キノコレザー(マッシュルームレザー)が日本上陸!注目の背景は「エシカル」の可能性
2024/11/06
現代は、安価で大量生産されるファストファッションから、サステナブルファッションへの転換期に差し掛かっています。なかでも、多くのブランドに注目されているのが、本革の代替素材であるヴィーガンレザーです。
今回は、数あるヴィーガンレザーのうち、よりサステナブルな「キノコレザー(マッシュルームレザー)」を紹介します。エシカルな理由や、ものづくりに取り入れるメリット・デメリットも詳しくお伝えしているので、ぜひ参考にしてください。
1.キノコレザー(マッシュルームレザー)とは
はじめに、キノコレザー(マッシュルームレザー)の特徴と、どのようにして作られるのかをみていきましょう。
キノコレザー(マッシュルームレザー)の特徴
「キノコレザー」とは、キノコの菌糸体である「マイセリウム(mycelium)」を培養して作られる素材です。別名「マッシュルームレザー」とも呼ばれています。
なおキノコレザーは、一般的な食用のキノコがそのまま使われているわけではありません。食用に栽培されるキノコは植物の花や果実にあたる子実体であり、キノコレザーにはその下の地中に広がる菌糸の集合体(菌糸体)が用いられます。
キノコレザーは、動物性の素材を一切使わない人工皮革「ヴィーガンレザー」の一種です。まるで天然皮革のような見た目から「レザー」の名を冠した名称が付けられました。
なおヴィーガンレザーには、プラスチックなどの合成樹脂が使われた化学製品と、植物などの天然由来のものの2種類があります。SDGsの観点から注目されているのは、キノコレザーのように天然由来のヴィーガンレザーです。
天然由来のヴィーガンレザーは、今回紹介するキノコのほか、パイナップルの葉やリンゴの皮など、さまざまな植物の繊維から作られています。
そのうちの一つ「パイナップルレザー」について、以下のコラムで詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
キノコレザー(マッシュルームレザー)の作り方
キノコレザー(マッシュルームレザー)は、以下の手順で製造されています。
- キノコの胞子を専用のシートに植え付け菌糸体を培養する
- 成長した菌糸体を抽出して圧縮し、形を平らに整える
- 素材を洗浄する
- 乾燥させてから粉砕する
- シート状に加工してなめし・染色する
なお日本では、キノコレザーを製品の素材として利用することはあっても、素材自体の製造はまだ大々的には行われていません。しかし、キノコレザーの製造は少しずつ普及し始めています。
その代表例が、キノコ生産量日本一の長野県小諸市に本社を置く「MYCL Japan 株式会社」。キノコレザーの製造・量産を積極的に進めていることで知られています。また、このプロジェクトには地元のキノコ農家も協力しており、地域ぐるみのまちおこしとしても有名です。
2.キノコレザー(マッシュルームレザー)がエシカルな6つの理由
キノコレザー(マッシュルームレザー)が環境配慮型の素材といわれるゆえんは、次の6つの特性にあります。
土に還る
キノコレザーは、通常の皮革と異なり、微生物によって分解されて土に還る「生分解性」の素材です。廃棄の際、焼却ではなく埋立処分ができるため、有害物質およびCO2排出量の削減につながります。
成長が早い
キノコレザーの原料となる菌糸体が完成するまでにかかる培養期間は、2週間程度と極めてスピーディー。さらに、繰り返しての再生も可能です。なんとサッカー場6面分の広さを1日で生育できることから、大量生産に向いています。
土壌に負荷を与えない
キノコの菌糸体の培養に必要な資源は、表面を覆うマルチング材と水のほか、エサとなる基物のみです。なめしに使う水や、土壌に与える負荷を最小限にして製造できるため、非常にサステナブルだといえます。
ごみの有効活用になる
キノコレザーの原料には、従来は廃棄するしかなかったごみが活用されています。
たとえば、菌糸体の培養に用いられるのは、多くの場合、規格外などで商品化できなかったキノコです。また菌糸体の基物には、おがくずや有機物を用いるため、廃材や端材の有効的な使い道だといえます。さらに培地として、砂糖の製造工程でできる産業廃棄物の「糖蜜」が使われるケースも少なくありません。
ごみを有効活用して作るアップサイクル素材の普及が進めば、将来的にゴミ問題の解決につながるでしょう。
循環型の生産システムが確立する
キノコレザーは、使用したあと土へ還り、また生産に使われる、循環型の素材です。この循環の過程で、環境に必要以上の負荷を与えないため、皮革製品の持続可能かつ安定的な供給につながります。
また、製造に使われた資材の廃棄物は、キノコの生育に再利用されるのもサステナブルなポイントです。
このように、キノコレザー生産の一連の流れには「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」のシステムが構成されています。サーキュラーエコノミーが実現すれば、持続的な成長と発展が見込まれる点も社会にとって大きなメリットです。
サーキュラーエコノミーの概要と、実現が目指されている理由は、こちらの記事で解説しています。
関連記事>>循環経済(サーキュラーエコノミー)の実現を急げ!先進事例を読み解き、未来を拓くビジネスモデルの見直しを
産業の活性化につながる
現代のキノコ農業は、価格競争や後継者不足に悩まされており、経営難に苦しむ農家も少なくありません。今後、国内のキノコを使ったキノコレザーの普及が進めば、新たな市場が生まれて労働者の需要も高まり、産業活性化につながるでしょう。
エシカルな理由まとめ
- 土に還る
- 成長が早い
- 土壌に負荷を与えない
- ごみの有効活用になる
- 循環型の生産システムが確立する
- 産業の活性化につながる
3.キノコレザー(マッシュルームレザー)を利用するメリット
ここからは、キノコレザー(マッシュルームレザー)を企業がものづくりに活用することの意義を考えていきましょう。キノコレザーは、企業にとって見逃せない次の5つのメリットがある素材として、近年注目度が高まっています。
低コストで培養できる
キノコレザーの培養には、前述のとおり最小限の資材しか使いません。広範囲のスペースや、高額な資材の投入が不要で、低コストで培養できるため、本革より安い原価で仕入れられます。
本革と同じように使える
キノコレザーは、一見すると本物と見分けがつかないほどよく似ているため、本革と同じような用途に使えます。
キノコレザーの表面は、本革に似たなめらかで温かみのある質感です。これは、菌糸体の細胞壁に含まれる「キチン」という物質が弾力を生み出すためであり、人工皮膚にも用いられるほど柔らかな触り心地となっています。
また手入れも簡単で、乾拭きもしくは固く絞った布で拭き取るだけで済ませられる点も人気の理由です。
経年変化が楽しめる
キノコレザーは、本革と同じく、経年によってより豊かな表情をみせる素材です。
もともと素材一つひとつの風合いが異なるだけではなく、使い込むほど艶が増して味が出てくるため、経年変化が楽しめます。キノコレザー製品を販売・配布すれば、経年劣化する化学人工皮革では物足りないというユーザーからも、高評価が得られるはずです。
耐久性が高い
キノコレザーは、摩擦に強くキズが付きにくいため、本革に比べて高い耐久性を誇ります。また本革とは異なり、耐水性も高く水濡れに強いので、製品としての使い勝手も抜群です。
SDGsに配慮する企業としてのイメージが与えられる
キノコレザーをはじめとするエコ素材を自社商品に取り入れることで、SDGsに配慮した企業としてアピールできます。SDGs活動が世界的に推進される現代で、エシカルなイメージは好印象です。めずらしいキノコレザーを使ったグッズをいち早く取り入れることで、新たな顧客層にも効果的にアプローチできるでしょう。
4.キノコレザー(マッシュルームレザー)のデメリット
キノコレザーは多くのメリットがある一方で、デメリットといえる性質もあります。
たとえば、キノコレザーは耐光性が低く、湿気に弱い点が欠点です。そのため、直射日光が当たったり、湿気がこもったりする空間で保管するのは劣化の元となります。
とはいえ、光と湿気に弱い性質は、本革も同様です。日の当たらない風通しのよいところで保管すればよいだけであり、本革の取り扱いと違いはありません。
5.キノコレザ(マッシュルームレザー)が使われる製品
ここでは、キノコレザーの実際の使用例をご紹介します。弊社の独自調査の結果も併せて、ぜひものづくりの参考にしてください。
キノコレザーの使用例
キノコレザーは現在、以下のような製品の生地や資材として使われています。
- バッグ
- 財布
- キーケース
- パスケース
- ポーチ
- 靴
- ファッション小物(ネクタイなど)
- ヨガマット
その代表格が「土屋鞄製作所」「エルメス」「アディダス」「ステラマッカトニー」など国内外の名だたる有名ブランド。キノコレザーを、自社プロダクトに先立って取り入れ始めたことで話題になりました。
また、キノコレザーを異素材と組み合わせることで、デザインの可能性がますます広がります。SDGsが推進されるなか、キノコレザーは今後、アパレル業界を中心として、ますます幅広いシェアを獲得していくでしょう。
アパレル業界に求められるSDGsに向けた取り組みについては、以下のコラムで解説しているので、ぜひ併せてご一読ください。
関連記事>>アパレル業界が取り組むSDGs。期待されるゴールとその理由、社会課題の現状と数字を徹底解説
SUSPRO調査隊がリサーチ!キノコレザーで作れる製品はどんなもの?
まだあまり耳にすることの少ないキノコレザーですが、カバンや財布など、雑貨の製造で活躍する素材です。
実際に「見た目が皮革と遜色ない」「めずらしい」などの特徴を活かし、ファッションやインテリアの小物雑貨に使用され始めています。
また、素材として人気の革生地に、植物性由来でナチュラルな環境配慮型のエコ素材であるキノコレザーを採用することで、他社と差別化できるのもポイント。ナイロンやタイベック生地(再生素材)などの異素材とミックスすれば、皮革独特の高級感に、機能性も加えられます。
革製品が流行する秋・冬のキャンペーンや、サステナブル訴求をしたいブランド様は、最先端のキノコレザーをぜひ導入してみてはいかがでしょうか。
6.キノコレザー(マッシュルームレザー)の活用で持続可能な未来を目指そう!
キノコレザーは、ただ見た目だけ本物に似ているのではなく、自然への循環や経年変化など、従来の人工皮革では実現できなかった魅力を備えた次世代素材です。「これから自社製品にエシカルを意識したい」「ただエコなだけではなく消費者の注目を集める要素がほしい」…そんなニーズに応える可能性を秘めています。
キノコレザーはまだ日本に入ってきたばかりですが、SDGsが重視される今の時代、さらなる活用の拡大が期待される素材です。だからこそ、キノコレザーを先駆けて導入することで、他社との差別化と、話題性の獲得につながります。
キノコレザーを使ったものづくりに興味がある方は「SUSPRO」へご相談を!まだ検討段階でも「オリジナルグッズ制作」の企画提案から丁寧にサポートするので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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