まえて解説します。
アップサイクルの起源
アップサイクルという言葉を初めて使い始めたのは、ドイツのライナー・ピルツ氏です。1994年、同氏はドイツの『Salvo NEWS』のインタビューで、アップサイクルという概念に言及しました。
しかし実は、アップサイクルの考え方は歴史に深く根付いているともいわれています。
例えば、日本の伝統工芸である金継ぎ。破損した食器や美術品を漆と金でつなげる技法であり、モノの価値が以前より高まります。また、海外で昔から愛されてきたキルティングもアップサイクルの一種。布の端切れをつなぎ合わせ、おしゃれなテキスタイルを生み出す伝統工芸です。
いずれもただ修復するだけではなく、新たな美を体現する技術がまさにアップサイクルだといえます。
現代におけるアップサイクルの重要性
大量生産・大量消費社会を経て、近年では世界中でアップサイクルが再注目されています。その主な理由は「SDGs」の推進です。持続可能な社会の形成には資源の有効活用が不可欠とされ、SDGsの目標12「つくる責任、つかう責任」のターゲットの一つにリサイクル・リユースの必要性が明記されました。
こうした動きに伴い、前述のプラスチック資源循環法が制定・施行され、3R+Renewableが重要なテーマになっています。ESG(環境・社会・企業統治)に配慮した企業・事業への投資がトレンドとなっている現代で、エコ素材の導入はマーケティング戦略の重要なファクターです。
廃棄物を限りなくゼロに近づける「サーキュラーエコノミー」の実現は、世界規模で急務の課題となっています。その手段の一つこそ、アップサイクル素材の活用なのです。
アップサイクル素材の今後の課題
資源を無駄なく使えるアップサイクル素材は、環境保全や省エネルギー、ごみ削減とそれらに伴うPR効果など、多くのメリットがあります。
ただ、アップサイクル素材の原料となる廃材の安定的な確保は困難です。そもそもごみ削減の観点からいうと、廃材はどんどん減らしていかなければなりません。また、資源化に時間とコスト、技術が求められるアップサイクル素材を新たに生産しようとするのは、大きな困難を伴います。
とはいえ、現段階でSDGsおよび3R+Renewableに大きく貢献する可能性が高いのも事実です。手軽にアップサイクル素材を取り入れるには、環境配慮型の素材を取り扱うメーカー・制作会社の協力が欠かせません。
ラインナップやサービスの充実度、ものづくりのノウハウをチェックし、自社に最適なパートナーを見つけましょう。
5.アップサイクル素材を使用した製品アイデアと代表的な企業事例
現在、国内外のさまざまな企業がアップルサイクル素材を積極的に取り入れた商品を展開しています。以下では、アップサイクル素材の主な用途を製品のジャンル別にまとめました。あわせて実際に活用しているブランドの事例も挙げていきますので、ぜひものづくりのアイデアの参考にしてください。
アパレル・ファッショングッズ
- バッグ
- 靴
- 財布
- ショッパーバッグ
- アクセサリー
- ネイルポリッシュ(マニキュア)
ブランド例
- ビームス クチュール(BEAMS COUTURE)
- NEWSED
- PLASTICITY
- CIRCULATION SHUTOKO
- Long Wharf
- BAGASSE UPCYCLE(バガスアップサイクル)
- FREITAG
- KiNaKo(きなこ)
- kaeru design
- plagla
- CIRCULATION TOKYO
- CYAN
生活雑貨・家具
- 食器・カトラリー
- トレー
- ボトル・タンブラー
- ダイニングテーブル
- イス
- 照明器具
- 布団
ブランド例
- SEAL
- TAKEZEN TABLE
- upcycle intetior
- buøy
- UPCYCLE HOKKAIDO
備品・資材・建材
- 制服・ユニフォーム
- 梱包資材
- 住宅用建材(コンクリート・モルタルなどの代替素材)
ブランド例
- コーセー(KOSE)
- マクドナルド(McDonald’s)
- 北九州大学
- Re-Windプロジェクト
- Re-inbow cal
- paneco
6.アップサイクル素材を活用したものづくりの循環は「SUSPRO」におまかせ!
現代において、ごみはただの廃棄物ではなく、高付加価値の資源として生まれ変わる可能性を秘めた資源です。資源循環型のサーキュラーエコノミーの構築が目指される中で、廃棄物由来のアップサイクル素材に大きな期待が寄せられています。
アップサイクルの有用性が広まりつつある今こそ活用のチャンス。自社の商品・サービスにいち早く取り入れ、サステナブルな企業として他社より一歩リードしませんか。
アップサイクル素材に関する疑問・質問やグッズ制作に関するご相談なら「SUSPRO」へおまかせを!廃棄物の回収・素材化・商品化をワンストップで承る「SUS CYCLE(サスサイクル)」サービスも展開中です。SUSPROで制作したアメニティのアップサイクルも受け付けていますので、ぜひこの機会にお問い合わせください。
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